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ファウスト視点
20.神子の拒絶(side.ファウスト)
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王宮に滞在した日、神子がジェラルド殿下に夜、呼び出されて庭に行ったことは聞いていた。
ジェラルド殿下の誘いに乗ったということは神子もジェラルド殿下のことを想っているのだろう。
そろそろ引くときがきたのか。
辺境伯領に帰っても、おれは誰とも恋愛も結婚もしないだろう。
神子だからこそ愛せたのだ。もう二度とこんな思いは抱かない。
神子の神殿に戻ると、神子はなにか思い詰めているような表情をしていた。
朝食の席で神子が問いかける。
「おれのせいでジェラルド殿下もオルランド閣下もファウスト様も本来のやるべきことを休んでいるのではないですか? おれはご迷惑になっているのでは……」
この世界において神子の伴侶選び以上に重要視されることはないのだが、謙虚で気遣いのできる神子は、ジェラルド殿下やオルランド閣下やおれのことを気にしていた。
それに対してオルランド閣下が言った。
「この世界で何よりも優先されるのは神子に関することです。わたしたちのやるべきことは他のものでも代わりにできますが、神子に選ばれるという大事な任務は宣託を受けたわたしたちにしかできません」
同感だとおれも頷いたが、神子はますます困っている様子だった。
優しい神子のことだ。誰か一人を選んだとしても、他の相手を慮ってそれを告げられないのかもしれない。
「神子はおれたちの心配などせず、自分の気持ちを一番大事にしてほしい。神子の決めたことならば、おれたちは誰も文句は言わない」
おれが言葉を添えると、神子は落ち着いたようなので安心するとともに、おれは覚悟もした。
神子はそろそろ一人を選ぶつもりなのかもしれない。
神子の言っていた神子が召喚されてから九十日までまだ残り三十日以上あったが、神子の心は決まったのかもしれない。
おれがエスコートして神子を部屋に送って行ったが、甘い香りが強くしていたので、神子の用に視線を向ければ、顔が赤くなっている。
突発的なヒートを起こしそうになっているのだろうか。
「あの、手を……」
「嫌か?」
「いえ、その……」
ジェラルド殿下のエスコートもオルランド閣下のエスコートも嫌がったのとのない神子だったが、おれの手に手を乗せているのは気になるようだ。嫌ならばやめるのだが、神子はそうではないような気配をさせている。
部屋まで送って行った後で、神子の香りが残っているようで、おれはそれを振り払うように自分も部屋に戻った。
その後で、神子から短い手紙が来た。
『ファウスト様。
内密にお話があるのでおれの部屋に来てくれませんか?
神子』
甘い香りのする手紙を握り締めて、おれは何事かと思っていた。
部屋に呼ばれるのだから神子が突発的なヒートを起こしたときにどうすればいいかも考えておかなければいけない。
腰のナイフを確かめて、神子が突発的なヒートを起こしたら迷わずこれで太ももか腕を刺して、痛みで正気のうちに立ち去ろうと決めた。
神子の部屋に行くと、神子はおれを待っていたようで、誰にも見られないように素早くおれを部屋の中に入れてくれた。ドアの横に護衛がいるのを確かめて、おれは護衛と何かあったときには頼むと言うようにアイコンタクトを取る。
ソファに座ると、ローテーブルにはレモネードのピッチャーが置いてあって、神子はおれの分のグラスを神官に持って来てもらって、おれにレモネードを注いで差し出した。
この様子だとおれに相談がありそうだ。
王宮でジェラルド殿下と庭を歩いた際に無体を働かれそうになったか、逆に神子がジェラルド殿下を受け入れたか、だろう。
「ジェラルド殿下と何かあったのか?」
「え?」
まず無体の方を疑ってみたが、神子が黒い目を真ん丸にしているので、それはなさそうだった。
何かあったのならば、神子の黒い目には涙の幕が張って、緊張が張りつめるはずだ。
濃い甘い香りがして、理性を失わないようにおれはぎゅっと拳を握って手の平に爪を立てる。
「王宮での夜、ジェラルド殿下と神子が二人で庭を歩いていたという報告は受けている。神子はジェラルド殿下を選んだのか?」
次の可能性について問いかけるとき、おれの胸が痛んだが、そんなことはどうでもいい。
神子の幸せこそがこの世界の繁栄をもたらすのだ。
神子が選んだのだったら仕方がない。
それに関して、神子は首を振った。
「何もありません。庭を案内してもらっただけです。おれは誰も選んでいません」
「そうか。それならまだおれにもチャンスがあるな」
「その件なのですが……」
思わず口に出してから、神子を脅かすかもしれないとおれが口を閉じたら、神子が思いがけない強い口調で問いかけてきた。
「ファウスト様は、おれのことをどう思っているのですか?」
神子への気持ちは伝えたつもりだったが、神子はおれから何を聞きたいのだろう。
「神子は、おれになにを言わせたいのだ?」
「ファウスト様の気持ちを確かめたいのです」
おれの気持ちを確かめたいという神子の候補の中におれはまだいるのだろうか。
甘い香りが強くて理性が揺らぎそうになるが、耐えておれは少し笑んだ。
「そうだな。神子にそんな小細工はできないな」
おれの理性を試しているのかもしれないが、神子にはそんな小細工はできないだろう。
ただ本気で聞きたいから聞いているにすぎないと判断する。
表情を引き締めて、おれは神子に真剣に告げた。
「おれは神子を愛している。おれは不器用だから、美辞麗句は延べられない。ただ、おれの気持ちは変わりない」
ぶわっとただでさえ濃い神子の香りが、更に強くなった。くらくらしそうになっているおれに気付いたのか、神子が慌てだす。
「わ、分かりました。用事はそれだけです」
「もういいのか?」
「は、はい」
「おれの態度が神子を不安にさせたのではないか?」
「もう、いいです! 早く部屋から出て行ってください!」
神子が心配だったが、神子はもうおれとは同席していたくないようだ。
嫌われたかもしれない。
胸が痛んだが、おれは神子の言う通りにソファから立ち上がった。
「呼び出して申し訳ありませんでしたが、今は、一人にしてください!」
追い出されてしまったおれは、軍服の胸の辺りを掴んで廊下で天井を仰いでいた。
神子に嫌われるのがこんなにもつらいとは思わなかった。
おれは二度も神子に無理やり口付けているし、そのことを誰にも明かしていない。神子はおれに相談はしてくるが、おれのことを相談できる相手がいなかったのだろう。
この想いは諦めなければいけない。
そう思えば思うほど強く燃え上がる恋心というやつが厄介で、おれはどうしようもなく立ち竦んでいた。
部屋に帰ってからおれは苦悩したが、神子を諦めるにしてももう一度だけ神子に謝罪して、けじめをつけたいと思った。
その日は冷静になれなかったので、翌日おれは神子に手紙を書いた。
『神子へ。
伝えたいことがあります。決して神子を脅かすことはしないので、今夜神子の部屋に行ってみいいでしょうか?
