規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜

Saioonji

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第8話:魔力授与の儀

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五歳の誕生日
それは、帝国貴族として生きる者であれば誰もが一度は通る日だ。
貴族の子は、五歳になると当主から魔力を授与される。
体に魔力を馴染ませ、身分に応じた器を育てるための、必要な儀式。

――だが。

今日行われる魔力授与は、同じ形式でありながらも全く意味が違った。

シクタルン帝国の皇子であり次期皇帝として生まれたアルト。
今日はその次期皇帝への、魔力授与の日だ。

城内は、朝から慌ただしく、侍従たちは足早に行き交い、近衛騎士団は普段以上の人数で配置についている。

貴族の馬車が、次々と城門をくぐっていく。

今日は特別な日だ。

帝国全土から、すべての貴族家当主が集められていた。

三公爵、八辺境伯。
侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵。

ただし――
騎士爵、準騎士爵のみは列席を許されていない。

これは政治でも社交でもない。
これはまさしく帝国の中枢を担う者だけが立ち会う儀式だった。

俺は、控室で呼ばれるのを待っている。
侍女たちの手で、普段とは比べ物にならないほど豪華な正装を身にまとい緊張しながら待っていた。

白を基調にした、金糸で帝国紋章が刺繍された礼装だ。
動くたびに、布がわずかに光を反射している。

重い。
だが、不思議と嫌ではなかった。

――これが、立場の重さなのだろうと感じたからだろうか?

「殿下、準備が整いました」

ミラが、呼びに来た。

俺は一度、深く息を吸った。

(……いよいよか)

王座の間へ続く大扉の前にいく。

左右に並ぶのは、近衛騎士団。
その奥に、帝国の中枢が集っている。

扉が、ゆっくりと開いた。

その瞬間――

「アルト殿下のご入場!」

澄んだ声が、王座の間に響き渡る。

足を踏み出した瞬間、
視線が一斉に俺へと向けられた。

王座の間は、壮観だった。

左右に整列する貴族当主たち。
誰一人として、私語はない。

その最前列に、三公爵と八辺境伯。
さらに後方に、各爵位の当主たちがずらりと並んでいる。

正面、高壇の上に――
皇帝レオンハルトと、王妃レイラがにこやかにみていた。

帝国のすべてが、ここに集まっているように感じる。

俺は、赤い絨毯の上をまっすぐと進む。

幼い体には、空気そのものが重く感じられた。
だが、足を止めずに俺はまっすぐと歩く。

そして、定められた位置で跪く。

「アルト」

父の声が、堂々と響く。

「これより、魔力授与の儀を執り行う」

その言葉を合図に、
王座の間の空気が、わずかに揺れた。

空気が、変わった。

父が王座から立ち、ゆっくりと階段を降りてくる。

「恐れるな」

小さく、しかし確かな声が父の口から告げられる。

「今回制御は、余が行う身を委ねろ」

父は俺の前に立ち、手をかざす。

次の瞬間――

光が、生まれた。

柔らかく、しかし圧倒的な金色の光。
同時に、王座の間を一陣の風が駆け抜ける。

ざわ、と衣が揺れ、髪がなびく。

「……っ」

体に魔力が、流れ込んでくる。

今まで感じたことのない感覚が体の内側を満たしていく。

熱ではない。
重さでもない。

――存在感。

自分の中に、新しい“層”ができていくような感覚。

息が詰まり、指先が震える。

(怖い……)

