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一章 王子と冒険者の出会い
7.高等学校初日
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爺やが僕には牛のモンスターのミルクの入った紅茶と魔力の宿った果物で作られたタルトを出す。
ロヴィーサ嬢には普通の牛のミルクの入った紅茶と、普通の果物で作られたタルトだ。
アプリコットに似た果物はコンポートされていて、甘酸っぱくてとても美味しい。歯ごたえもしっかりと残っている。
「この果物はとても美味しいです。ロヴィーサ嬢ありがとうございます」
「わたくしでエドヴァルド殿下のお役に立てるのならば」
言いながらもロヴィーサ嬢は落ち着かない様子で、カップとソーサーを持ち上げてはテーブルに降ろし、フォークを手にとってはお皿に返している。
「ロヴィーサ嬢のは毒素はありませんよ」
「分かっております。匂いで分かります。それに、わたくしは少しの毒素ならば平気なのです」
ロヴィーサ嬢の言うことに僕は菫色の目を丸くした。
常人ならば触れるだけで毒素に侵されてしまうようなものを、ロヴィーサ嬢は普通に持ってくる。そのことに疑問を覚えていないわけではなかった。
「鬼の力の指輪を持ってミエト家に来た曾祖父は、魔族だったのです。わたくしにも魔族の血が少しだけ入っております」
魔族の国とは交流が盛んなので、魔族の国の貴族とこの国の貴族との結婚も何組も結ばれていたことは僕も知っている。数が多いので把握できていなかっただけで、ミエト家もその一つだったようだ。
「魔族が生まれたときのために、曾祖父は鬼の力の指輪を曾祖母に託しました。ミエト家には魔族は生まれておりませんが」
そうなのだ。
人間と魔族が結婚した場合、人間の血が圧倒的に強いのか、魔族が生まれることはほぼない。僕のように純粋な魔族が生まれてしまったのは、非常に稀なことだった。
「私の子どもたちも皆人間ですな」
「爺やは母上のお付きとして魔族の国から来た魔族なんです。この国で結婚していますが、子どもはみんな人間です」
「殿下のように魔族の血を濃く引くことの方が珍しいのですよ」
爺やに言われて僕は、僕が生まれたせいで母上が亡くなったことを考えてしまう。
モンスターを食べることがなく、魔力が枯渇していた母上は、自分が魔族の子どもを産むだなんて思っていなかった。一番上のヒルダ姉上、二番目のエリアス兄上、三番目のエルランド兄上と、これまで生まれたのは全員人間の子どもだった。
油断していたのだと思う。
母上は妊娠期間中に体調を崩し、僕を産んですぐに亡くなった。
生まれてきた僕は魔族だった。
「僕は生まれてきたことを後悔したくないのです。ロヴィーサ嬢といると、僕は自然に健康に暮らせる。ロヴィーサ嬢が僕には必要なのです」
愛情を育むのはこれからでもできる。
僕はまだ十二歳で、ロヴィーサ嬢も十八歳だ。僕が成人する十八歳になる頃には、ロヴィーサ嬢を口説けるいい男になっている予定なのだ。
「婚約しても結婚するのは僕が成人してからです。それまで待たせる形になりますが、ロヴィーサ嬢、僕は必ずロヴィーサ嬢を満足させるいい男になってみせます」
「証拠を、見せてください」
「はい。まずは、所領を取り返すことですね」
「そうです」
声が震えているがロヴィーサ嬢ははっきりと僕に要求してくる。この気の強さが僕の心を震わせる。
ロヴィーサ嬢がはっきりと好きだと分かる。
「近いうちに必ずミエト侯爵家に所領を取り戻しましょう」
僕の宣言をロヴィーサ嬢は口を真一文字に結んで聞いていた。
その翌日から、僕は高等学校に行けることになっていた。
エルランド兄上は高等学校の五年生だ。
エルランド兄上と爺やと馬車に乗って高等学校に行く間、僕は浮かれていた。
