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ヴォルフラム(攻め)視点
6.夫夫の寝室で眠るようになって
ヒートの間中ヴォルフラムはアレクシスと寝室を共にした。
アレクシスの部屋のベッドはアレクシスの体格に合わせて広く大きなものだったが、ヴォルフラムもアルファで体格はいい方なので一緒に眠るとどうしても狭くなってしまう。
最初の三日間はアレクシスのフェロモンに当てられて、眠るのも食べるのも忘れて、ただひたすら体を交わした。ベッドサイドのテーブルの上の水差しで水分補給だけしていたが、それ以外はほとんど繋がって過ごせたのは、ヴォルフラムもアレクシスも体力があったからだろう。
四日目からはアレクシスのヒートも落ち着いてきて、体を清めたり、食事をしたりする余裕が生まれた。
バスルームでヴォルフラムはアレクシスの体を洗い、髪も洗った。番になったのだからできることは何でもしてやりたかった。心地よさそうにアレクシスも身を任せてくれていた。
アレクシスの態度から全幅の信頼を感じ取って、ヴォルフラムの胸も満たされた。
ヒートで交わる前は、他の男にアレクシスが抱かれたことが気になっていたが、抱き合ってからは今後アレクシスは番になったアルファであるヴォルフラム以外に触れられるのも嫌がるようになるはずなので、それがヴォルフラムの心を満たしてくれた。
激しく交わったのでアレクシスの体にはヴォルフラムの吸い跡や噛み跡がたくさん残っていた。自分のものだと主張するようにヴォルフラムはアレクシスの体に痕を付けずにはいられなかった。
「ヴォルフラム様、見えるところに噛み跡をつけるのは控えてもらえますか?」
「すまない。アレクシスがおれのものになったと思うと嬉しくて、加減ができなくなっていた」
アレクシスに言われると反省するのだが、実際にベッドに戻るときっと理性など飛んでしまうとヴォルフラムは心の中でアレクシスに謝った。
バスルームから出ると、ベッドが整えられていて、ヴォルフラムはがっかりしてしまう。
ベッドの上に散らばっていたヴォルフラムの衣服は色んな体液に汚れていたので片付けられるのは仕方がないが、アレクシスが作ってくれたオメガの巣がなくなっているのには落胆してしまった。
「アレクシスがせっかく巣作りをしてくれていたのに」
「あの……無断でヴォルフラム様のものを借りていてすみませんでした」
「いいんだ。嬉しかった。おれのものがよく見当たらなくなると思っていたが、アレクシスだったんだな。今後は、おれのものを借りたければ、部屋から自由に持って行っていいから」
「いいんですか?」
「番のオメガの巣作りを嫌がるアルファはいないよ」
アレクシスは恐縮して謝ってくれたが、ヴォルフラムは全く嫌ではないどころか、もっとアレクシスに巣作りをしてほしかった。オメガは意中のアルファのものを集めてしか巣作りはしない。
ヴォルフラムのものを集めてアレクシスが巣作りをしたということは、アレクシスがヴォルフラムを想っているという証でもあった。
侍女が机の上に置いていたトレイのサンドイッチとティーセット、ドライフルーツを入れたヨーグルトで腹ごしらえをすると、ヴォルフラムとアレクシスはまたベッドに戻った。
ヒートの期間を二人きりで過ごせて、番にもなれて、ヴォルフラムは相当気持ちが安定した。
ヒートが終わった日に体を清めて衣服を着るアレクシスに、ヴォルフラムはエメラルドの飾られたチョーカーを差し出した。
もう番になったのだからチョーカーはいらないかもしれないが、ヴォルフラムの目の色そっくりのエメラルドを身に着けているアレクシスは自分のものだという実感が持てたし、アレクシスにチョーカーは似合っていたので着けてほしいと思ったのだ。
そんなヴォルフラムに、アレクシスは鍵はヴォルフラムが持っていてほしいと言った。ヴォルフラムの前以外で外すことはないから、ヴォルフラムが鍵を管理していいと言ってくれたのだ。
嬉しくて浮かれるヴォルフラムに、アレクシスは以前よりも柔らかな表情を見せてくれるようになった気がしていた。
