6 / 14
第7話 胎動
しおりを挟む
学校に行くと、昨日の事件に関して、ホームルームでそれらしい説明がなされた。
多感な思春期特有のもので、何かをきっかけに集団心因性疾患に陥り、過呼吸になり倒れたというのが見解だった。
きっかけになった原因は、全員がその当時の記憶があいまいなため調査中であるとのことだ。なお、プライベートな内容に関わってくるため、事実が分かっても公表はしないとこのとだ。
生徒に実質的な健康被害はないということで、学校側は早急に収束を測りたいらしくい。
私は、職員室に呼び出され昨日の事件について改めて話を聞かれた。
「すずと涼香の仲が最近よく無くて・・・・私ただ仲良くするように言っただけです。」と、あたりさわりのないことを話しておいた。
流石にもう、さすがにもう、涼香がすずに手を出すことはないだろう。
「水見さんもあんまり無理しなくていいからね。ほかの生徒に色々聞かれるでしょうけど、話したくないことは無理に話さなくていいから。」
一応、担任や学年主任は、心配したようなことを言っていた。
「体よく言えば穏便に済ませたいんでしょ。」
よっぽど言ってやろうかと思ったが、そんな気力も起こらずスカートを握りしめる手をじっと見つめていた。
「美琴大丈夫。」
奈津が職員室の前で待っていた。
「心配したんだよ。クラスの連中になんか言われても私が守るからね。」
こんな時の奈津は頼りになる。今はあんまり余計なことにかまっている余裕はない。
奈津の話だと昨日の事件は学校中の噂になっているという。
既にほかのクラスの連中が様子を除きに来ていたりしているとのことだ。
クラスに帰る途中で、何人かこっちを見ながらひそひそ話をしているのが見て取れた。
「ほんと暇人、美琴は気にしなくていいからね。」
「なんかごめん、ほんと私大丈夫だからさ。ちょっとすずのことが心配なだけ。
そんなことより、奈津にも迷惑かけたね。」
そう今は、些細なことにかまってはいられない。
すずの事に関しては祖母の言葉を信じるしかない。
何よりも、なぜ水鏡?・・・と思われる中空に浮かぶ水面は出現したのか。
巫女としての美琴の力なのかそれとも、何か別の力が呼んだのか。
あの青い空間とそこを泳ぐ巨大な魚に関しては分からないことだらけだ。
祖母は、今は話す時ではないといってそれっきり何も語ってくれなかった。
「自分の中に流れる力と向き合いなさいってなんだよもぉ。」
ふてくされながら、奈津の後を追う美琴の眼にそれが映ったのはその時だった。
それは突然現れた。
まるで、広大な海中の底から一気に浮上してきたように、忽然と姿を現した。
美琴のうなじは泡だち、全身の毛が逆立つのが分かった。
それと同時にねっとりとした悪寒が全身を包んだ。
巨大なそれは廊下の窓いっぱいの大きさで、その眼はうつろで、そのまま見ていると暗い闇に引きづりこまれそうなたたずまいをしていた。
「奈津・・・」
思わず声を上げて親友を呼び止めると、親友は不思議そうな顔で振り向いた。
「どうした・・・・やっぱ変だよあんた。 今日もう帰る?」
見えていない、それどころか全く感じていない。
あの時は、これが出現する前、青い空間が現れそれにみんな飲み込まれていた。
「青い空間が無いからなの?・・・それにしてもこいつは」
「そう、明らかに昨日見た巨大な魚とは違う個体だ!」
「奈津ごめん」
そういうと美琴はその薄暗い魚を追い始めた。
その魚はまるで美琴を誘うようにゆっくりと泳いでいく。
それでも美琴は走らざるをえない。
「どこに行く気。本気になられたらおえない。」
必死で後を追う美琴をよそに、それは悠々と泳いでいく。
そして渡り廊下に差し掛かろうとするところで、
「君、廊下を走るのはやめなさい。」
一人の教師に呼び止められた。
その瞬間、巨大な魚はすうっとコンクリートの中に消えていった。
美琴の目にはまるでその教師の影に入り込んでいくように見えた。
教師の名前は確か岸部、最近転任してきた美術教師だ。
岸部は、息を切らしている美琴にそれ以上のことは言わなかった。
ただ数秒間、美琴をじっと見つめた。
眼鏡越しに見えるその眼は、美琴を見ているようで見ていないような、薄暗い灰色をしていた。
「君が、水見君か。」
その声はむき出しの心をざらついたもので撫でたような質感を持っていた。
そして、くぐもった笑みを浮かべるときびを返して立ち去っていく。
美琴は思わず何も言うことができずその場に立ち尽くしたままその薄暗い影に縁取りされたような後姿を見送るしかなかった。
美琴が、不思議な教師と対面していたそのころ学校では新たな事件が起きようとしていた。