ファウスト・ダリア』
断られたらもうどうしようもない。
神子がおれを側に置きたくないくらい怖いと思っているのだったら、この神殿も去ることにしよう。
そう決めていたら、神子から返事があった。
『ファウスト様。
二人きりで部屋で会うことはできません。オルランド閣下が立ち会ってくれて、祈りの部屋ででしたらお会いします。
神子』
二人きりで会いたくないという神子の気持ちはよく分かった。
おれはそれでいいので会ってくれるように手紙を書いた。
夕食後、祈りの部屋に行くとオルランド閣下が来ていた。
オルランド閣下はおれの表情を見て心配してくれた。
「ファウスト殿、思い詰めている様子ですが、何かありましたか?」
おれはオルランド閣下に昨日神子の部屋に呼びだされ、気持ちを確認された後、部屋から追い出された件について伝えることにした。
「わたしは神子に嫌われたのかもしれません」
「ファウスト殿、神子は理由なくひとを嫌うような方ではありません。何があったのですか?」
まず結論から口にすると、オルランド閣下が説明を求める。
「昨日、神子の部屋に呼ばれて、気持ちを聞かれました。わたしが美しい言葉も述べられずに率直な気持ちを口にしたら、神子はわたしを部屋から追い出したのです。恐らく、わたしの気持ちが負担だったのでしょう」
「神子に理由を聞いたのですか?」
「聞こうとしても機会がなく、神子の部屋を訪ねたいと手紙を出しても断られて、オルランド閣下と一緒にこの部屋でならばと条件を付けられました」
詳細な説明を口にすると、オルランド閣下は理性的に対応してくれているが、おれは冷静ではなかったかもしれない。
「神子は、わたしが怖いのかもしれない」
このことがずっと頭から離れない。
不安になるおれに、オルランド閣下が確認する。
「ファウスト殿は神子を愛しているのですね」
「それは間違いなく。オルランド閣下もそうでしょう?」
「わたしも神子を愛していますが、ファウスト殿はいつも神子に一番近い位置にいた気がします」
「それはジェラルド殿下では?」
「神子に近寄って行って親しくしていたのはジェラルド殿下かもしれませんが、神子になにがあろうと守り抜き、神子の信頼を得たのはファウスト殿、あなたでしょう?」
少し悔しさをにじませたオルランド閣下の言葉に、おれは驚いていた。
神子がおれを信頼している?
昨日部屋から追い出されたのに?
「本当にわたしが信頼されているのでしょうか」
「わたしが神子に無体を働こうとしたときに、一番にファウスト殿を呼んできてもらいました。その期待通り、ファウスト殿はわたしを退け、神子を守りました」
「あのとき、わたしも理性を保てていたか分かりません。獣のような顔をしていたかもしれない。神子はそれが怖かったのではないでしょうか?」
「それでも、ファウスト様は神子を守ったのでしょう? 護衛の騎士から報告を受けています」
オルランド閣下と話していると、神子が入り口の垂れ幕を潜って中に入ってきた。
おれは何を言われるのか。
身を固くして神子の言葉を受け入れる心の準備をした。
ジェラルド殿下の誘いに乗ったということは神子もジェラルド殿下のことを想っているのだろう。
そろそろ引くときがきたのか。
辺境伯領に帰っても、おれは誰とも恋愛も結婚もしないだろう。
神子だからこそ愛せたのだ。もう二度とこんな思いは抱かない。
神子の神殿に戻ると、神子はなにか思い詰めているような表情をしていた。
朝食の席で神子が問いかける。
「おれのせいでジェラルド殿下もオルランド閣下もファウスト様も本来のやるべきことを休んでいるのではないですか? おれはご迷惑になっているのでは……」
この世界において神子の伴侶選び以上に重要視されることはないのだが、謙虚で気遣いのできる神子は、ジェラルド殿下やオルランド閣下やおれのことを気にしていた。
それに対してオルランド閣下が言った。
「この世界で何よりも優先されるのは神子に関することです。わたしたちのやるべきことは他のものでも代わりにできますが、神子に選ばれるという大事な任務は宣託を受けたわたしたちにしかできません」
同感だとおれも頷いたが、神子はますます困っている様子だった。
優しい神子のことだ。誰か一人を選んだとしても、他の相手を慮ってそれを告げられないのかもしれない。
「神子はおれたちの心配などせず、自分の気持ちを一番大事にしてほしい。神子の決めたことならば、おれたちは誰も文句は言わない」
おれが言葉を添えると、神子は落ち着いたようなので安心するとともに、おれは覚悟もした。
神子はそろそろ一人を選ぶつもりなのかもしれない。
神子の言っていた神子が召喚されてから九十日までまだ残り三十日以上あったが、神子の心は決まったのかもしれない。
おれがエスコートして神子を部屋に送って行ったが、甘い香りが強くしていたので、神子の用に視線を向ければ、顔が赤くなっている。
突発的なヒートを起こしそうになっているのだろうか。
「あの、手を……」
「嫌か?」
「いえ、その……」
ジェラルド殿下のエスコートもオルランド閣下のエスコートも嫌がったのとのない神子だったが、おれの手に手を乗せているのは気になるようだ。嫌ならばやめるのだが、神子はそうではないような気配をさせている。
部屋まで送って行った後で、神子の香りが残っているようで、おれはそれを振り払うように自分も部屋に戻った。
その後で、神子から短い手紙が来た。
『ファウスト様。
内密にお話があるのでおれの部屋に来てくれませんか?