ヒートが終わった日からアレクシスは執務に戻って、日付が変わるような時間まで仕事に励んでいた。ヒートの期間中、誰も執務をやる人物がいなくて溜まっていたのだ。
これまではアレクシスと机を挟んで向かいに座るかソファだったが、アレクシスの横に椅子を持って来て座って、ヴォルフラムもアレクシスの執務を手伝った。
時刻が遅くなってきて、ヴォルフラムはアレクシスに声をかける。
「アレクシス、もうそろそろ休んだ方がいいんじゃないか?」
「そうですね。今、最後の仕事が終わりました」
休むならば一緒に眠りたい。
そう思って声をかけると、ヒートは終わったという返事が来る。それにめげずにヴォルフラムはアレクシスを口説いた。
「愛してると言ったじゃないか。愛してるから、ヒートじゃなくてもアレクシスを抱きたい。ダメか?」
「明日も執務があるので、抱かれると執務に差支えが……」
「今日は抱かなくてもいい。抱き締めて眠るだけでもダメか?」
とにかく二人で一緒に眠りたい。
番になったのだから離れ離れになりたくないと思うヴォルフラムに、アレクシスも譲歩してくれる。
「執務がない日の前日なら、抱いても構いません。一緒に眠るなら、わたしの部屋ではなくて夫夫の寝室を使った方がいいのではないですか?」
「夫夫の寝室には巣作りをしてくれないだろう?」
「そ、れは……」
結婚したときに用意された夫夫の寝室をまだヴォルフラムとアレクシスは使っていなかったが、アレクシスはずっと自分のベッドに巣作りをしていた。できればアレクシスが作った巣の中で眠りたいと思うヴォルフラムに、アレクシスが恥ずかしそうに答える。
「夫夫の寝室を使うようになったら、そっちにも巣作りするかもしれません」
「アレクシス、夫夫の寝室に行こう」
嬉しくて笑顔になってアレクシスの手を引いて夫夫の寝室に行くと、ヴォルフラムはジャケットを脱ぎ、タイを外し、シャツを脱いで、スラックスも脱いで、脱ぎたての衣服をアレクシスに渡した。
「これ、使っていいよ」
「あ、ありがとうございます?」
脱ぎたての衣服ならばフェロモンも強いだろうと思って渡すと、アレクシスは一瞬戸惑っていたようだが、それをすんと嗅いで真剣な眼差しになって夫夫の寝室の広いベッドの上にジャケットとシャツとタイとスラックスを配置した。
満足そうにしているアレクシスを確認して、下着姿のヴォルフラムはバスルームに入った。
ヴォルフラムがバスルームから出るとアレクシスがバスルームに入って体を清めて出てきた。
「アレクシス、ベッドに入ろうか」
「はい」
ベッドに入って、ヴォルフラムはどれだけアレクシスを愛しているか、アレクシスに憧れて追いかけてきたかを情熱的に語った。戸惑っているようだったがアレクシスは豊かな胸に顔を埋めるヴォルフラムの髪を撫でながら聞いてくれた。
「おれは、ずっとあなたを探してた……。愛してる、おれの運命のひと」
それに対して、アレクシスが「多分、わたしも……」と小さく呟くのが聞こえた気がしたが、それが現実だったのか眠ってしまったヴォルフラムには分からなかった。
初めて一緒に過ごしたヒートから少ししてアレクシスが子どもができていないことを気にして、ヴォルフラムに愛人を持っていいと言い出したときには、このひとは何を言っているのだろうと思ってしまった。
「冗談じゃない。アレクシスとやっと正式な夫夫になれたんだ。アレクシス以外を愛するつもりはないよ」
「でも……」
「アレクシスはおれがあなた以外を抱いても平気なのか?」
「あなたが……わたし以外を……」
「アレクシス以外に睦言を囁いて、子種を注ぎ込むおれなど、考えたくもない」
想像もしていなかったように呟くアレクシスに追い打ちをかけるように言えば、アレクシスは胸を押さえている。
「ヴォルフラム様、ここが痛いです」
「アレクシス、それは嫉妬だよ。おれもアレクシスの周囲にいた相手にずっと嫉妬してた」
「わたしは、嫉妬してもいいのですか?」
「当然だよ。アレクシスはおれの夫なんだから、自分の夫が誰かに奪われそうになったら嫉妬していい。嫉妬されたら、おれも嬉しい」
「嫉妬が嬉しい……」
嫉妬するということも知らなかったようで、ヴォルフラムはアレクシスに丁寧に教える。
愛し合った夫婦の子どもではないアレクシスは嫉妬という感情も理解していなかったのだろう。
「おれもあなたが後ろで受け入れたことがあると聞いて嫉妬した。それで、初めて抱いたときに、おれしか届かないところまで犯してしまった。手酷く抱いたことを許してほしい」
「ヒート中だったので何をされても気持ちがよかったし、何も嫌なことはされていませんよ」
初めてのときに手荒く抱いてしまったことを謝れば、アレクシスは嫌ではなかったと答える。
素直に自分の気持ちもアレクシスに伝えられたし、ヴォルフラムとしてはアレクシスが他の男に抱かれた件に関しては、これで終わりにしようと思っていた。
それから結婚式のやり直しを提案すると、アレクシスはハインケス子爵家に肩代わりしてもらっていると思い込んでいる借金の半額を返したいと申し出てきた。
あの金はヴォルフラムが事業で稼いだものなのだから気にしないでいい。
その説明をすると、アレクシスは驚いていた様子だが、ヴォルフラムがアレクシスに愛の言葉を囁けば、妙なことを言い出す。
「アレクシス、おれがどれだけあなたを愛しているか伝わっていればいいんだが」
「わたしに愛されるような要素はないと思っていました。それなのに、あなたは学園にいたころからわたしのことを想っていたという。ヴォルフラム様、あなたは……」
「おれは?」
「特殊な趣味をなさっているんですか?」
「特殊な趣味!? どうして? アレクシスはこんなに格好よくて素晴らしいのに」
「わたしは普通のオメガのように儚くも美しくもありません」
「普通のオメガなんて知らない。おれはアレクシスの豊かな胸、しっかりとした腰、鍛え上げられた腕と脚、汗ばんで艶の出る褐色の肌が最高にそそると思っている」
「はぁ」
なんだか誤解されているようだが、ヴォルフラムはアレクシス以上に素晴らしいオメガは知らないし、アレクシスが例えアルファであったとしても結婚を申し込んでいただろう。
「いいですよ。しましょう、結婚式のやり直し」
「あのときの衣装も実は気に入ってなかったんだ。仕立て職人を呼ぼう」
最終的にはアレクシスは結婚式のやり直しをすることを了承してくれた。
アレクシスの部屋のベッドはアレクシスの体格に合わせて広く大きなものだったが、ヴォルフラムもアルファで体格はいい方なので一緒に眠るとどうしても狭くなってしまう。
最初の三日間はアレクシスのフェロモンに当てられて、眠るのも食べるのも忘れて、ただひたすら体を交わした。ベッドサイドのテーブルの上の水差しで水分補給だけしていたが、それ以外はほとんど繋がって過ごせたのは、ヴォルフラムもアレクシスも体力があったからだろう。
四日目からはアレクシスのヒートも落ち着いてきて、体を清めたり、食事をしたりする余裕が生まれた。
バスルームでヴォルフラムはアレクシスの体を洗い、髪も洗った。番になったのだからできることは何でもしてやりたかった。心地よさそうにアレクシスも身を任せてくれていた。
アレクシスの態度から全幅の信頼を感じ取って、ヴォルフラムの胸も満たされた。
ヒートで交わる前は、他の男にアレクシスが抱かれたことが気になっていたが、抱き合ってからは今後アレクシスは番になったアルファであるヴォルフラム以外に触れられるのも嫌がるようになるはずなので、それがヴォルフラムの心を満たしてくれた。
激しく交わったのでアレクシスの体にはヴォルフラムの吸い跡や噛み跡がたくさん残っていた。自分のものだと主張するようにヴォルフラムはアレクシスの体に痕を付けずにはいられなかった。
「ヴォルフラム様、見えるところに噛み跡をつけるのは控えてもらえますか?」
「すまない。アレクシスがおれのものになったと思うと嬉しくて、加減ができなくなっていた」
アレクシスに言われると反省するのだが、実際にベッドに戻るときっと理性など飛んでしまうとヴォルフラムは心の中でアレクシスに謝った。
バスルームから出ると、ベッドが整えられていて、ヴォルフラムはがっかりしてしまう。