「可愛いエドと高等学校に行けるなんて嬉しいな」
「二年間は一緒ですね、エルランド兄上」
「何かあったらいつでも私に言って来るんだよ。私が守ってあげるからね」
「はい、エルランド兄上!」
エルランド兄上と高等学校に通えるのも嬉しいし、高等学校という場に出られるのも嬉しい。
爺やを連れて一年生の教室に入ると、教室のざわめきがピタッと止んだ。
前の方の椅子に座ると、周囲からひとが離れていく。
魔族である僕を最初から受け入れられるとは思っていなかったが、こんなに顕著に避けられるとも思っていなかった。
ショックで気分が悪くなってきそうだったので、サラマンダーの腕を干したものをポーチから取り出してぽりぽりと齧る。サラマンダーの腕を干したものはカリカリとしてとても美味しい。
齧っていると、ますます周囲が離れて行った気がする。
「それ、何食べてるんだ?」
そんな僕に声をかけてきた男の子がいた。
「俺、アルマス! あ、王子様にこんな風に話しかけちゃダメなんだっけ?」
「よろしく、アルマス。僕はエドヴァルド・ナーラライネン」
アルマスは名字を名乗っていない。
名字がないのは平民だからだろう。
平民でなければ、魔族の王子の僕に話しかけてくるようなことはしない。
貴族や王族の通う高等学校にも、成績のいい平民は授業料を免除されて通えると聞いている。
アルマスは態度は問題ありだが、成績はいいのだろう。
「これは、サラマンダーの腕を干し肉にしたんだよ」
「王子様はサラマンダーを食うのか! すげーな!」
「僕が取って来たんじゃないけどね。取って来てくれるひとがいて、そのひとが取って来てくれたときには、ワイバーンを食べることもあるよ」
「すっげー! ワイバーンを解体するところ、俺も見てみたい!」
普通ならば不敬だと怒るのかもしれないが、僕はアルマスの気取らない態度が気に入ってしまった。
アルマスは周囲が僕を遠巻きに見ている中で、好意的に声をかけてくれた人物だ。
「アルマス、僕の学友になってくれない?」
「学友ってなにをするんだ?」
「僕と一緒に学んで、僕を将来支えてくれる役職に就くんだよ」
僕が説明すると、アルマスは目を輝かせている。
「成績がいいから、高等学校に行けって言われて行かされてたけど、王子様の学友になれるんなら来たかいがあるな。よろしく」
「あ、公の場ではちゃんと敬語で喋ってよね?」
「敬語かぁ。苦手なんだよなぁ」
アルマスもこの教室の中では存在が浮いていたようだった。
平民のアルマスと王子の僕と、二人で仲良く並んで授業を受ける。
人懐っこい喋りからは考えられないくらい、アルマスは頭がよかった。先生のどんな質問にもすらすらと答えられた。
お昼の休憩時間になると、僕は教室の後ろで見守っていた爺やに来てもらって、中庭でアルマスと一緒にお弁当を食べる。
僕のお弁当をアルマスは興味津々で覗き込んでいる。
「この肉はなんだ?」
「ブラックベアーの肝臓だよ」
「こっちは?」
「コカトリスの卵の卵焼き」
「このアプリコットみたいなのは?」
「触ったら危ないからね。常人には毒素があるんだ。これは魔物の魔力に晒された果物だよ」
お弁当も王宮の厨房の料理長の心遣いがこもっていて、どれもとても美味しく調理されていた。臭みを抜くために香草を使っていたり、スパイスを混ぜ込んでいたりして、工夫がなされている。
食べ終わって、足りなかったのでサラマンダーの腕をぽりぽりと食べていると、アルマスが僕のポーチを覗き込んでいた。
「魔族ってモンスターを食べないと死んじゃうんだろ。大変だな」
「僕も魔族に生まれたことを恨んだことはあるよ。でも家族に愛されてたから、何とか生きて来られた」
ヒルダ姉上は自ら冒険者ギルドに出向いてSSランクの冒険者『赤毛のマティルダ』と契約を結んでくれるし、エリアス兄上もエルランド兄上も、父上も、僕がこの国で魔族として生きていけるように手助けしてくれている。