多感な思春期特有のもので、何かをきっかけに集団心因性疾患に陥り、過呼吸になり倒れたというのが見解だった。
きっかけになった原因は、全員がその当時の記憶があいまいなため調査中であるとのことだ。なお、プライベートな内容に関わってくるため、事実が分かっても公表はしないとこのとだ。
生徒に実質的な健康被害はないということで、学校側は早急に収束を測りたいらしくい。
私は、職員室に呼び出され昨日の事件について改めて話を聞かれた。
「すずと涼香の仲が最近よく無くて・・・・私ただ仲良くするように言っただけです。」と、あたりさわりのないことを話しておいた。
流石にもう、さすがにもう、涼香がすずに手を出すことはないだろう。
「水見さんもあんまり無理しなくていいからね。ほかの生徒に色々聞かれるでしょうけど、話したくないことは無理に話さなくていいから。」
一応、担任や学年主任は、心配したようなことを言っていた。
「体よく言えば穏便に済ませたいんでしょ。」
よっぽど言ってやろうかと思ったが、そんな気力も起こらずスカートを握りしめる手をじっと見つめていた。
「美琴大丈夫。」
奈津が職員室の前で待っていた。
「心配したんだよ。クラスの連中になんか言われても私が守るからね。」
こんな時の奈津は頼りになる。今はあんまり余計なことにかまっている余裕はない。
奈津の話だと昨日の事件は学校中の噂になっているという。
既にほかのクラスの連中が様子を除きに来ていたりしているとのことだ。
クラスに帰る途中で、何人かこっちを見ながらひそひそ話をしているのが見て取れた。
「ほんと暇人、美琴は気にしなくていいからね。」
「なんかごめん、ほんと私大丈夫だからさ。ちょっとすずのことが心配なだけ。
そんなことより、奈津にも迷惑かけたね。」
そう今は、些細なことにかまってはいられない。
すずの事に関しては祖母の言葉を信じるしかない。
何よりも、なぜ水鏡?・・・と思われる中空に浮かぶ水面は出現したのか。
巫女としての美琴の力なのかそれとも、何か別の力が呼んだのか。
あの青い空間とそこを泳ぐ巨大な魚に関しては分からないことだらけだ。
祖母は、今は話す時ではないといってそれっきり何も語ってくれなかった。
「自分の中に流れる力と向き合いなさいってなんだよもぉ。」
ふてくされながら、奈津の後を追う美琴の眼にそれが映ったのはその時だった。
それは突然現れた。
まるで、広大な海中の底から一気に浮上してきたように、忽然と姿を現した。
美琴のうなじは泡だち、全身の毛が逆立つのが分かった。
それと同時にねっとりとした悪寒が全身を包んだ。
巨大なそれは廊下の窓いっぱいの大きさで、その眼はうつろで、そのまま見ていると暗い闇に引きづりこまれそうなたたずまいをしていた。
「奈津・・・」
思わず声を上げて親友を呼び止めると、親友は不思議そうな顔で振り向いた。
「どうした・・・・やっぱ変だよあんた。 今日もう帰る?」
見えていない、それどころか全く感じていない。
あの時は、これが出現する前、青い空間が現れそれにみんな飲み込まれていた。
「青い空間が無いからなの?・・・それにしてもこいつは」
「そう、明らかに昨日見た巨大な魚とは違う個体だ!」
「奈津ごめん」
そういうと美琴はその薄暗い魚を追い始めた。
その魚はまるで美琴を誘うようにゆっくりと泳いでいく。
それでも美琴は走らざるをえない。
「どこに行く気。本気になられたらおえない。」
必死で後を追う美琴をよそに、それは悠々と泳いでいく。
そして渡り廊下に差し掛かろうとするところで、
「君、廊下を走るのはやめなさい。」
一人の教師に呼び止められた。
その瞬間、巨大な魚はすうっとコンクリートの中に消えていった。
美琴の目にはまるでその教師の影に入り込んでいくように見えた。
教師の名前は確か岸部、最近転任してきた美術教師だ。
岸部は、息を切らしている美琴にそれ以上のことは言わなかった。
ただ数秒間、美琴をじっと見つめた。
眼鏡越しに見えるその眼は、美琴を見ているようで見ていないような、薄暗い灰色をしていた。
「君が、水見君か。」
その声はむき出しの心をざらついたもので撫でたような質感を持っていた。
そして、くぐもった笑みを浮かべるときびを返して立ち去っていく。
美琴は思わず何も言うことができずその場に立ち尽くしたままその薄暗い影に縁取りされたような後姿を見送るしかなかった。
美琴が、不思議な教師と対面していたそのころ学校では新たな事件が起きようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
ともボン
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる