やんのかステップの子猫ちゃんとスパダリは運命でした

秋月真鳥

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23.ファビアンの聞く運命の研究

 グスタフはどこの研究所か知らないが、そこのデータを持ち出してファビアンの会社のデータを否定していた。
 ファビアンはそんなことは全く信じていなかったが、万里生の方は若干不安になっていたようだ。

「ファビアン、俺とファビアンが運命じゃなかったら、どうする?」

 怖いのだろう。縋り付くように問いかけられて、ファビアンははっきりと答えを出す。

「そんなことはない」
「え? でも、間違ってるかもしれないよ」
「僕はマリオに出会ったときに運命を感じたし、体の相性もいいんだよ。これが運命でなくて何なんだろう」
「俺は……」

 言い淀む万里生にファビアンがそれ以上のことを言おうとすると、それよりも先に万里生がファビアンを上目遣いに見上げて来る。

「俺は、ファビアンの運命だよね?」

 万里生の黒い目には涙が滲んでいた。
 グスタフのふざけた言葉がそこまで万里生を不安にさせている。
 それならば、ファビアンにも取る手立てがあった。

「試してみる?」

 微笑みながら手を差し伸べると、万里生がファビアンの手を握る。そのまま寝室まで連れて行って、ファビアンは服を脱いで裸になってしまった。
 万里生とファビアンの体格差では、ファビアンは万里生を脱がせられても、万里生はファビアンの合意なしには服を脱がせることも難しい。
 ベッドに横たわると視線で万里生を誘う。
 万里生はいそいそと服を脱いで、ファビアンに覆い被さってくる。

 万里生との行為についてファビアンは不安がなかったわけではない。
 グスタフに襲われているので、未遂とはいえ万里生は怖い思いをしたはずだ。ファビアンとの行為でそれを思い出さないか心配ではあった。

 キスをする万里生の舌を口の中に招いて吸うと、万里生が気持ちよさそうにしている。舌を絡めていると、息ができなくなったのか、口を放して「ぷはっ!」と息継ぎをしていた。
 舌を絡めてのキスもファビアンは初めてだったが、知識として鼻で息をしたり、口がずれたときに息をしたりすればいいのを知っている。万里生はそうではなかったようだ。

 キスをしながら万里生がファビアンの胸を揉む。全体を揉んでから、乳首を指で摘まんで捏ねているのにファビアンは感じてしまって腰が揺れる。物欲しげに脚を緩く開くと、万里生は気付いてファビアンの後孔に指を這わせてきた。

 最初の頃は濡れなかったそこも、万里生との行為を重ねて濡れるようになってきている。男性はそこが濡れないし、妊娠も最初の頃はできないのだが、行為を重ねていくうちに体質が変わってそこが濡れるようになって、妊娠も可能になるのだ。
 ファビアンの体はすっかりと万里生に染め上げられていた。

 乳首を吸いながら、万里生がファビアンの後孔に指を差し入れて拓いて行く。胸と後ろに同時に快感を与えられて、ファビアンは甘い喘ぎ声をあげる。

「ふぁっ! あぁんっ! マリオ、悦いよ!」
「ファビアン、もう、入れたい」
「うん、おいで、マリオ」

 太ももを自ら支えて脚を開いて招くと、万里生はファビアンの後孔に先端を宛がう。
 ぐっと押し込むとファビアンの後孔は万里生を飲み込んだ。そのまま奥まで貫く万里生にファビアンが声を上げる。

「あぁっ! マリオ、きもちいいっ!」
「くぅ! ファビアン、しまる……」
「マリオ、がんばって!」

 まだ達したくないと必死になる万里生が腰を動かすのに合わせて、ファビアンは中を締め付ける。万里生の中心はファビアンの内壁を擦って、指の届かない奥までゴリゴリと拓いて行くのが堪らなく気持ちいい。

「ひんっ! ひぁ! きもちいっ! ファビアン、もう、でる! でるぅ!」
「出して! 僕の中で出して!」

 快楽に酔っていると万里生の泣き声が聞こえて、ファビアンは万里生を奥まで招いた。最奥で万里生が果てる。注ぎ込まれる白濁の熱さに、ファビアンはうっとりと胎を押さえた。

「マリオ、最高だったよ」
「まだ! まだだ! まだやる!」
「うん、もっとちょうだい。溢れるくらいに」

 僕を孕ませて?