「魔族って怖いイメージがあったんだけど、ものすごく美形なんだな」
「爺やも魔族だよ」
「すげー! めちゃくちゃ格好いいじゃないか」
アルマスの興味は全く不快ではなかった。好意的な感情が読み取れる。
学友になろうと申し出てよかったと僕は思っていた。
「エド、ここでお昼を食べていたのか。私も一緒に食べようと思っていたのに」
エルランド兄上が中庭にやって来た。エルランド兄上に周囲には、有力な貴族の子息たちが一緒にいる。
「エドヴァルド殿下、高校入学おめでとうございます」
「お身体はいかがですか?」
「苦しくは御座いませんか?」
エルランド兄上の取り巻きたちは丁寧に僕に挨拶をして問いかけて来る。
これが普通の対応なのだが、アルマスのものとは全く違っている。
「ありがとうございます。体の調子はいいです。エルランド兄上、仲良くなったアルマスとお弁当を食べていたのですよ」
「アルマス殿、エドと仲良くしてくださっているのですね」
「殿ぉ!? 俺が王子様に、アルマス殿とか呼ばれちゃってる!?」
「アルマス、エルランド兄上には敬語を使って」
「お、お初にお目にかかりまする。アルマスで御座りまする」
アルマスの敬語はかなりおかしかったけれど、エルランド兄上も、その取り巻きたちも笑ったりせずに、それぞれ名乗って友好を深めていた。
「身分の高いひとたちは、上品なんだな」
エルランド兄上とその取り巻きたちが去った後で、アルマスは握手した手をじっと見つめていた。
アルマスの態度がおかしくても笑ったりしない。それだけの教育がエルランド兄上の取り巻きたちには行き渡っているということだ。
僕が学友と認めたアルマスを笑うことは、僕を侮辱することにも繋がる。それを彼らはしっかりと分かっていた。
「アルマス、敬語、練習しようね」
「そうだな。俺も王宮に仕えられるようになるのか」
夢見るようにアルマスが呟いている。アルマスの夢は王宮に仕えることだったようだ。
僕の高等学校初日は、順調に始まった。
ロヴィーサ嬢には普通の牛のミルクの入った紅茶と、普通の果物で作られたタルトだ。
アプリコットに似た果物はコンポートされていて、甘酸っぱくてとても美味しい。歯ごたえもしっかりと残っている。
「この果物はとても美味しいです。ロヴィーサ嬢ありがとうございます」
「わたくしでエドヴァルド殿下のお役に立てるのならば」
言いながらもロヴィーサ嬢は落ち着かない様子で、カップとソーサーを持ち上げてはテーブルに降ろし、フォークを手にとってはお皿に返している。
「ロヴィーサ嬢のは毒素はありませんよ」
「分かっております。匂いで分かります。それに、わたくしは少しの毒素ならば平気なのです」
ロヴィーサ嬢の言うことに僕は菫色の目を丸くした。
常人ならば触れるだけで毒素に侵されてしまうようなものを、ロヴィーサ嬢は普通に持ってくる。そのことに疑問を覚えていないわけではなかった。
「鬼の力の指輪を持ってミエト家に来た曾祖父は、魔族だったのです。わたくしにも魔族の血が少しだけ入っております」
魔族の国とは交流が盛んなので、魔族の国の貴族とこの国の貴族との結婚も何組も結ばれていたことは僕も知っている。数が多いので把握できていなかっただけで、ミエト家もその一つだったようだ。
「魔族が生まれたときのために、曾祖父は鬼の力の指輪を曾祖母に託しました。ミエト家には魔族は生まれておりませんが」
そうなのだ。
人間と魔族が結婚した場合、人間の血が圧倒的に強いのか、魔族が生まれることはほぼない。僕のように純粋な魔族が生まれてしまったのは、非常に稀なことだった。
「私の子どもたちも皆人間ですな」
「爺やは母上のお付きとして魔族の国から来た魔族なんです。この国で結婚していますが、子どもはみんな人間です」
