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第3章 やってみよう!神子候補生活

神子候補も女の子

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どうやら、2人とは友好的な関係を気付けそうだと安心したのも束の間、

「ッ、ゲホッ…な、…メリーってば何を急に…?」

メアリーの爆弾発言によって、私は紅茶を吹き出しそうになるのを堪えた結果、
ゴホゴホと激しく咳き込み、ヴェルにいたっては顔を赤く染めてメアリーを睨んでいる

「メリー!あ、貴方…またそんな事言って…」

おや、赤く顔を染めたという事は、どうやらヴェルにも想う方は居るらしい
これは思いがけない収穫が得られたぞ と内心でニヤリとするものの、
このゲームのヒロイン(主人公)の純真無垢なイメージを覆す発言には驚いた
もしかしたら転生系かな?とも思ったが、単純にこの世界の彼女(主人公)は
私の知ってるゲームとは違った思考の持ち主らしい

「あら?ヴェルってば、別に良いじゃない。だって神子候補って、
とーっても大変で大切な使命なのは私も分かっているわ。
でも花の盛りに使命一筋じゃ、ねえ…?
恋の一つや二つ位、してもバチは当たらないわよ?」

飄々とした顔で答えるメアリーの言葉に私もヴェルも言葉を失う



確かにそうなのだ


このゲームの主体は「恋」と「使命」を両立出来るか否か

「恋」のみでなく、己の意中のキャラの為に、知性なり感性なりを磨き
女性としての品格を上げたうえで、相手を落とすという
ただの恋愛シュミレーションゲームでは、相手の好みそうな選択肢を選ぶだけで、
ほぼクリアも可能だが、このゲームの面白い所は必要のない頭脳(主に記憶力)を
究極に使うゲームなのだ

人気が爆発的に出たのも、選択肢が主人公の生年月日や性格、
バロメーターの上げ方によって
好みのキャラクターの正解選択肢が悉く変わる為、
乙女ゲームの中でも一番攻略が難しいゲームと言われていた…

中でも、3人居る隠れキャラ等は攻略出来るまでにかなりの時間をかけなければならず、
意中のキャラを落とす片手間では絶対に落とせないという高難易度のゲームである
そんなゲームだからこそ、私がハマった要因の一つでもある

勿論、ライバル役であるヴェルリーンにも主人公の生年月日や血液型や
その後の性格を決める質問等の様々な答えによって変わり、
ライバルが狙うキャラも違ってくる為、
ライバルと恋のお相手が被らない限りは仲良くでき、
万が一被っても過度な嫉妬やいじめを起こす様な「設定」になっていない為、
乙女ゲームでは珍しく女性キャラではあるがエスターさんに次ぐ程、
人気が高いキャラである。もちろんメリーも人気は高い




まぁ、神子候補に選ばれた位だから、当り前か…























私が1人で黙々と思案している最中でも、2人の言い合いが続いていた


「それでも、私達は神聖なる神子候補として選ばれたのよ?
恋よりも使命を全うすべきだわ!」


ほう、ヴェルリーンはあくまでも「使命」を優先の方向らしい


「あら?でも、ヴェルってば
昨日アルファ様に話しかけられていたユウを睨んでいたじゃない?」

「え!?」

メアリーの言葉に、思わず驚きの声が出てしまった

「あ、あれは違うわ!アルファ様はお優しいお方だから、
身一つで来てしまったこの子に服を差し上げるって言っていただけよ?
……別に羨ましくなんて」

「…あるんだ?」

ヴェルの話が終わる前にメアリーが被せるように すかさずツッコミをいれる

「意外…」

思わず、私もポロっと本音が零れてしまった

「っ!   わ、私だって……………………………………………恋はしたいわ」

顔を真っ赤にしたヴェルが私達を軽く睨みながらも小さい声で呟く

「ヴェルったら可愛い~」

メアリーが恋に対してグイグイ行くタイプだってのは今の会話で分かったが、
本命は誰だ?


