土地神様に守られて 〜転生したらまた魔女の男子だった件〜

秋月真鳥

文字の大きさ
88 / 180
転生したらまた魔女の男子だった件

88.十一歳のお誕生日

しおりを挟む
 長雨で湿度が高くなってきて、セイラン様のお腹で眠るのも寝苦しい季節になって来た。セイラン様は涼しい風で部屋の温度を下げてくれるのだが、それでもセイラン様にくっ付いていると汗をかいてしまう。
 汗びっしょりで「うーんうーん」と唸って眠れない僕に、セイラン様が言う。

「私の腹から降りた方がいいのではないか?」
「セイラン様と一緒に寝たいんですー!」
「横に寝たらどうだ?」
「セイラン様のお腹で寝るぅー!」

 眠いし、暑いし、駄々っ子になっている僕に、セイラン様は人間の姿になって僕をベッドの横に降ろして、汗ばんだ髪を撫でてくれた。

「今年の夏は特に暑いな」
「セイラン様と寝るぅー!」
「一緒に寝ておるぞ」
「セイラン様ぁ」

 半泣きになってセイラン様にしがみ付く僕を、セイラン様は緩く抱き締めて、風が入るようにしてくれていた。
 外は雨が降っている。
 しとしとと降り続く雨の音を聞きながら、僕は眠りについた。

 初夏には僕とリラのお誕生日がある。
 毎年お誕生日には母がケーキを準備して、お祝いに来てくれていたが、去年に続いて今年もスリーズちゃんとお父さんと一緒だ。スリーズちゃんは涼し気な甚平で、ズボンがカボチャパンツになっているものを着ていた。

「ねぇね、にぃに!」
「いらっしゃい、スリーズちゃん」
「私のお部屋を見せてあげる。おいで」
「あい」

 リラに手を引かれてスリーズちゃんはリラの部屋を見に行く。ベッドは使っていないがベッドカバーも枕カバーもクッションのカバーも母の手作りだ。花模様でとても可愛い。

「ここが私のお部屋よ。お母さんがベッドカバーとクッションカバーを作ってくれたの」
「かか!」
「そうよ、お母さんが作ってくれたのよ。スリーズちゃんも大きくなって一人部屋をもらうようになったら作ってもらえるわ」
「すーの?」
「そうよ、スリーズちゃんのよ」

 リラの部屋の中を歩き回って、ベッドに乗って跳ねてみて、スリーズちゃんは楽しそうだった。
 僕とリラはスリーズちゃんを訪ねて毎日のように母の家に行っているが、スリーズちゃんはこの社に来るのは二回目だ。一回目は赤ちゃんで動けなかったから、ほぼ初めてといえるだろう。
 興味深そうに居間を歩いて椅子によじ登ったり、セイラン様とレイリ様の座る敷物や座布団を捲ってみたりしている。

「今日は僕とリラのお誕生日だよ。スリーズちゃんも一緒にケーキを食べようね」
「んご?」
「苺はないかなぁ」

 もう季節的に苺の取れる時期ではない。
 ケーキと言っただけで苺を連想するスリーズちゃんは相当頭がいいような気がする。

「スリーズちゃんって、ものすごく頭がいいような気がするんです。僕みたいに生まれ変わったのかな」
「確かにスリーズにはラーイと似た感じがするな」
「そうですか、セイラン様!?」
「まぁ、私はラーイが生まれ変わっているということを、言われるまで分からなかったのだがな」

