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三章 セラフィナの婚約
12.ベルンハルト公爵家からの帰還
翌朝はよく晴れていて、その分気温も低かった。
わたくしが目覚めるころには部屋の暖炉には火がともされて、部屋は暖かくなっていたがそれでも布団を出るのを躊躇わせた。布団から出るとお手洗いに行きたくなってわたくしはすぐにマティルダさんを呼ぶ。
マティルダさんにお手洗いに連れて行ってもらって、着替えも手伝ってもらった。五歳になったのでわたくしは背中のボタンを留める以外の着替えはほとんど自分でできるようになっていた。
靴下も左右を間違わずにはくことができるし、ワンピースも着ることができる。
学園に入学するころには、体育のときに自分で着替えなければいけないと聞いていたので、練習のつもりでできることは自分でしていた。
ラファエルお兄様も自分で着替えている。
着替えが終わると食堂に行って朝食を食べる。
朝食は苺を添えたパンケーキで、わたくしは夢中で食べてしまった。
「セラフィナ殿下、パンケーキがお好きですか?」
「はい、大好きです」
「たくさん食べてくださいね」
ミルクティーとパンケーキの朝食だなんて、ものすごく贅沢に感じられてしまう。
美味しく朝食をいただいた後は、アルベルト様とラファエルお兄様とベルンハルト公爵家の庭を散歩した。
雪が積もっていてとても寒かったが、アルベルト様とラファエルお兄様と手を繋いでいると、繋いだところからぽかぽかとしてきて手は冷たくなかった。
「ここにダリアを植えているんだよ。ダリアは背が高くなる植物で、わたしの身長よりも高く育つんだ。セラフィナの誕生日近くに花が咲くから、セラフィナの誕生日にプレゼントしたこともあったよね」
「はい。ダリアの花、とてもきれいでした」
わたくしが答えると、アルベルト様は雪をかぶるダリアの茂みの前で「またプレゼントするね」と言ってくれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
わたくしとラファエルお兄様は宮殿に帰る時間になってしまった。
アルベルト様がベルンハルト公爵家の叔父様と叔母様に許可を取っていた。
「セラフィナとラファエルを送って行ってもいいでしょうか? 宮殿でお茶の時間までを過ごして帰ってきます」
「ミカエル殿下に苺を届けてくれるかな?」
「ミカエル殿下によろしくお伝えくださいね」
叔父様と叔母様に了承されて、アルベルト様はベルンハルト公爵家の馬車を用意しようとしていたが、ラファエルお兄様が宮殿の馬車に誘った。
「それなら、一緒に乗って行かないか?」
「それは助かるな。ありがとう」
「セラフィナを抱っこするのはわたしの役目だからね」
「分かっているよ」
馬車に誘ってもわたくしを抱っこする役目は譲らないラファエルお兄様に、アルベルト様が苦笑している。ラファエルお兄様はわたくしに手を貸して馬車に乗り込み、アルベルト様はわたくしとラファエルお兄様の向かいの席に座った。
「ミカエルにお土産に苺をたくさん用意しているよ」
「ミカが喜びます」
「ミカエルの機嫌は直ったかな」
話しているうちに馬車は宮殿に到着した。
宮殿の中も馬車で走って、皇帝一家の住む棟に辿り着く。
宮殿の敷地内は広いので馬車で移動しなければわたくしの足では目的の棟にたどり着けないくらいなのだ。
皇帝一家の住む棟に着くと、わたくしとラファエルお兄様はルームシューズに履き替える。アルベルト様も靴をはき替えさせられていた。
皇帝一家の棟にはまだ小さなミカがいるので、できるだけ外の汚れを持ち込まないようにというのと、ブーツにはナイフなどが仕込まれることがあるので危険防止の観点からも、入り口で靴を履き替えさせるのだ。