神子』
甘い香りのする手紙を握り締めて、おれは何事かと思っていた。
部屋に呼ばれるのだから神子が突発的なヒートを起こしたときにどうすればいいかも考えておかなければいけない。
腰のナイフを確かめて、神子が突発的なヒートを起こしたら迷わずこれで太ももか腕を刺して、痛みで正気のうちに立ち去ろうと決めた。
神子の部屋に行くと、神子はおれを待っていたようで、誰にも見られないように素早くおれを部屋の中に入れてくれた。ドアの横に護衛がいるのを確かめて、おれは護衛と何かあったときには頼むと言うようにアイコンタクトを取る。
ソファに座ると、ローテーブルにはレモネードのピッチャーが置いてあって、神子はおれの分のグラスを神官に持って来てもらって、おれにレモネードを注いで差し出した。
この様子だとおれに相談がありそうだ。
王宮でジェラルド殿下と庭を歩いた際に無体を働かれそうになったか、逆に神子がジェラルド殿下を受け入れたか、だろう。
「ジェラルド殿下と何かあったのか?」
「え?」
まず無体の方を疑ってみたが、神子が黒い目を真ん丸にしているので、それはなさそうだった。
何かあったのならば、神子の黒い目には涙の幕が張って、緊張が張りつめるはずだ。
濃い甘い香りがして、理性を失わないようにおれはぎゅっと拳を握って手の平に爪を立てる。
「王宮での夜、ジェラルド殿下と神子が二人で庭を歩いていたという報告は受けている。神子はジェラルド殿下を選んだのか?」
次の可能性について問いかけるとき、おれの胸が痛んだが、そんなことはどうでもいい。
神子の幸せこそがこの世界の繁栄をもたらすのだ。
神子が選んだのだったら仕方がない。
それに関して、神子は首を振った。
「何もありません。庭を案内してもらっただけです。おれは誰も選んでいません」
「そうか。それならまだおれにもチャンスがあるな」
「その件なのですが……」
思わず口に出してから、神子を脅かすかもしれないとおれが口を閉じたら、神子が思いがけない強い口調で問いかけてきた。
「ファウスト様は、おれのことをどう思っているのですか?」
神子への気持ちは伝えたつもりだったが、神子はおれから何を聞きたいのだろう。
「神子は、おれになにを言わせたいのだ?」
「ファウスト様の気持ちを確かめたいのです」
おれの気持ちを確かめたいという神子の候補の中におれはまだいるのだろうか。
甘い香りが強くて理性が揺らぎそうになるが、耐えておれは少し笑んだ。
「そうだな。神子にそんな小細工はできないな」
おれの理性を試しているのかもしれないが、神子にはそんな小細工はできないだろう。
ただ本気で聞きたいから聞いているにすぎないと判断する。
表情を引き締めて、おれは神子に真剣に告げた。
「おれは神子を愛している。おれは不器用だから、美辞麗句は延べられない。ただ、おれの気持ちは変わりない」
ぶわっとただでさえ濃い神子の香りが、更に強くなった。くらくらしそうになっているおれに気付いたのか、神子が慌てだす。
「わ、分かりました。用事はそれだけです」
「もういいのか?」
「は、はい」
「おれの態度が神子を不安にさせたのではないか?」
「もう、いいです! 早く部屋から出て行ってください!」
神子が心配だったが、神子はもうおれとは同席していたくないようだ。
嫌われたかもしれない。
胸が痛んだが、おれは神子の言う通りにソファから立ち上がった。
「呼び出して申し訳ありませんでしたが、今は、一人にしてください!」
追い出されてしまったおれは、軍服の胸の辺りを掴んで廊下で天井を仰いでいた。
神子に嫌われるのがこんなにもつらいとは思わなかった。
おれは二度も神子に無理やり口付けているし、そのことを誰にも明かしていない。神子はおれに相談はしてくるが、おれのことを相談できる相手がいなかったのだろう。
この想いは諦めなければいけない。
そう思えば思うほど強く燃え上がる恋心というやつが厄介で、おれはどうしようもなく立ち竦んでいた。
部屋に帰ってからおれは苦悩したが、神子を諦めるにしてももう一度だけ神子に謝罪して、けじめをつけたいと思った。
その日は冷静になれなかったので、翌日おれは神子に手紙を書いた。
『神子へ。
伝えたいことがあります。決して神子を脅かすことはしないので、今夜神子の部屋に行ってみいいでしょうか?
