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海洋国編
第17話:会談開始
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伯爵領メント、城内会談室。
天井は高く、壁には簡素な装飾のみ。
威圧も歓待もない、会談のためだけに用意されたような部屋だった。
長卓の片側に、帝国側。
反対側に、ダスメア海洋国側が並んで座る。
先に入室していた王国側は、全員が立ったまま待っていた。
同格の国同士の会談のように見えて実質的には同格とは言えないほどの差が帝国と海洋国にはある。
やがて、扉がゆっくりと開く。
「――シクタルン帝国皇太子、アルト・シクタルン殿下」
静かな声が、はっきりと告げる。
少年の姿で現れた皇太子に、わずかな動揺が走る。
だが、その一歩ごとの重みが、それを許さなかった。
「ならびに、ノルトハイン辺境伯、ヴァルド・ノルトハイン閣下」
アルトの半歩後ろに、辺境伯が控える。
帝国側は、二人だけだった。
対して、王国側。
「ダスメア海洋国国王、レオニス・ダスメア陛下」
初老の王が、一歩前に出る。
「第一王子、クラウス・ダスメア殿下」
冷静な目をした王太子。
「第二王子、リヒト・ダスメア殿下」
穏やかな微笑みを浮かべる青年。
「宰相、マルセル・グレイン」
灰色の髪を撫でつけた老臣。
「公爵家代表――
東方海域公爵、バルド・セイン公
南方港湾公爵、ローレン・ミルザ公」
王国の中枢が、揃っていた。
全員が名を呼ばれ終え、ようやく全員が席につく。
最初に口を開いたのは、国王レオニスだった。
「このたびは、遠路はるばる……
皇太子殿下自らお越しいただき、感謝します」
「形式的な挨拶は必要ない」
アルトは、即座に切り捨てた。
年若い声。
だが、疑いようのない“上位者の口調”。
会談室の空気が、わずかに引き締まる。
「今回の会談は、友好を確認する場ではない」
国王が、目を細める。
「……では、議題は何ですか?」
アルトは即座に行った。
「海洋国と帝国の未来について」
ざわり、と空気が揺れる。
抽象的でありながら、逃げ場のない言葉。
第一王子クラウスが口を開く。
「未来、とはどう言うことですかアルト殿下……
同盟ですか、あるいは交易の再定義ですか?」
「どちらでもない」
アルトは、淡々と否定する。
「これは、方向性の確認だ」
「方向性、ですか」
宰相マルセルが慎重に言葉を選ぶ。
「帝国は、我が国に何を求めておられるのでしょう」
アルトは、辺境伯を見ることもなく、答えた。
「選択だ」
王国側の表情が、硬くなる。
「我が帝国は無用な戦争は嫌いだ、帝国自ら理由もなく攻めることはしないだが理由があれば我が帝国は誰だろうと容赦をするつもりわ全くないと言うことだ」
「帝国に従う未来か。
帝国に対峙する未来か海洋国には選んでもらう」
「……二択、ということですかな」
東方海域公爵バルドが低く言う。
「そうだ」
アルトは肯定した。
「ただし」
そこで、言葉を切る。
「選択を誤れば、海洋国は地図から消す」
沈黙。
誰もが理解した。
この会談は、交渉ではない。
まだ理由は語られてはいない。
だが、結論だけが用意されている。
第二王子リヒトは、静かに拳を握った。
(……やはり、バレている)
だが、その動揺を悟る者はいない。
アルトは、王国側全員を見渡しながら言う
「理由を言おう」
アルトの声は低く、はっきりと響いた。
「海洋国の一部勢力が、帝国内の流通と軍需に対し、
意図的な干渉を行っていた」
会談室が、完全に静まり返る。
「具体的には――塩の流通量調整、港湾使用の裏契約、
中継商人を介した価格操作」
宰相マルセルが、思わず口を開く。
「それは……我が国としては把握しておりません」
「承知している」
アルトは即答した。
「問題は“国家意思”ではない、誰がやったかと言うことだ」
国王レオニスが、ゆっくりと背筋を正す。
「……つまり?」
「王国中枢に属する立場の者が、独断で行った行為だ」
その言葉が落ちた瞬間、
第二王子リヒトの心臓が、強く脈打った。
(……やはり、バレている )
あくまで、沈黙する王子。
「帝国は、証拠を押さえている」
アルトは淡々と告げる。
「人、金、船、契約書、航路」
「そして契約印でその本人なのは確定している」
東方海域公爵バルドが、低く唸る。
「それは……国家への敵対行為と取られます」
「その通りだ」
アルトは頷いた。
「だが帝国は、軍事行動をまだ行なっていないこの件に関しては陛下より割ったしが全権を任されている」
「なぜなら――」
視線が、再び国王レオニスに向く。
「海洋国そのものを、敵とは見ていないからだ」
国王は、ゆっくりと息を吐いた。
「……つまり」
「帝国は判断を委ねている」
アルトの声は、冷静だった。
「これは、処罰の話ではない」
「是正の話だ」
そして、決定的な一言。
「帝国の影響圏に入るか」
「それとも、責任の所在を自ら示すか」
剣は、まだ抜かれていない。
だが、誰もが理解していた。
――この会談で、
