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第2話 エリザベス嬢
しおりを挟む「さあ、今日もサボるぞー」
宮殿内には美しい庭園がいくつもある。その中でも、「四季の庭」には、一年中花が咲き続ける不思議な庭園が存在する。
四季の庭は円形になっていて円周の外側だけが見どころだと錯覚させるが、実の醍醐味は草木風に化けた扉を見つけるところから始まる。
その扉を開けると、実は円形ではなくドーム型になっており、色とりどりの花や草木が360度続くロマンチックな造りになっているのだ。
そしてその中心には透明なガラスの噴水があって、講義をサボるのにはちょうどいい場所となっている。
侍女長を巻き、その場所にバレないように忍び込む。四季の庭は日当たりもいいのだが中が木陰になっているためとても心地いい。
ガラスの噴水の淵に沿って寝そべる。水の音も相まって、睡眠誘導まっしぐら。
「キレイ」
驚いて驚きすぎてビクリとも動けなかった。
噴水の淵に手をついてこちらをのぞく10歳くらいの少女がそこにはいた。
噴水に近づきすぎて浸かってしまったのだろうか。腰まである金色の髪を水で滴らせながらハッと自分のこぼした言葉に顔を赤くしながら数歩後ろに下がった。
「あ、えと・・・」
ブルーの瞳が噴水の水の光でキラキラ輝く。寝ぼけていたのなら天使と見間違えるほどに浮世離れした少女だった。
「あなたは・・・?」
声が掠れた。
少女は右足を一歩後ろに引きスカートの両裾を軽くつまみお辞儀をした。
「私は公爵家長女のエリザベスと申します」
落ち着いた声音で名乗ると、顔を少し上げばつが悪そうに微笑む。
「昨年の私の誕生日に足を運んでくださりありがとうございました」
私は首を傾げながら、言葉を絞り出す。
「そう・・・でしたね」
こんなにきれいな少女を見たら忘れるはずがないのに・・・あの豪華な料理の山があったパーティーかな?などと記憶を辿る。
「あの、隣、失礼してもいいですか?」
顔が少し赤い。風邪だろうか。
「どうぞ」
懐にあるハンカチを噴水の淵に敷き、座るよう促す。その私の姿にキョトンとした顔のエリザベス。
「どうぞ?」
エリザベスは困惑しつつ、
「失礼します」
と、腰を下ろした。
四季の庭の外から優しい風が吹き込んでくる。それと共に花の甘い香りが私たちを包む。初めて他人とこの空間を共有しているが嫌じゃない。暖かくて心地いい。
「また、ここに来てもいいですか?」
微かに聞こえたエリザベスの声。
目を開けると、薄暗い四季の庭の噴水の淵に寝そべっていた。
ボーっとする頭を起こし、周りを見渡す。
「夢?」
噴水の淵に手を置くと、そこにはハンカチが畳んで置いてあったのだった。
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