 小声で話している間、リラはスリーズちゃんの小さな手を引いて社を案内している。

「ここがレイリ様と私の寝室よ。一緒に寝てるの」
「ねんね! ねぇね、ねんね!」
「スリーズちゃんはお母さんと寝てるわね」
「かか、ねんね!」

 少しずつお喋りも上手になって来て、スリーズちゃんはますます可愛い。

 今回母が持って来てくれたのは、さくらんぼのムースとゼリーを重ね合わせてケーキにしたものだった。上には艶々の半分に切って種を取ったサクランボが乗っている。

「スリーズがお誕生日のケーキのスポンジと生クリームには興味がなかったから、ムースとゼリーにしてみたのよ。この季節、冷たくて、つるりと食べられちゃうし」

 新しいケーキに僕もリラも目を輝かせてテーブルについた。スリーズちゃんはお父さんの膝の上に抱っこされている。

「んご?」
「苺ではなくて、さくらんぼだよ。スリーズの名前の由来だ」
「んぼ?」
「そうだよ。美味しいから食べてみようか」

 お父さんに口に運んでもらって、さくらんぼを食べてスリーズちゃんはお目目を丸くしている。もちゅもちゅと噛んで飲み込んで、ケーキを指差す。

「ん!」
「食べるんだね」
「あい」

 食べさせてもらって、スリーズちゃんはムースとゼリーが重なったところもしっかりと口に入れていた。嫌がって口から出すこともなく、もぐもぐと美味しそうに食べている。

 僕もムースとゼリーの重なったケーキを食べたが、冷たくて、喉に心地いい。噛まずに飲み込めてしまうので、するするとあっという間に食べてしまった。

「お母さん、このケーキすごく美味しい」
「冷たくて幸せだわ」

 僕とリラが喜んでいると、母も目を細める。

「アナに教えてもらって作った甲斐があるよ。気に入ってもらえてよかった」

 今年も僕とリラのお誕生日はさくらんぼで祝われた。

 夜寝るときの問題は、十一歳になっても続いていた。
 僕は十一歳になってもセイラン様と別々に寝るつもりはなかったし、セイラン様もそのことを許していた。
 ただ、夏は暑いのだ。
 汗びっしょりになる僕を抱き締めて、セイラン様も困っているようだった。

「このままだと熱中症になってしまうぞ」
「セイラン様と寝たいのです」
「ラーイの健康のためにも、どうにかできないものか」

 考えた結果、僕とセイラン様は寝室の床に薄い敷物を敷いて寝ることにした。
 涼しい風は下の方に集まって、暖かい空気は上の方に集まる。
 床の上に寝るのならば、少しは涼しさを得られるのではないかと考えたのだ。
 床板も冷たくて敷物の温度を下げてくれる。

 床の上でセイラン様と眠るようになってから、僕は夏でも睡眠不足にならずにすんでいた。

 リラももちろん同じ問題にぶつかっていた。
 高等学校で眠そうにしているリラに、僕はセイラン様とのことを話してあげることにしたのだ。

「リラ、暑い日は床に敷物を敷いて寝るといいよ」
「床で寝るの?」
「床の方が涼しいからね」

 暖かい空気は上の方に集まって、冷たい空気は下の方に集まる。その話をリラにすると、リラは納得していた。

「小学校の授業で、気象の話をしたときにそのことを習ったわね」
「授業の内容は無駄じゃなかったんだよ」
「そうみたい」

 僕とセイラン様が床で寝ていることを知って、リラも床で寝るようにしたようだ。その日からリラが高等学校で眠そうにしていることはなかった。

 眠る前にセイラン様からお乳をもらうのだが、体をくっ付けているとお互いに汗をかいてしまう。セイラン様のお乳を飲むと体の芯から温まるようで、汗が噴き出る。
 夏場は僕はお風呂に入る前にセイラン様のお乳を飲ませてもらっていた。そうでないと汗だくになってとても眠れないのだ。
 お乳を飲んだ後にはお風呂に入る。
 セイラン様は脱衣所で僕のことを待っていてくれる。

 僕が恥ずかしいと言った日から、セイラン様はお風呂の中までは見ないようにしてくれていた。僕ももう十一歳なので、お風呂には一人で入れる。溺れたりする危険もないはずだ。
 それでもセイラン様は心配なので脱衣所で僕が出て来るまで待っていてくれた。

「さっぱりしました。セイラン様も入られますか?」
「私も入らせてもらおうかな」

 タオルで身体を拭いてパジャマを着て出てくると、セイラン様が入れ違いにお風呂に入る。僕はセイラン様と温泉に行ったときのことを思い出していた。
 セイラン様の股間には立派なものがついている。
 それを見てしまった後ろめたさと、ドキドキするような感覚に、僕は顔が熱くなる。

 セイラン様の白い胸はいつも見ているけれど、股間を見たのは一度だけだ。
 セイラン様も同じ男性なのだから、股間についていると分かっていたが、実際に見てみると不思議な感覚になった。
 決して嫌ではないのだけれど、自分の股間がむずむずするような気がする。
 思いだすと特に股間がむずむずしてくる。

 これが何なのか、僕には全く分からなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

催眠術をかけたら幼馴染の愛が激重すぎる⁉

モト
BL
魔法が使えない主人公リュリュ。 ある日、幼馴染で庭師の息子のセスが自分をハメようと企てていることを知る。 自分の身の危険を回避する為に、魔法が使えなくても出来る術、催眠術をセスにかけた。 異常に効果が効きすぎてしまって、おぉお!? 俺のことをキレイだと褒めて褒めて好き好き言いまくって溺愛してくる。無口で無表情はどうした!? セスはそんな人間じゃないだろう!? と人格まで催眠術にかかって変わる話だけど、本当のところは……。 2023に『幼馴染に催眠術をかけたら溺愛されまくちゃった⁉』で掲載しておりましたが、全体を改稿し、あまりに内容変更が多いのでアップし直しました。 改稿前とストーリーがやや異なっています。ムーンライトノベルズでも掲載しております。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。 魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・ なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️ エブリスタにも、掲載しています。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...