理屈では理解していても、
身体は本能的に拒絶しようとする。

だが――

「流れに任せろ」

父の声とともに、俺は魔力を流れるように意識する。
すると暴れていた魔力が、形を整え始めた。

光は穏やかになり、
風は、静かな循環へと変わる。

……本来なら、ここで終わるはずだった
皇太子といえど、最初は最小限。
体を慣らすための、第一段階魔力は少量のはずだった。

――だが。

光が、消えない。

むしろ、強まっている。

「……?」

貴族たちの間に、明らかな動揺が走った。

「量が……」
「まだ流れている……?」
「皇太子とはいえ、これは……」

魔力は、止まらなかった。

だが、不思議なことに――
俺の中には、拒絶がない。

苦しくもない。
壊れる感覚もない。

むしろ――
収まるべき場所に、収まっているように感じている。

父は、一瞬だけ目を細め、
そして即座に決断した。

「――ここまでだ」

手を引く。

光が、すっと消えてなくなる。
風が止み、王座の間は静寂に包まれた。

「……成功だ」

父の声が静かな空間に響く。

だが、誰もすぐには反応できなかった。

三公爵は、無言で俺を見つめている。
辺境伯たちは、表情を変えずに状況を理解しょうとしていた。

――量が違う。

それだけは、誰の目にも明らかだった。

「立て、アルト」

俺は、ゆっくりと立ち上がる。

視線の高さが変わる。
空気の感じ方が、明らかに違う。

父は、俺を一度だけ見てから、ゆっくりと向き直った。

王座の間に集う、すべての貴族当主へ。

「――聞け」

その一言で、空気が完全に張り詰める。

「本日この時をもって」

「アルトは、皇太子として正式に確定した」

ざわ、と小さなどよめきが走る。

魔力授与は、貴族にとって通過儀礼だ。
だが皇太子にとっては、立場を確定させる唯一の条件となる。

それが今、満たされた。

「アルトは、魔力を“借りた”のではない」

父の声は、はっきりとしていた。

「魔力を継ぐ者として、その第一段階を受け取った」

「よって――」

父は、一段、声を強めた。

「皇太子権限を、ここに明示する」

「皇太子は、帝国貴族に対し命を下す権限を持つ」

「公爵に対して意見を述べ、行動を求めることができる」

「辺境伯に対して、軍の運用について協議を命じることができる」

その言葉に、
三公爵の表情がわずかに引き締まり、
辺境伯たちの視線が、鋭くなる。

「また――」

「帝国法、軍制、外交に関わる議題について」

「皇太子は、発言権と参加権を有する」

「これは助言ではない」

「正式な、帝国中枢の一員としての権限だ」

父は、一度言葉を切った。

「ただし」

その一語で、場の空気がさらに重くなる。

「最終決定権は、余にある」

「皇太子は“次”であり、“今”ではない」

「この線を越えぬ限り」

「皇太子の言葉は、帝国の意思として扱われる」

それは、命令でもあり、
牽制でもあった。

王座の間は、完全な沈黙に包まれている。

貴族たちは、理解した。

――この皇太子は、もうただの「子供」ではないと。
――命令権を持つ、政治的存在だと。

しかも、
あの異常な魔力量を宿した状態で。

父は、最後にこう締めくくった。

「以上をもって」

「皇太子アルトを、帝国の後継者として認める」

「異議は、受け付けぬ」

その瞬間。

父の言葉が、王座の間に静かに響き終わる。

次の瞬間だった。

三公爵を先頭に――
八辺境伯、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵。

騎士爵・準騎士爵を除く、
帝国に籍を持つすべての貴族当主が、

一斉に、床に膝をついた。

音はない。
だが、その動きは完璧に揃っていた。

右膝を床へ。
左手を胸に。
頭を垂れる。

帝国式の、最上位への礼。

「――皇太子アルト殿下に、敬意を」

誰かが口にするよりも早く、
それは“当然の行為”として行われた。

今この王座の間にいる全員が理解していた。

アルトはもうただの、
「皇帝の子」ではないことを。

――正式な帝国の後継者だということを。

ざわめきはない。
あるのは、圧倒的な静けさだけ。

その中心に、俺は立っていた。

まだ五歳。
だが、この瞬間。

帝国のすべてとも言える者が一度、俺に頭を下げた。

ゆっくりと顔を上げた先で、
跪いたままの三公爵と八辺境伯が視界に入る。
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