子ども部屋に顔を出すと、ミカはエリカに寄りかかって絵本を読んで遊んでいたが、わたくしたちが来たのに気付くと、泣き顔になって走ってくる。
「ねぇね、にぃに、たみちかった」
「ミカ、ただいま帰りました」
「寂しい思いをさせてごめんね」
「ねぇね、にぃに、ないない、やっ!」
もう行かないでと言われているようだが、きっとわたくしは来年もベルンハルト公爵家に行きたがるだろう。アルベルト様との時間を持ちたいという気持ちが強かった。
アルベルト様が侍女に大きな箱を持って来させる。
そこには艶々に輝くよく熟れた苺がぎっしりと詰まっていた。
「おいち! おいち!」
「ミカエルにお土産だよ。ベルンハルト公爵領の苺をたっぷり食べてね」
「あい!」
苺につられて泣き顔だったミカが笑顔になっている。ミカの食いしん坊は相当のようだ。
昼食はお父様とお母様とラファエルお兄様とアルベルト様と、ミカまで一緒に食べることになった。
ミカ用の椅子が食堂に運ばれて、オレリアさんに座らせてもらったミカはフォークを上手に使って料理を食べていた。
「アルベルト、ラファエルとセラフィナがお世話になったね」
「一緒に過ごせてわたしも楽しかったです」
「何をしたのですか?」
「ボードゲームを四回しました。セラフィナが二回勝って、わたしが二回勝ちました」
「ラファエルは勝てなかったのか」
「運要素の強いゲームですからね」
お父様とお母様と和やかに話すアルベルト様に、ラファエルお兄様が悔しそうな顔になっている。
「あのボードゲーム、わたしもほしいです。セラフィナとミカエルと遊べそうです」
「ベルンハルト公爵家に聞いておこう」
リベンジをしたいラファエルお兄様に、お父様は購入を考えてくださっているようだった。
お腹がいっぱいになったミカが子ども部屋に連れて行かれてお昼寝をしている間、お父様とお母様にラファエルお兄様が進言していた。
「セラフィナは新聞に興味があるようです。ベルンハルト公爵家で新聞を読んでいました。家庭教師の先生に頼んで、新聞も勉強のうちに入れてもらうのはどうでしょう?」
「市井のことを知るのも悪くはないね」
「バロワン先生が一緒ならば、市井に染まりすぎることもないでしょう」
お父様とお母様が返事をしてくれて、わたくしはどうやら新聞を読めるようになるようだった。新聞が手に入れば外の世界のことを知ることができる。
ルナール男爵家のこともセルフィナ伯爵家のことも情報が入ってくるだろう。
「お兄様、ありがとうございます」
「どういたしまして。セラフィナの勉強になると分かっているからね」
お礼を言えばラファエルお兄様は笑顔で答えてくれた。
昼食後お父様とお母様は公務に戻って行ったが、わたくしとラファエルお兄様とアルベルト様は、ラファエルお兄様の部屋で過ごしていた。
ラファエルお兄様は自分が持っているすごろくを出してきていた。
「これならセラフィナとアルベルトと遊べそうだと思うのだが」
「いいね、やろう」
「やりたいです」
サイコロを振って駒を進めていく。
わたくしの駒が進んだと思ったら、「一回休み」のマスに止まってしまうし、アルベルト様の駒が進めば「七歩戻る」のマスに止まってしまうし、ラファエルお兄様が遅れていたら「次の大きなマスまで進む」のマスで飛びぬけるし、勝負は白熱していた。
最終的に勝ったのはラファエルお兄様だった。
二位がわたくしで、三位がアルベルト様。
「勝つのはいい気分だな」
「次は負けないよ」
「わたくしも負けません」
お茶の時間までわたくしたちはすごろくを続けていた。
お茶の時間になって起きてきたミカと合流して、ティールームで苺のタルトを食べる。艶々の苺がたくさん乗っているタルトは、中にカスタードクリームが入っていてとても美味しい。
ミカは口の周りをカスタードクリームまみれにして食べていた。
「ミカ、サイコロを振る練習をしましょうね」
「さいこお?」
「ころころと転がすのです。それができれば、すごろくもボードゲームもできます」