 甘く囁くと胸に倒れ込んだ万里生が起き上がってまた腰を動かす。何度達しても起き上がって続行する万里生に、ファビアンも快感の波に体を任せた。

「どうだった? 運命を感じなかった?」
「かんじた……めちゃくちゃ、よかった」

 力尽きて胸に倒れ込んだ万里生に問いかけると、運命を感じてくれたと答えが来る。それに満足して、ファビアンは万里生をバスルームに連れて行った。
 ファビアンは中から万里生の白濁が漏れ出さないように軽く流して、万里生と一緒にバスタブに入る。背中から万里生を抱き締めるようにして脚の間に座らせると、万里生が夢見心地でファビアンの胸にもたれかかってくる。

「マリオ、あんなことがあったから、無理そうなら、僕はずっとマリオと肉体関係を持たなくてもいいと思っていたんだけど」
「あんなこと、平気だよ。俺は何もされてないし」

 不安だったことを口にすれば、万里生はそれに関して説明してくれた。

「グスタフが覆いかぶさってきたところで、助けが来たんだ。俺は何もされてない」
「本当に?」
「本当だよ」
「よかった。何かされてても、僕の愛に変わりはないけど」

 万里生が傷付けられていなくてよかったとファビアンは心から安堵した。
 万里生が向きを変えてファビアンに抱き付いてくる。バスタブのお湯が万里生の動きでざぁっと溢れた。

「俺を心配してくれてありがとう」

 しがみ付いて肩口に顔を埋める万里生をくすぐったく思っていると、耳を嚙まれる。

「でも、気持ちいいから、ファビアンがしてくれるのも、好きだよ」

 小さな声で甘えるように囁く万里生に、次はファビアンが万里生をリードしようと決めていた。

 万里生と体で相性を確かめた後に、運送会社の男性には菓子折りと多少だがお金を包んでファビアンはお礼に行った。
 仕事中だったのに万里生を助けるために進路を変えてくれた運送会社の男性には、警察から連絡も行っていて、会社で叱責されるようなことはないようだが、ファビアンの方からも会社に連絡を入れて重々お礼を言っておいた。

「今回のことは本当にありがとうございました。お陰で僕の伴侶は無事でいられました」
「当然のことをしたまでですよ」
「これ、受け取ってください。僕の伴侶に何かあれば、僕は生きていられませんでした」

 菓子折りとお金の入った封筒を渡すと、運送会社の男性は恐縮している。

「そういうつもりで助けたのではありません」
「いえ、受け取ってください。それだけのことをあなたはしてくれました」

 グスタフが自棄になって襲い掛かっていたら運送会社の男性も危なかったかもしれない。それを考えると、ファビアンがお礼を包むのも当然のことだった。

「それではいただきます。ありがとうございます」
「こちらこそ、本当にありがとうございました」

 お互いに頭を下げ合って運送会社の男性のところから離れる。
 近々彼は警察からも表彰されるらしい。

 運送会社の男性宅にお礼に行ってからファビアンは万里生を迎えに大学に行っていた。大学の食堂で万里生と待ち合わせをして、万里生を車に乗せて連れて行ったのは製薬会社の研究所だった。
 研究所では社長と運命の相手が来ると分かって研究員が待っていてくれる。

「いらっしゃいませ、社長。こちらが運命の相手ですね」
「説明を頼む」
「社長は説明を頼むと言っています」

 社内では日本語が話せないことになっているので、研究所には菜摘も来ていて、通訳をしてくれる。

「私たちは遺伝子解析を元に運命の相手を探しています。遺伝子配列に差があればあるほど、運命の相手としては相性がいいのではないかという仮説の元に研究を続けています」
「遺伝子配列に差があればあるほど?」
「遺伝子配列がバラバラであるほど、潜性遺伝子が出にくく、顕性遺伝子が出やすいのです」

 身を乗り出して万里生が問いかけている。
 遺伝子配列が違うほど潜性遺伝子が出にくいために、ひとはある程度遺伝子配列の遠い相手に惹かれやすい。それは長年の研究データから分かっていることだった。
 逆に同じ遺伝子を持つ父親や母親などの近親者に関しては、思春期には嫌うようにメカニズムができているのだという。

「遺伝子配列の差が六十パーセント以上の相手同士で、運命の相手ではないのかと憶測して、私たちは連絡を入れます」
「俺とファビアンはどれくらい差があったんですか?」
「八十二パーセントですね。これは極めて高い数字です」
「グスタフは……?」
「二十七パーセントでした」

 数字にして言われるとファビアンも万里生も納得できる。
 ファビアンと万里生が極めて奇跡的に相性がいいのは間違いないようだ。

「マリオ、僕は運命の治験に参加してよかったと思っているよ」
「俺も、最初は金目当てだったけど、参加してよかったと思ってる」

 車で研究所からマンションに帰る途中にファビアンは万里生と話していた。

「今日は運送会社のひとにもお礼をできたし、いい一日だった」
「お礼をしてくれたんだ?」
「もちろん。万里生を助けてくれた勇気のあるひとだからね」

 万里生にもお礼をしたことを報告できてファビアンは微笑んだ。
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