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本編
4.消えた子ども
人外は本性を見せた瞬間から普通の人間には認識されなくなる。
それは人間の理と人外の理が違うからなのだが、それによって起こる弊害もある。
人外と人間との間に生まれた子どもは、産んだ方が人外ならば人外として生まれてくるのだが、子どもの時期に本性を制御できなくて、本性に戻ってしまったときに、人間の親からは完全に認識できなくなってしまうのだ。
姿も見えなければ、声も聞こえない、匂いも感じられない、体温も感じられない。
人間の状態では首が据わっていないような子どもでも、本性では動けることが多い。
急に消えた自分の子どもを、親が見失ってしまうという事案は、人外課にも持ち込まれた。
「今、捜査している事件がある。他の連中にやらせればいい」
子どもが消えたという通報を受けてルーカスとエルネストに出動がかかったのだが、犬の人外の事件に気を取られているルーカスは不満そうにしていた。
大抵が家の中で親が認識できなくて行方不明になっているだけなのだが、人身売買の線もあり得ないわけではないので、迅速に行動する必要があるのはルーカスも分かっていた。
それでも、ルーカスは今追っている事件から離れたくなかったのだ。
「これも大事な仕事だよ。可愛い自分の子どもが、ベビーベッドから消えていたなんて、親にしてみれば恐怖でしかないよ」
それに、単純な事件じゃなくて人身売買が関わっている可能性もあるかもしれない。
それを聞くと、ルーカスの表情が変わる。
「そうだな。大事な仕事だった。子どもの命に関わるかもしれない」
そう言って車に乗り込むルーカスはもう文句も言っていなかったし、不満そうな顔もしていなかった。
車のキーはルーカスが持っていて、エルネストに運転させる気は全くなかった。
警察車両と分からないペイントされていない車は、ルーカスのお気に入りで、いつもその車を使っている。非常時には警報が鳴らせるようにランプは車内に置いてある。
「運転してくれるの? 助かるな」
「俺以外が運転する車に乗る気はない」
自分のために運転するのだが、エルネストは丁寧に「ありがとう」とお礼を言ってくる。
調子がくるってしまいそうになるが、ルーカスはそれを無視して現場に向かった。
現場はごく普通の一軒家で、慌てた様子の男性がルーカスとエルネストを迎える。
「州警察の人外課だ」
「来てくれたんですね。ありがとうございます。妻が出張でいない間に、息子が見えなくなってしまって」
知り合いに人外もいないので探せなかったと話す男性に、それは仕方のないことだとルーカスも思う。どれだけ気を付けていても、GPSを取り付けようが、音のなる機械を取り付けようが、人外の本性になった瞬間、そういうものは存在が消えてしまう。
ルーカスがチーターの本性になったときに服が脱げないように、チーターになったときも服を着ている状態なのだが、それはチーターでいる間は存在しないものになっているのだ。
どういう方法か分からないが、特別製のイヤフォンで携帯電話から通話を流すのはできているが、それも人外課だけが持つ技術のようで一般化はしていないのだ。
「落ち着いてください。人外についての説明は奥さんから聞いていますか?」
「聞いています。何度か私の前で本性になったことがあって、そのときは妻が対処してくれました」
「今回、奥さんは出張にあたって何か言っていませんでしたか?」
「何かあったらすぐに人外課に通報するようにと言っていました」
穏やかにエルネストが状況を聞いている。
その間もルーカスは鋭く耳を澄ましていた。赤ん坊の泣き声や獣の泣き声が聞こえないか。
「お子さんは何か月ですか?」
「一歳になったところです。ベビーベッドで眠っていたので、ベビーモニターを付けて、別室で仕事をしていたら、いつの間にかベビーモニターに息子の姿が映っていなくて。探したのですが私では見えないようなんです」
どうして子どもの父親なのに子どもを見つけることができないのか。
自分を責める父親に、エルネストが優しく声をかける。
「人外とはそういうものなのです。すぐに連絡してくれてよかった。捜索に入ります。家具を動かすことがあるかもしれませんがいいですね?」
「それは構いません」
「息子さんはどんな人外か聞いてもいいですか?」