「ころころ!」
意味が分かっているのかいないのか、やる気になっているミカと、いつか一緒にすごろくやボードゲームができたらいいと思っていた。
わたくしが目覚めるころには部屋の暖炉には火がともされて、部屋は暖かくなっていたがそれでも布団を出るのを躊躇わせた。布団から出るとお手洗いに行きたくなってわたくしはすぐにマティルダさんを呼ぶ。
マティルダさんにお手洗いに連れて行ってもらって、着替えも手伝ってもらった。五歳になったのでわたくしは背中のボタンを留める以外の着替えはほとんど自分でできるようになっていた。
靴下も左右を間違わずにはくことができるし、ワンピースも着ることができる。
学園に入学するころには、体育のときに自分で着替えなければいけないと聞いていたので、練習のつもりでできることは自分でしていた。
ラファエルお兄様も自分で着替えている。
着替えが終わると食堂に行って朝食を食べる。
朝食は苺を添えたパンケーキで、わたくしは夢中で食べてしまった。
「セラフィナ殿下、パンケーキがお好きですか?」
「はい、大好きです」
「たくさん食べてくださいね」
ミルクティーとパンケーキの朝食だなんて、ものすごく贅沢に感じられてしまう。
美味しく朝食をいただいた後は、アルベルト様とラファエルお兄様とベルンハルト公爵家の庭を散歩した。
雪が積もっていてとても寒かったが、アルベルト様とラファエルお兄様と手を繋いでいると、繋いだところからぽかぽかとしてきて手は冷たくなかった。
「ここにダリアを植えているんだよ。ダリアは背が高くなる植物で、わたしの身長よりも高く育つんだ。セラフィナの誕生日近くに花が咲くから、セラフィナの誕生日にプレゼントしたこともあったよね」
「はい。ダリアの花、とてもきれいでした」
わたくしが答えると、アルベルト様は雪をかぶるダリアの茂みの前で「またプレゼントするね」と言ってくれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
わたくしとラファエルお兄様は宮殿に帰る時間になってしまった。
アルベルト様がベルンハルト公爵家の叔父様と叔母様に許可を取っていた。
「セラフィナとラファエルを送って行ってもいいでしょうか? 宮殿でお茶の時間までを過ごして帰ってきます」
「ミカエル殿下に苺を届けてくれるかな?」
「ミカエル殿下によろしくお伝えくださいね」
叔父様と叔母様に了承されて、アルベルト様はベルンハルト公爵家の馬車を用意しようとしていたが、ラファエルお兄様が宮殿の馬車に誘った。
「それなら、一緒に乗って行かないか?」
「それは助かるな。ありがとう」
「セラフィナを抱っこするのはわたしの役目だからね」
「分かっているよ」
馬車に誘ってもわたくしを抱っこする役目は譲らないラファエルお兄様に、アルベルト様が苦笑している。ラファエルお兄様はわたくしに手を貸して馬車に乗り込み、アルベルト様はわたくしとラファエルお兄様の向かいの席に座った。
「ミカエルにお土産に苺をたくさん用意しているよ」
「ミカが喜びます」
「ミカエルの機嫌は直ったかな」
話しているうちに馬車は宮殿に到着した。
宮殿の中も馬車で走って、皇帝一家の住む棟に辿り着く。
宮殿の敷地内は広いので馬車で移動しなければわたくしの足では目的の棟にたどり着けないくらいなのだ。
皇帝一家の住む棟に着くと、わたくしとラファエルお兄様はルームシューズに履き替える。アルベルト様も靴をはき替えさせられていた。
皇帝一家の棟にはまだ小さなミカがいるので、できるだけ外の汚れを持ち込まないようにというのと、ブーツにはナイフなどが仕込まれることがあるので危険防止の観点からも、入り口で靴を履き替えさせるのだ。
子ども部屋に顔を出すと、ミカはエリカに寄りかかって絵本を読んで遊んでいたが、わたくしたちが来たのに気付くと、泣き顔になって走ってくる。
