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第15話 大陸統一大戦Ⅱ
しおりを挟む「う・・・」
頭を打ったのか、視界の端がパチパチと弾ける。次に肋骨に強烈な痛みが走った。呼吸がままならない。四肢は何とか動くようだが体を起こす気力はない。
世界がぐるぐる回る中、見える世界に見知った仲間の、仲間の一部だったものが散乱していることに遅れて気づいた。
「・・・サ、リ?」
止まっていた脳が動きだす。体中の毛穴から冷たい汗が噴き出る。体の痛みがこの瞬間、鈍くなったのを感じた。
「サリ・・・?」
体をゆっくり起こし、辺りを見渡し、驚愕する。
起爆剤となったのは木の幹に刻まれていた魔法陣だったのだ。
ふと、足元の血だまりに気づく。そこから点々と現場からその奥の森に続く血痕を見つけた。
震える体を引きずるように森の奥へ進む。心臓の音が爆音並みに騒ぎ出す。こういう時の嫌な予感は、サリのお墨付きなんだ。「危機管理能力が高い」って、「だから俺たちは強い」って、「シェーンがいてくれて嬉しい」って、「出会えてよかった」「ありがとう」って、笑いながら。
胸が苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
胸倉を自ら掴み、乱れる呼吸に喘ぎながら涙が出そうになる。
「頼む・・・、死なないでくれ」
森を抜けた先には、光が差すちょっとした開けた空間が見えた。
その真ん中で膝をつく小さな人影を見た瞬間、自分のものとは思えないような嗚咽と涙が零れだす。
それは、剣を魔術師に突き立てたサリだった。
後ろからにじり寄るように、近づく。涙で視界がにじむ。進む途中で、唐突に視界に入り込んだサリの左腕をみて、靄がかかった思考のまま、それを拾い上げる。
「・・・サリ?」
「・・・ねえ・・・サリ?」
掠れたような声しか出ない。こんなんじゃサリには届かないのに。
「なあ・・・サリ?」
「俺たちの勝利だぞ?サリ」
サリの肩に触れる。
「サリ・・・」
サリは動かない。
「美味い飯、沢山食うんだろ?」
サリは頷かない。
「ふかふかのベッドで3日は寝たいって言ってたろ?」
サリは笑わない。
「この大戦の・・・英雄は、お前だ、サリ」
もう動かない、動くことがないサリを優しく抱きしめる。まだ微かに感じるサリの体温を忘れないように、体温が冷めていかないように、奇跡が起きますようにと、切に願いながら。
サリはこの大戦で
『英雄 青の騎士』となった。
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