ダスメア海洋国は「無関係」を名乗ることはできない。
すでに、理由は示されているのだから。
天井は高く、壁には簡素な装飾のみ。
威圧も歓待もない、会談のためだけに用意されたような部屋だった。
長卓の片側に、帝国側。
反対側に、ダスメア海洋国側が並んで座る。
先に入室していた王国側は、全員が立ったまま待っていた。
同格の国同士の会談のように見えて実質的には同格とは言えないほどの差が帝国と海洋国にはある。
やがて、扉がゆっくりと開く。
「――シクタルン帝国皇太子、アルト・シクタルン殿下」
静かな声が、はっきりと告げる。
少年の姿で現れた皇太子に、わずかな動揺が走る。
だが、その一歩ごとの重みが、それを許さなかった。
「ならびに、ノルトハイン辺境伯、ヴァルド・ノルトハイン閣下」
アルトの半歩後ろに、辺境伯が控える。
帝国側は、二人だけだった。
対して、王国側。
「ダスメア海洋国国王、レオニス・ダスメア陛下」
初老の王が、一歩前に出る。
「第一王子、クラウス・ダスメア殿下」
冷静な目をした王太子。
「第二王子、リヒト・ダスメア殿下」
穏やかな微笑みを浮かべる青年。
「宰相、マルセル・グレイン」
灰色の髪を撫でつけた老臣。
「公爵家代表――
東方海域公爵、バルド・セイン公
南方港湾公爵、ローレン・ミルザ公」
王国の中枢が、揃っていた。
全員が名を呼ばれ終え、ようやく全員が席につく。
最初に口を開いたのは、国王レオニスだった。
「このたびは、遠路はるばる……
皇太子殿下自らお越しいただき、感謝します」
「形式的な挨拶は必要ない」
アルトは、即座に切り捨てた。
年若い声。
だが、疑いようのない“上位者の口調”。
会談室の空気が、わずかに引き締まる。
「今回の会談は、友好を確認する場ではない」
国王が、目を細める。
「……では、議題は何ですか?」
アルトは即座に行った。
「海洋国と帝国の未来について」
ざわり、と空気が揺れる。
抽象的でありながら、逃げ場のない言葉。
第一王子クラウスが口を開く。
「未来、とはどう言うことですかアルト殿下……
同盟ですか、あるいは交易の再定義ですか?」
「どちらでもない」
アルトは、淡々と否定する。
「これは、方向性の確認だ」
「方向性、ですか」
宰相マルセルが慎重に言葉を選ぶ。
「帝国は、我が国に何を求めておられるのでしょう」
アルトは、辺境伯を見ることもなく、答えた。
「選択だ」
王国側の表情が、硬くなる。
「我が帝国は無用な戦争は嫌いだ、帝国自ら理由もなく攻めることはしないだが理由があれば我が帝国は誰だろうと容赦をするつもりわ全くないと言うことだ」
「帝国に従う未来か。
帝国に対峙する未来か海洋国には選んでもらう」
「……二択、ということですかな」
東方海域公爵バルドが低く言う。
「そうだ」
アルトは肯定した。
「ただし」
そこで、言葉を切る。
「選択を誤れば、海洋国は地図から消す」
沈黙。
誰もが理解した。
この会談は、交渉ではない。
まだ理由は語られてはいない。
だが、結論だけが用意されている。
第二王子リヒトは、静かに拳を握った。
(……やはり、バレている)
だが、その動揺を悟る者はいない。
アルトは、王国側全員を見渡しながら言う
「理由を言おう」
アルトの声は低く、はっきりと響いた。
「海洋国の一部勢力が、帝国内の流通と軍需に対し、
意図的な干渉を行っていた」
会談室が、完全に静まり返る。
「具体的には――塩の流通量調整、港湾使用の裏契約、
中継商人を介した価格操作」
宰相マルセルが、思わず口を開く。
「それは……我が国としては把握しておりません」
「承知している」
アルトは即答した。
「問題は“国家意思”ではない、誰がやったかと言うことだ」
国王レオニスが、ゆっくりと背筋を正す。
「……つまり?」
「王国中枢に属する立場の者が、独断で行った行為だ」
その言葉が落ちた瞬間、
第二王子リヒトの心臓が、強く脈打った。
(……やはり、バレている )
あくまで、沈黙する王子。
「帝国は、証拠を押さえている」
アルトは淡々と告げる。
「人、金、船、契約書、航路」
「そして契約印でその本人なのは確定している」
東方海域公爵バルドが、低く唸る。
「それは……国家への敵対行為と取られます」
「その通りだ」
アルトは頷いた。
「だが帝国は、軍事行動をまだ行なっていないこの件に関しては陛下より割ったしが全権を任されている」
「なぜなら――」
視線が、再び国王レオニスに向く。
「海洋国そのものを、敵とは見ていないからだ」
国王は、ゆっくりと息を吐いた。
「……つまり」
「帝国は判断を委ねている」
アルトの声は、冷静だった。
「これは、処罰の話ではない」
「是正の話だ」
そして、決定的な一言。
「帝国の影響圏に入るか」
「それとも、責任の所在を自ら示すか」
剣は、まだ抜かれていない。
だが、誰もが理解していた。
――この会談で、
ダスメア海洋国は「無関係」を名乗ることはできない。
すでに、理由は示されているのだから。
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