ファウスト・ダリア』
断られたらもうどうしようもない。
神子がおれを側に置きたくないくらい怖いと思っているのだったら、この神殿も去ることにしよう。
そう決めていたら、神子から返事があった。
『ファウスト様。
二人きりで部屋で会うことはできません。オルランド閣下が立ち会ってくれて、祈りの部屋ででしたらお会いします。
神子』
二人きりで会いたくないという神子の気持ちはよく分かった。
おれはそれでいいので会ってくれるように手紙を書いた。
夕食後、祈りの部屋に行くとオルランド閣下が来ていた。
オルランド閣下はおれの表情を見て心配してくれた。
「ファウスト殿、思い詰めている様子ですが、何かありましたか?」
おれはオルランド閣下に昨日神子の部屋に呼びだされ、気持ちを確認された後、部屋から追い出された件について伝えることにした。
「わたしは神子に嫌われたのかもしれません」
「ファウスト殿、神子は理由なくひとを嫌うような方ではありません。何があったのですか?」
まず結論から口にすると、オルランド閣下が説明を求める。
「昨日、神子の部屋に呼ばれて、気持ちを聞かれました。わたしが美しい言葉も述べられずに率直な気持ちを口にしたら、神子はわたしを部屋から追い出したのです。恐らく、わたしの気持ちが負担だったのでしょう」
「神子に理由を聞いたのですか?」
「聞こうとしても機会がなく、神子の部屋を訪ねたいと手紙を出しても断られて、オルランド閣下と一緒にこの部屋でならばと条件を付けられました」
詳細な説明を口にすると、オルランド閣下は理性的に対応してくれているが、おれは冷静ではなかったかもしれない。
「神子は、わたしが怖いのかもしれない」
このことがずっと頭から離れない。
不安になるおれに、オルランド閣下が確認する。
「ファウスト殿は神子を愛しているのですね」
「それは間違いなく。オルランド閣下もそうでしょう?」
「わたしも神子を愛していますが、ファウスト殿はいつも神子に一番近い位置にいた気がします」
「それはジェラルド殿下では?」
「神子に近寄って行って親しくしていたのはジェラルド殿下かもしれませんが、神子になにがあろうと守り抜き、神子の信頼を得たのはファウスト殿、あなたでしょう?」
少し悔しさをにじませたオルランド閣下の言葉に、おれは驚いていた。
神子がおれを信頼している?
昨日部屋から追い出されたのに?
「本当にわたしが信頼されているのでしょうか」
「わたしが神子に無体を働こうとしたときに、一番にファウスト殿を呼んできてもらいました。その期待通り、ファウスト殿はわたしを退け、神子を守りました」
「あのとき、わたしも理性を保てていたか分かりません。獣のような顔をしていたかもしれない。神子はそれが怖かったのではないでしょうか?」
「それでも、ファウスト様は神子を守ったのでしょう? 護衛の騎士から報告を受けています」
オルランド閣下と話していると、神子が入り口の垂れ幕を潜って中に入ってきた。
おれは何を言われるのか。
身を固くして神子の言葉を受け入れる心の準備をした。
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