「ねぇね、にぃに、たみちかった」
「ミカ、ただいま帰りました」
「寂しい思いをさせてごめんね」
「ねぇね、にぃに、ないない、やっ!」
もう行かないでと言われているようだが、きっとわたくしは来年もベルンハルト公爵家に行きたがるだろう。アルベルト様との時間を持ちたいという気持ちが強かった。
アルベルト様が侍女に大きな箱を持って来させる。
そこには艶々に輝くよく熟れた苺がぎっしりと詰まっていた。
「おいち! おいち!」
「ミカエルにお土産だよ。ベルンハルト公爵領の苺をたっぷり食べてね」
「あい!」
苺につられて泣き顔だったミカが笑顔になっている。ミカの食いしん坊は相当のようだ。
昼食はお父様とお母様とラファエルお兄様とアルベルト様と、ミカまで一緒に食べることになった。
ミカ用の椅子が食堂に運ばれて、オレリアさんに座らせてもらったミカはフォークを上手に使って料理を食べていた。
「アルベルト、ラファエルとセラフィナがお世話になったね」
「一緒に過ごせてわたしも楽しかったです」
「何をしたのですか?」
「ボードゲームを四回しました。セラフィナが二回勝って、わたしが二回勝ちました」
「ラファエルは勝てなかったのか」
「運要素の強いゲームですからね」
お父様とお母様と和やかに話すアルベルト様に、ラファエルお兄様が悔しそうな顔になっている。
「あのボードゲーム、わたしもほしいです。セラフィナとミカエルと遊べそうです」
「ベルンハルト公爵家に聞いておこう」
リベンジをしたいラファエルお兄様に、お父様は購入を考えてくださっているようだった。
お腹がいっぱいになったミカが子ども部屋に連れて行かれてお昼寝をしている間、お父様とお母様にラファエルお兄様が進言していた。
「セラフィナは新聞に興味があるようです。ベルンハルト公爵家で新聞を読んでいました。家庭教師の先生に頼んで、新聞も勉強のうちに入れてもらうのはどうでしょう?」
「市井のことを知るのも悪くはないね」
「バロワン先生が一緒ならば、市井に染まりすぎることもないでしょう」
お父様とお母様が返事をしてくれて、わたくしはどうやら新聞を読めるようになるようだった。新聞が手に入れば外の世界のことを知ることができる。
ルナール男爵家のこともセルフィナ伯爵家のことも情報が入ってくるだろう。
「お兄様、ありがとうございます」
「どういたしまして。セラフィナの勉強になると分かっているからね」
お礼を言えばラファエルお兄様は笑顔で答えてくれた。
昼食後お父様とお母様は公務に戻って行ったが、わたくしとラファエルお兄様とアルベルト様は、ラファエルお兄様の部屋で過ごしていた。
ラファエルお兄様は自分が持っているすごろくを出してきていた。
「これならセラフィナとアルベルトと遊べそうだと思うのだが」
「いいね、やろう」
「やりたいです」
サイコロを振って駒を進めていく。
わたくしの駒が進んだと思ったら、「一回休み」のマスに止まってしまうし、アルベルト様の駒が進めば「七歩戻る」のマスに止まってしまうし、ラファエルお兄様が遅れていたら「次の大きなマスまで進む」のマスで飛びぬけるし、勝負は白熱していた。
最終的に勝ったのはラファエルお兄様だった。
二位がわたくしで、三位がアルベルト様。
「勝つのはいい気分だな」
「次は負けないよ」
「わたくしも負けません」
お茶の時間までわたくしたちはすごろくを続けていた。
お茶の時間になって起きてきたミカと合流して、ティールームで苺のタルトを食べる。艶々の苺がたくさん乗っているタルトは、中にカスタードクリームが入っていてとても美味しい。
ミカは口の周りをカスタードクリームまみれにして食べていた。
「ミカ、サイコロを振る練習をしましょうね」
「さいこお?」
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