「殿下のように魔族の血を濃く引くことの方が珍しいのですよ」
爺やに言われて僕は、僕が生まれたせいで母上が亡くなったことを考えてしまう。
モンスターを食べることがなく、魔力が枯渇していた母上は、自分が魔族の子どもを産むだなんて思っていなかった。一番上のヒルダ姉上、二番目のエリアス兄上、三番目のエルランド兄上と、これまで生まれたのは全員人間の子どもだった。
油断していたのだと思う。
母上は妊娠期間中に体調を崩し、僕を産んですぐに亡くなった。
生まれてきた僕は魔族だった。
「僕は生まれてきたことを後悔したくないのです。ロヴィーサ嬢といると、僕は自然に健康に暮らせる。ロヴィーサ嬢が僕には必要なのです」
愛情を育むのはこれからでもできる。
僕はまだ十二歳で、ロヴィーサ嬢も十八歳だ。僕が成人する十八歳になる頃には、ロヴィーサ嬢を口説けるいい男になっている予定なのだ。
「婚約しても結婚するのは僕が成人してからです。それまで待たせる形になりますが、ロヴィーサ嬢、僕は必ずロヴィーサ嬢を満足させるいい男になってみせます」
「証拠を、見せてください」
「はい。まずは、所領を取り返すことですね」
「そうです」
声が震えているがロヴィーサ嬢ははっきりと僕に要求してくる。この気の強さが僕の心を震わせる。
ロヴィーサ嬢がはっきりと好きだと分かる。
「近いうちに必ずミエト侯爵家に所領を取り戻しましょう」
僕の宣言をロヴィーサ嬢は口を真一文字に結んで聞いていた。
その翌日から、僕は高等学校に行けることになっていた。
エルランド兄上は高等学校の五年生だ。
エルランド兄上と爺やと馬車に乗って高等学校に行く間、僕は浮かれていた。
「可愛いエドと高等学校に行けるなんて嬉しいな」
「二年間は一緒ですね、エルランド兄上」
「何かあったらいつでも私に言って来るんだよ。私が守ってあげるからね」
「はい、エルランド兄上!」
エルランド兄上と高等学校に通えるのも嬉しいし、高等学校という場に出られるのも嬉しい。
爺やを連れて一年生の教室に入ると、教室のざわめきがピタッと止んだ。
前の方の椅子に座ると、周囲からひとが離れていく。
魔族である僕を最初から受け入れられるとは思っていなかったが、こんなに顕著に避けられるとも思っていなかった。
ショックで気分が悪くなってきそうだったので、サラマンダーの腕を干したものをポーチから取り出してぽりぽりと齧る。サラマンダーの腕を干したものはカリカリとしてとても美味しい。
齧っていると、ますます周囲が離れて行った気がする。
「それ、何食べてるんだ?」
そんな僕に声をかけてきた男の子がいた。
「俺、アルマス! あ、王子様にこんな風に話しかけちゃダメなんだっけ?」
「よろしく、アルマス。僕はエドヴァルド・ナーラライネン」
アルマスは名字を名乗っていない。
名字がないのは平民だからだろう。
平民でなければ、魔族の王子の僕に話しかけてくるようなことはしない。
貴族や王族の通う高等学校にも、成績のいい平民は授業料を免除されて通えると聞いている。
アルマスは態度は問題ありだが、成績はいいのだろう。
「これは、サラマンダーの腕を干し肉にしたんだよ」
「王子様はサラマンダーを食うのか! すげーな!」
「僕が取って来たんじゃないけどね。取って来てくれるひとがいて、そのひとが取って来てくれたときには、ワイバーンを食べることもあるよ」
「すっげー! ワイバーンを解体するところ、俺も見てみたい!」
普通ならば不敬だと怒るのかもしれないが、僕はアルマスの気取らない態度が気に入ってしまった。
アルマスは周囲が僕を遠巻きに見ている中で、好意的に声をかけてくれた人物だ。
「アルマス、僕の学友になってくれない?」
「学友ってなにをするんだ?」
「僕と一緒に学んで、僕を将来支えてくれる役職に就くんだよ」
僕が説明すると、アルマスは目を輝かせている。