「息子はジャコウネコです」
ジェコウネコと聞いてルーカスはすぐにエルネストの顔を見た。エルネストもルーカスの意志が伝わったようだ。
ジャコウネコは正確には猫ではない。猫と犬の中間に位置するような動物だ。雌雄共に香線嚢があり、独特の香りを放つ。それが香水にも使われることがあるのだ。
まだ幼児なので香線嚢は発達していないかもしれないが、人外の母親が付けた匂いが残っているかもしれない。
父親にはリビングで休んでいてもらって、エルネストは本性の狼の姿になった。白銀の毛並みの金色の目の美しい狼にルーカスは一瞬見とれてしまう。
本性の狼の姿になると、エルネストは嗅覚が人間の百倍にもなると言われている。そのために本性になったのだとルーカスはすぐに頭を切り替えた。
二階の子ども部屋のベビーベッドから匂いを嗅ぎながら探していると、エルネストは目的の幼児を見つけたようだ。
鼻先でベビーベッドの下を示している。
「ルーカス、驚かさないようにそっとこのベビーベッドの下を探ってみて」
「分かった」
促されてルーカスがベビーベッドの下を探ると、まだ乳飲み子のジャコウネコが見つかる。
小さいのでベビーベッドの枠をすり抜けて降りて、怖くてベビーベッドの下に隠れたのだろう。
探し出すのは簡単だったが、問題はこれからだった。
人間の姿に戻ったエルネストとルーカスがジャコウネコの子どもを抱っこして戻っても、リビングの父親には見えないし、認識することができないのだ。
「ここにあなたの息子さんはいます。怪我もしていないし、健康そうです」
「よかった。どうすれば人間の姿に戻りますか?」
「それは、分からないですね」
正直に答えるエルネストに、父親は困り果てている。
妻が出張から戻るのは今日の夜になるそうだ。
「人外専門の保育所に連絡をしよう。奥方の帰還まで預かってもらえばいい」
「そうするしかなさそうですね」
ルーカスの提案にエルネストも賛成し、ジャコウネコの幼児は人外専門の保育所に保護されることになった。
「今後は妻が不在のときには人外専門の保育所に預けることにします。今回も預けたかったのですが空きがなくて」
人外自体が数が少ないので、専門の保育所となると定員が限られてくる。父親が預けられなかったのも仕方がないだろう。
気になる事件の最中に起きた小さな事件だったが、こういうことも人外課はしっかりと対応していた。
ジャコウネコの子どもを人外専門の保育所に保護してもらって、その保育所の場所を父親に伝えてから、ルーカスとエルネストは警察署に戻った。
警察署では犬の人外を轢いた容疑者は、だんまりを決め込んでいるようだ。
「なんとかならないのか?」
「車で移動されてしまうと、匂いを追うのも難しくなるからね。僕にもどうしようもないよ」
容疑者の携帯電話の位置情報を元に科学捜査班が解析を進めているようだが、それも遅々として進まない。
焦れるルーカスにエルネストが聞いてくる。
「君は人命を大事にする警察官だと聞いたよ。今回の件も絶対に救いたいんだろうね」
「そりゃそうだ。人命以上に大事なものはない」
「噂だと君は相棒を大事にしない警察官だと言われているけれど、人命を第一に考えるのは警察官として立派だと僕は思うよ」
「そんな世辞を言っても、俺はデュマがのろまなら置いていく」
「それは仕方ないよね。僕がついていけなかったんだとしたらね」
完全にルーカスを責めるわけではなく、歩み寄ろうとしてくるエルネストにルーカスは居心地の悪さを感じる。これまでの相棒はそんなことをしようとしなかった。
コミュニケーションを取ろうとしてもルーカスが受け入れなかったというのもある。
こんな風に話したのはアーリン以来かもしれない。
アーリンは人懐っこくルーカスに話しかけてきていた。ルーカスも鬱陶しいと思いながらもアーリンに負けて話をしていた。
「容疑者が郊外に農園を持っていて、そこでしばらく車を停めていたことが分かったわ」
科学捜査班から送られてきた情報を受け取ったアーリンに、ルーカスは立ち上がる。
「その農場の位置を俺の端末に送ってくれ」
「今帰ったばかりでしょ? 幼児の行方不明事件の書類は書いたの?」
「それは後で書く! 今は人命優先だ!」
車のキーを掴んでエルネストの方を見たルーカスに、エルネストは小さく頷いた。
「分かったよ。同行する」