ベッドの上に散らばっていたヴォルフラムの衣服は色んな体液に汚れていたので片付けられるのは仕方がないが、アレクシスが作ってくれたオメガの巣がなくなっているのには落胆してしまった。
「アレクシスがせっかく巣作りをしてくれていたのに」
「あの……無断でヴォルフラム様のものを借りていてすみませんでした」
「いいんだ。嬉しかった。おれのものがよく見当たらなくなると思っていたが、アレクシスだったんだな。今後は、おれのものを借りたければ、部屋から自由に持って行っていいから」
「いいんですか?」
「番のオメガの巣作りを嫌がるアルファはいないよ」
アレクシスは恐縮して謝ってくれたが、ヴォルフラムは全く嫌ではないどころか、もっとアレクシスに巣作りをしてほしかった。オメガは意中のアルファのものを集めてしか巣作りはしない。
ヴォルフラムのものを集めてアレクシスが巣作りをしたということは、アレクシスがヴォルフラムを想っているという証でもあった。
侍女が机の上に置いていたトレイのサンドイッチとティーセット、ドライフルーツを入れたヨーグルトで腹ごしらえをすると、ヴォルフラムとアレクシスはまたベッドに戻った。
ヒートの期間を二人きりで過ごせて、番にもなれて、ヴォルフラムは相当気持ちが安定した。
ヒートが終わった日に体を清めて衣服を着るアレクシスに、ヴォルフラムはエメラルドの飾られたチョーカーを差し出した。
もう番になったのだからチョーカーはいらないかもしれないが、ヴォルフラムの目の色そっくりのエメラルドを身に着けているアレクシスは自分のものだという実感が持てたし、アレクシスにチョーカーは似合っていたので着けてほしいと思ったのだ。
そんなヴォルフラムに、アレクシスは鍵はヴォルフラムが持っていてほしいと言った。ヴォルフラムの前以外で外すことはないから、ヴォルフラムが鍵を管理していいと言ってくれたのだ。
嬉しくて浮かれるヴォルフラムに、アレクシスは以前よりも柔らかな表情を見せてくれるようになった気がしていた。
ヒートが終わった日からアレクシスは執務に戻って、日付が変わるような時間まで仕事に励んでいた。ヒートの期間中、誰も執務をやる人物がいなくて溜まっていたのだ。
これまではアレクシスと机を挟んで向かいに座るかソファだったが、アレクシスの横に椅子を持って来て座って、ヴォルフラムもアレクシスの執務を手伝った。
時刻が遅くなってきて、ヴォルフラムはアレクシスに声をかける。
「アレクシス、もうそろそろ休んだ方がいいんじゃないか?」
「そうですね。今、最後の仕事が終わりました」
休むならば一緒に眠りたい。
そう思って声をかけると、ヒートは終わったという返事が来る。それにめげずにヴォルフラムはアレクシスを口説いた。
「愛してると言ったじゃないか。愛してるから、ヒートじゃなくてもアレクシスを抱きたい。ダメか?」
「明日も執務があるので、抱かれると執務に差支えが……」
「今日は抱かなくてもいい。抱き締めて眠るだけでもダメか?」
とにかく二人で一緒に眠りたい。
番になったのだから離れ離れになりたくないと思うヴォルフラムに、アレクシスも譲歩してくれる。
「執務がない日の前日なら、抱いても構いません。一緒に眠るなら、わたしの部屋ではなくて夫夫の寝室を使った方がいいのではないですか?」
「夫夫の寝室には巣作りをしてくれないだろう?」
「そ、れは……」
結婚したときに用意された夫夫の寝室をまだヴォルフラムとアレクシスは使っていなかったが、アレクシスはずっと自分のベッドに巣作りをしていた。できればアレクシスが作った巣の中で眠りたいと思うヴォルフラムに、アレクシスが恥ずかしそうに答える。
「夫夫の寝室を使うようになったら、そっちにも巣作りするかもしれません」
「アレクシス、夫夫の寝室に行こう」
嬉しくて笑顔になってアレクシスの手を引いて夫夫の寝室に行くと、ヴォルフラムはジャケットを脱ぎ、タイを外し、シャツを脱いで、スラックスも脱いで、脱ぎたての衣服をアレクシスに渡した。
「これ、使っていいよ」
「あ、ありがとうございます?」
脱ぎたての衣服ならばフェロモンも強いだろうと思って渡すと、アレクシスは一瞬戸惑っていたようだが、それをすんと嗅いで真剣な眼差しになって夫夫の寝室の広いベッドの上にジャケットとシャツとタイとスラックスを配置した。
