桜の下で

桜花

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幼い女の子との出会い

第1話(流也視点)

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その日は、とてもとても綺麗な桜が咲いていた暖かい春の日だった。
僕達は、今年の桜の咲き乱れている姿を見ていた。
「今年の桜も綺麗だなぁ。」
隣の赤髪の男が言う。
確かに、綺麗だと思う。
「でもやっぱり、去年は一昨年より綺麗だったし、今年は去年より綺麗だと思うな。」
思ったことをそのまま口に出す。
赤髪の男が声を上げて笑った。
流也りゅうやってそれ毎年言うよな。」
だって本当にそう思うんだから、仕方ないだろ。
そう言ったのに、まだ赤髪の男は可笑しそうに顔お歪めて笑っている。
「何がそんなにおかしいんだよ。」
少しムッとした。
だが赤髪の男はそんなこと気にせず、笑いながら
「いやー別に?…俺は毎年同じ桜に見えるからさ。違う風に見える流也は少し羨ましいよ。」
笑いながらなのに、何故か少し影がある声で赤髪の男は話す。
「…火影ひかげには、想像力とロマンチックを感じる力が足りないんだよ。」
僕が真剣にアドバイスしてやったのに、赤髪の男…いや、火影は腹を抱えて笑いだした。
「なんだよ、ロマンチックを感じる力って。」
真剣にアドバイスしてやったのに、損した気分だ。
「ごめんごめん。流也がそんなこと言うなんて意外で。何百年の付き合いなのに、分からないことはまだまだあるんだなと思ったんだよ。」
確かに、少々臭い言葉だったかもしれないな。
でも、これだけは言っておこう。
「僕にも秘密くらいあるし、火影にも秘密のひとつふたつあるだろう?僕達のあいだで分からないことなんてありふれてるよ。」
そうだ。誰にだって秘密はある。
それを探りすぎず、関わらなさすぎず…。
そんな、友達っていう微妙な関係を保つのが難しいと、私的には思う。
…だから友達が少ないのかもしれないな。
「そうかぁ?俺、意外と流也のこと知ってると思うんだけどなぁ…?」
悪人みたいなニヤニヤした顔で、僕の方を向いた。
「そうか…?僕は…そんなに、教えてないはずだが…。」
まだニヤニヤしている火影。
…うざい。だが…
なんとなすごく嫌な予感がする…。
そう思ってじーっと火影をみていると、
楽しそうにこちらをちらっと見て言った。
「えー?例えばー…何百年も生きててー好きな人が1回も出来たことないこととか?」
「…っ!?」
なぜ僕の秘密を!?
誰にも教えたことないんだけど…
「な?知ってるだろ?」
得意げな顔で笑いかけてくる。
「なんで知ってるんだよぉぉぉぉ!?_」
暖かな春の日。
優雅な静かな春の日。
そんな優雅な桜の景色の中。
それにそぐわない、
僕の絶叫が響くのであった。
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