「単独行動じゃないから問題ないだろう?」
勝ち誇った表情のルーカスに、アーリンが呆れた顔で情報を端末に送っていた。
それは人間の理と人外の理が違うからなのだが、それによって起こる弊害もある。
人外と人間との間に生まれた子どもは、産んだ方が人外ならば人外として生まれてくるのだが、子どもの時期に本性を制御できなくて、本性に戻ってしまったときに、人間の親からは完全に認識できなくなってしまうのだ。
姿も見えなければ、声も聞こえない、匂いも感じられない、体温も感じられない。
人間の状態では首が据わっていないような子どもでも、本性では動けることが多い。
急に消えた自分の子どもを、親が見失ってしまうという事案は、人外課にも持ち込まれた。
「今、捜査している事件がある。他の連中にやらせればいい」
子どもが消えたという通報を受けてルーカスとエルネストに出動がかかったのだが、犬の人外の事件に気を取られているルーカスは不満そうにしていた。
大抵が家の中で親が認識できなくて行方不明になっているだけなのだが、人身売買の線もあり得ないわけではないので、迅速に行動する必要があるのはルーカスも分かっていた。
それでも、ルーカスは今追っている事件から離れたくなかったのだ。
「これも大事な仕事だよ。可愛い自分の子どもが、ベビーベッドから消えていたなんて、親にしてみれば恐怖でしかないよ」
それに、単純な事件じゃなくて人身売買が関わっている可能性もあるかもしれない。
それを聞くと、ルーカスの表情が変わる。
「そうだな。大事な仕事だった。子どもの命に関わるかもしれない」
そう言って車に乗り込むルーカスはもう文句も言っていなかったし、不満そうな顔もしていなかった。
車のキーはルーカスが持っていて、エルネストに運転させる気は全くなかった。
警察車両と分からないペイントされていない車は、ルーカスのお気に入りで、いつもその車を使っている。非常時には警報が鳴らせるようにランプは車内に置いてある。
「運転してくれるの? 助かるな」
「俺以外が運転する車に乗る気はない」
自分のために運転するのだが、エルネストは丁寧に「ありがとう」とお礼を言ってくる。
調子がくるってしまいそうになるが、ルーカスはそれを無視して現場に向かった。
現場はごく普通の一軒家で、慌てた様子の男性がルーカスとエルネストを迎える。
「州警察の人外課だ」
「来てくれたんですね。ありがとうございます。妻が出張でいない間に、息子が見えなくなってしまって」
知り合いに人外もいないので探せなかったと話す男性に、それは仕方のないことだとルーカスも思う。どれだけ気を付けていても、GPSを取り付けようが、音のなる機械を取り付けようが、人外の本性になった瞬間、そういうものは存在が消えてしまう。
ルーカスがチーターの本性になったときに服が脱げないように、チーターになったときも服を着ている状態なのだが、それはチーターでいる間は存在しないものになっているのだ。
どういう方法か分からないが、特別製のイヤフォンで携帯電話から通話を流すのはできているが、それも人外課だけが持つ技術のようで一般化はしていないのだ。
「落ち着いてください。人外についての説明は奥さんから聞いていますか?」
「聞いています。何度か私の前で本性になったことがあって、そのときは妻が対処してくれました」
「今回、奥さんは出張にあたって何か言っていませんでしたか?」
「何かあったらすぐに人外課に通報するようにと言っていました」
穏やかにエルネストが状況を聞いている。
その間もルーカスは鋭く耳を澄ましていた。赤ん坊の泣き声や獣の泣き声が聞こえないか。
「お子さんは何か月ですか?」
「一歳になったところです。ベビーベッドで眠っていたので、ベビーモニターを付けて、別室で仕事をしていたら、いつの間にかベビーモニターに息子の姿が映っていなくて。探したのですが私では見えないようなんです」
どうして子どもの父親なのに子どもを見つけることができないのか。
自分を責める父親に、エルネストが優しく声をかける。
「人外とはそういうものなのです。すぐに連絡してくれてよかった。捜索に入ります。家具を動かすことがあるかもしれませんがいいですね?」
「それは構いません」
「息子さんはどんな人外か聞いてもいいですか?」
「息子はジャコウネコです」