満足そうにしているアレクシスを確認して、下着姿のヴォルフラムはバスルームに入った。
ヴォルフラムがバスルームから出るとアレクシスがバスルームに入って体を清めて出てきた。
「アレクシス、ベッドに入ろうか」
「はい」
ベッドに入って、ヴォルフラムはどれだけアレクシスを愛しているか、アレクシスに憧れて追いかけてきたかを情熱的に語った。戸惑っているようだったがアレクシスは豊かな胸に顔を埋めるヴォルフラムの髪を撫でながら聞いてくれた。
「おれは、ずっとあなたを探してた……。愛してる、おれの運命のひと」
それに対して、アレクシスが「多分、わたしも……」と小さく呟くのが聞こえた気がしたが、それが現実だったのか眠ってしまったヴォルフラムには分からなかった。
初めて一緒に過ごしたヒートから少ししてアレクシスが子どもができていないことを気にして、ヴォルフラムに愛人を持っていいと言い出したときには、このひとは何を言っているのだろうと思ってしまった。
「冗談じゃない。アレクシスとやっと正式な夫夫になれたんだ。アレクシス以外を愛するつもりはないよ」
「でも……」
「アレクシスはおれがあなた以外を抱いても平気なのか?」
「あなたが……わたし以外を……」
「アレクシス以外に睦言を囁いて、子種を注ぎ込むおれなど、考えたくもない」
想像もしていなかったように呟くアレクシスに追い打ちをかけるように言えば、アレクシスは胸を押さえている。
「ヴォルフラム様、ここが痛いです」
「アレクシス、それは嫉妬だよ。おれもアレクシスの周囲にいた相手にずっと嫉妬してた」
「わたしは、嫉妬してもいいのですか?」
「当然だよ。アレクシスはおれの夫なんだから、自分の夫が誰かに奪われそうになったら嫉妬していい。嫉妬されたら、おれも嬉しい」
「嫉妬が嬉しい……」
嫉妬するということも知らなかったようで、ヴォルフラムはアレクシスに丁寧に教える。
愛し合った夫婦の子どもではないアレクシスは嫉妬という感情も理解していなかったのだろう。
「おれもあなたが後ろで受け入れたことがあると聞いて嫉妬した。それで、初めて抱いたときに、おれしか届かないところまで犯してしまった。手酷く抱いたことを許してほしい」
「ヒート中だったので何をされても気持ちがよかったし、何も嫌なことはされていませんよ」
初めてのときに手荒く抱いてしまったことを謝れば、アレクシスは嫌ではなかったと答える。
素直に自分の気持ちもアレクシスに伝えられたし、ヴォルフラムとしてはアレクシスが他の男に抱かれた件に関しては、これで終わりにしようと思っていた。
それから結婚式のやり直しを提案すると、アレクシスはハインケス子爵家に肩代わりしてもらっていると思い込んでいる借金の半額を返したいと申し出てきた。
あの金はヴォルフラムが事業で稼いだものなのだから気にしないでいい。
その説明をすると、アレクシスは驚いていた様子だが、ヴォルフラムがアレクシスに愛の言葉を囁けば、妙なことを言い出す。
「アレクシス、おれがどれだけあなたを愛しているか伝わっていればいいんだが」
「わたしに愛されるような要素はないと思っていました。それなのに、あなたは学園にいたころからわたしのことを想っていたという。ヴォルフラム様、あなたは……」
「おれは?」
「特殊な趣味をなさっているんですか?」
「特殊な趣味!? どうして? アレクシスはこんなに格好よくて素晴らしいのに」
「わたしは普通のオメガのように儚くも美しくもありません」
「普通のオメガなんて知らない。おれはアレクシスの豊かな胸、しっかりとした腰、鍛え上げられた腕と脚、汗ばんで艶の出る褐色の肌が最高にそそると思っている」
「はぁ」
なんだか誤解されているようだが、ヴォルフラムはアレクシス以上に素晴らしいオメガは知らないし、アレクシスが例えアルファであったとしても結婚を申し込んでいただろう。
「いいですよ。しましょう、結婚式のやり直し」
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