「ねぇ、その…メリーも居るの?」

私は勇気を出して聞いてみた
私は、もしこれでメリーの本命が私と被って居た場合は、
運命だと思って諦めても良いかと思っていた
この世界に来られただけでも幸せな奇跡なのだし、
私の本命のシュテル様は思ってたよりもヤンデレ系?に見えたし…
この世界には(自分の中で一番肝心なポイントの)美声は沢山居るし、
恋はゆっくりと見つけよう…
(あくまでも大本命のシュテル様がもしかしたらヤンデレ系or黒系とは考えたくないし、
メリーがシュテル様を好きな場合は喜んで応援しよう!)



乙女ゲームでも、正々堂々と! 


これがこの世界の良い所でもあり、
私がこの世界に来たいと望んでいた理由の一つでもある

「えぇ、もちろん…私はサーディン様をお慕いしているわ」

アッサリと言い放った事に私もヴェルも驚きを隠せない

「ま、そうでしたの!?メリーってば早くおっしゃいなさいよ!」

ヴェルがお嬢様の仮面を取り外し、1人の女の子として嬉々として喋り出す
恐らく、自分と被って居なかった事で安心したのだろう

「えへへ…サーディン様って色んな方にすぐキザな台詞ばかりおっしゃられているけど、
本当はとても真面目で素敵な方なのよ?
初めてお会いしてすぐ廊下でぶつかってしまってからの一目惚れなの…」

あー…スチルであったそんな出逢いフラグ…


恋バナがいったん始まると女子はとどまることを知らない
メリーもヴェルも本命の方への熱い恋心を語っている

私は近くに控えていたメイドさんに3人分の紅茶をお願いした
さっきはメリーの突然の爆弾発言で紅茶の味が全然堪能出来なかったので、
今度は2人の恋バナをお茶うけ代わりにゆっくりと堪能させてもらおう

「うふふ、お慕いしてる方がヴェルと被らなくて良かったわ♪」

純真無垢なメリー…笑う声も笑顔も真っ白そのものなのに、
何故か黒いオーラが漂っているように見える。もしかして隠れブラックキャラ!?

そんな事を思っていると、メリーが私の方をチラッと見る

「で、ユウがお慕いしている方はどなた?」

まるで、私達が言っているのに言わないわけないよね?的なオーラを発している…
ぶ、ブラック確定―!

まさかこのゲームの主人公が隠れブラックとは…

いや、でも選択肢の欄に「面倒だなぁ…」とか明らかに好感度が下がるような
ハズレの選択肢があったのを覚えている…
つまりは選択肢の内容によってはブラックもあるという事で
私は内心で冷や汗を流しながら苦笑いを浮かべる

「え?いや…だって昨日この世界に来たばかりだし…」

なんとかこの答えで納得してくれないものかと焦っていると
思いがけない援護射撃がヴェルから飛んできた

「そうよ、メリー…一目惚れした貴方と違って、ユウは昨日来たばかりですもの。
どなたが気になるなんて分からない筈よ?
それよりも、あと2時間後には合同特訓よ?メリーは予習しなくても宜しいの?」

有りがたい援護射撃に私は無言でコクコクと頷き、メリーを見る

メリーはあまり納得がいっていないようだが予習という言葉に顔をしかめた
どうやら今日行われる特訓とやらはメリーが苦手とする授業らしい

予習の話が出たお蔭で、一先ずこの話は終わりになったみたいなので正直助かった…

「うー…とっても気になるけれど、もしユウに気になるお方が出来たら絶対教えてね?」


メリーの勢いに押されて、思わずうんと言ってしまったが、
実は既にシュテル様という本命(候補)がいる



流石に昨日の今日じゃ言えなかったが、もう少し関係が進展したら
是非、2人に聞いてもらおうと心に誓って、


今はただこの幸せな時間を楽しんでいた



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