ジェコウネコと聞いてルーカスはすぐにエルネストの顔を見た。エルネストもルーカスの意志が伝わったようだ。
ジャコウネコは正確には猫ではない。猫と犬の中間に位置するような動物だ。雌雄共に香線嚢があり、独特の香りを放つ。それが香水にも使われることがあるのだ。
まだ幼児なので香線嚢は発達していないかもしれないが、人外の母親が付けた匂いが残っているかもしれない。
父親にはリビングで休んでいてもらって、エルネストは本性の狼の姿になった。白銀の毛並みの金色の目の美しい狼にルーカスは一瞬見とれてしまう。
本性の狼の姿になると、エルネストは嗅覚が人間の百倍にもなると言われている。そのために本性になったのだとルーカスはすぐに頭を切り替えた。
二階の子ども部屋のベビーベッドから匂いを嗅ぎながら探していると、エルネストは目的の幼児を見つけたようだ。
鼻先でベビーベッドの下を示している。
「ルーカス、驚かさないようにそっとこのベビーベッドの下を探ってみて」
「分かった」
促されてルーカスがベビーベッドの下を探ると、まだ乳飲み子のジャコウネコが見つかる。
小さいのでベビーベッドの枠をすり抜けて降りて、怖くてベビーベッドの下に隠れたのだろう。
探し出すのは簡単だったが、問題はこれからだった。
人間の姿に戻ったエルネストとルーカスがジャコウネコの子どもを抱っこして戻っても、リビングの父親には見えないし、認識することができないのだ。
「ここにあなたの息子さんはいます。怪我もしていないし、健康そうです」
「よかった。どうすれば人間の姿に戻りますか?」
「それは、分からないですね」
正直に答えるエルネストに、父親は困り果てている。
妻が出張から戻るのは今日の夜になるそうだ。
「人外専門の保育所に連絡をしよう。奥方の帰還まで預かってもらえばいい」
「そうするしかなさそうですね」
ルーカスの提案にエルネストも賛成し、ジャコウネコの幼児は人外専門の保育所に保護されることになった。
「今後は妻が不在のときには人外専門の保育所に預けることにします。今回も預けたかったのですが空きがなくて」
人外自体が数が少ないので、専門の保育所となると定員が限られてくる。父親が預けられなかったのも仕方がないだろう。
気になる事件の最中に起きた小さな事件だったが、こういうことも人外課はしっかりと対応していた。
ジャコウネコの子どもを人外専門の保育所に保護してもらって、その保育所の場所を父親に伝えてから、ルーカスとエルネストは警察署に戻った。
警察署では犬の人外を轢いた容疑者は、だんまりを決め込んでいるようだ。
「なんとかならないのか?」
「車で移動されてしまうと、匂いを追うのも難しくなるからね。僕にもどうしようもないよ」
容疑者の携帯電話の位置情報を元に科学捜査班が解析を進めているようだが、それも遅々として進まない。
焦れるルーカスにエルネストが聞いてくる。
「君は人命を大事にする警察官だと聞いたよ。今回の件も絶対に救いたいんだろうね」
「そりゃそうだ。人命以上に大事なものはない」
「噂だと君は相棒を大事にしない警察官だと言われているけれど、人命を第一に考えるのは警察官として立派だと僕は思うよ」
「そんな世辞を言っても、俺はデュマがのろまなら置いていく」
「それは仕方ないよね。僕がついていけなかったんだとしたらね」
完全にルーカスを責めるわけではなく、歩み寄ろうとしてくるエルネストにルーカスは居心地の悪さを感じる。これまでの相棒はそんなことをしようとしなかった。
コミュニケーションを取ろうとしてもルーカスが受け入れなかったというのもある。
こんな風に話したのはアーリン以来かもしれない。
アーリンは人懐っこくルーカスに話しかけてきていた。ルーカスも鬱陶しいと思いながらもアーリンに負けて話をしていた。
「容疑者が郊外に農園を持っていて、そこでしばらく車を停めていたことが分かったわ」
科学捜査班から送られてきた情報を受け取ったアーリンに、ルーカスは立ち上がる。
「その農場の位置を俺の端末に送ってくれ」
「今帰ったばかりでしょ? 幼児の行方不明事件の書類は書いたの?」
「それは後で書く! 今は人命優先だ!」
車のキーを掴んでエルネストの方を見たルーカスに、エルネストは小さく頷いた。
「分かったよ。同行する」
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