「成績がいいから、高等学校に行けって言われて行かされてたけど、王子様の学友になれるんなら来たかいがあるな。よろしく」
「あ、公の場ではちゃんと敬語で喋ってよね?」
「敬語かぁ。苦手なんだよなぁ」
アルマスもこの教室の中では存在が浮いていたようだった。
平民のアルマスと王子の僕と、二人で仲良く並んで授業を受ける。
人懐っこい喋りからは考えられないくらい、アルマスは頭がよかった。先生のどんな質問にもすらすらと答えられた。
お昼の休憩時間になると、僕は教室の後ろで見守っていた爺やに来てもらって、中庭でアルマスと一緒にお弁当を食べる。
僕のお弁当をアルマスは興味津々で覗き込んでいる。
「この肉はなんだ?」
「ブラックベアーの肝臓だよ」
「こっちは?」
「コカトリスの卵の卵焼き」
「このアプリコットみたいなのは?」
「触ったら危ないからね。常人には毒素があるんだ。これは魔物の魔力に晒された果物だよ」
お弁当も王宮の厨房の料理長の心遣いがこもっていて、どれもとても美味しく調理されていた。臭みを抜くために香草を使っていたり、スパイスを混ぜ込んでいたりして、工夫がなされている。
食べ終わって、足りなかったのでサラマンダーの腕をぽりぽりと食べていると、アルマスが僕のポーチを覗き込んでいた。
「魔族ってモンスターを食べないと死んじゃうんだろ。大変だな」
「僕も魔族に生まれたことを恨んだことはあるよ。でも家族に愛されてたから、何とか生きて来られた」
ヒルダ姉上は自ら冒険者ギルドに出向いてSSランクの冒険者『赤毛のマティルダ』と契約を結んでくれるし、エリアス兄上もエルランド兄上も、父上も、僕がこの国で魔族として生きていけるように手助けしてくれている。
「魔族って怖いイメージがあったんだけど、ものすごく美形なんだな」
「爺やも魔族だよ」
「すげー! めちゃくちゃ格好いいじゃないか」
アルマスの興味は全く不快ではなかった。好意的な感情が読み取れる。
学友になろうと申し出てよかったと僕は思っていた。
「エド、ここでお昼を食べていたのか。私も一緒に食べようと思っていたのに」
エルランド兄上が中庭にやって来た。エルランド兄上に周囲には、有力な貴族の子息たちが一緒にいる。
「エドヴァルド殿下、高校入学おめでとうございます」
「お身体はいかがですか?」
「苦しくは御座いませんか?」
エルランド兄上の取り巻きたちは丁寧に僕に挨拶をして問いかけて来る。
これが普通の対応なのだが、アルマスのものとは全く違っている。
「ありがとうございます。体の調子はいいです。エルランド兄上、仲良くなったアルマスとお弁当を食べていたのですよ」
「アルマス殿、エドと仲良くしてくださっているのですね」
「殿ぉ!? 俺が王子様に、アルマス殿とか呼ばれちゃってる!?」
「アルマス、エルランド兄上には敬語を使って」
「お、お初にお目にかかりまする。アルマスで御座りまする」
アルマスの敬語はかなりおかしかったけれど、エルランド兄上も、その取り巻きたちも笑ったりせずに、それぞれ名乗って友好を深めていた。
「身分の高いひとたちは、上品なんだな」
エルランド兄上とその取り巻きたちが去った後で、アルマスは握手した手をじっと見つめていた。
アルマスの態度がおかしくても笑ったりしない。それだけの教育がエルランド兄上の取り巻きたちには行き渡っているということだ。
僕が学友と認めたアルマスを笑うことは、僕を侮辱することにも繋がる。それを彼らはしっかりと分かっていた。
「アルマス、敬語、練習しようね」
「そうだな。俺も王宮に仕えられるようになるのか」
夢見るようにアルマスが呟いている。アルマスの夢は王宮に仕えることだったようだ。
僕の高等学校初日は、順調に始まった。
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