28 / 181
第1部 天然女子高生のためのそーかつ
第27話 訴求効果
しおりを挟む
東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)
「あー困ったなー、困った困った」
「はたこ先輩、今度は何ですか?」
第2回オープンスクールの少し前。硬式テニス部の練習のために着替えている時、赤城旗子先輩がまたしても私の方をチラチラ見ながら呟いていたので、私はやれやれと思いながら事情を尋ねた。
「お兄ちゃん少し前から有機野菜の宅配サービスを始めたんだけど、全然利用者が増えないんだよ。『ときめきOH野菜LOVE!!』っていうダサい名前がいけないみたいなんだけど、改名しようにも同じようなサービスと被らないようにするのが難しいんだって」
「確かに、野菜の宅配サービスの名前ってバリエーションが限られそうですよね」
はたこ先輩のお兄さんである赤城点太郎さんはようやくまともなお仕事を始めたらしいが、独特かつ印象に残るサービス名を考えるのは素人には難しそうだった。
「……という訳なんですけど、金坂先生はどういうサービス名がいいと思いますか?」
「そうねえ。考えてあげたいけど、私もそういうサービスには詳しくないから、他のサービスがどんな名前か調べないといけないわね」
点太郎さんに何かアドバイスができればと思い、私は放課後の職員室で国語科の金坂先生に意見を尋ねていた。
「グッアフタヌーンミズ野掘。ワタシも何かお力になれマセンか?」
「あっ、スノハート先生。実はかくかくしかじかなんです」
金坂先生の近くに席がある英語科AET(英語指導助手)のガラー・スノハート先生も話に乗ってきたので、私ははたこ先輩のお兄さんの悩みを分かりやすい日本語で説明した。
「OK、そのテーマならワタシもお力になれマス。ネーミングというのはクリアーかつストロングなインプレッションを与えるモノが一番デスから、ここは健康をお届けするというコトをアピールしまショウ。ワタシが考えたネーミングを今から紙に書いて渡しマスので、それをミズ赤城のブラザーに渡してクダさい」
「分かりました。先輩を通じて渡して貰いますね」
スノハート先生は自分が考えたサービス名を紙に書くと封筒に入れて渡してくれて、私は翌日の練習でそれをはたこ先輩に手渡した。
点太郎さんはスノハート先生が考えたサービス名を正式に採用し、その縁がきっかけで第2回オープンスクールで行われる料理研究部の部活見学では点太郎さんの会社が有機野菜を届けてくれることになった。
そしてオープンスクール当日……
「皆さん、今日は料理研究部の見学に来てくれてありがとう。もうすぐお野菜が届くから、それから部員全員でハヤシライスを作ります。出来上がったら皆さんにもご馳走しますから、楽しみにしていてね」
「はーい!!」
料理研究部の顧問である家庭科の先生は見学に訪れた中学受験生の女の子たちにそう説明し、私も興味本位で点太郎さんの到着を待っていた。
それからすぐに校舎横の駐車場にトラックが走ってくる音が聞こえて、数分後には大きな段ボール箱を抱えた点太郎さんが家庭科室にやって来た。
「遅くなりました、有機野菜宅配のデリバリーヘルスです!!」
小学生女子の前で驚くべき単語を口にした点太郎さんに、家庭科の先生は目を回して倒れた。
「お兄ちゃんの会社潰れちゃったから、今度はソープランドっていう石鹸屋さん始めるんだって」
「今度は上手くいくといいですね……」
その後の点太郎さんについて報告してきたはたこ先輩に、私はもう知らないと思った。
(続く)
「あー困ったなー、困った困った」
「はたこ先輩、今度は何ですか?」
第2回オープンスクールの少し前。硬式テニス部の練習のために着替えている時、赤城旗子先輩がまたしても私の方をチラチラ見ながら呟いていたので、私はやれやれと思いながら事情を尋ねた。
「お兄ちゃん少し前から有機野菜の宅配サービスを始めたんだけど、全然利用者が増えないんだよ。『ときめきOH野菜LOVE!!』っていうダサい名前がいけないみたいなんだけど、改名しようにも同じようなサービスと被らないようにするのが難しいんだって」
「確かに、野菜の宅配サービスの名前ってバリエーションが限られそうですよね」
はたこ先輩のお兄さんである赤城点太郎さんはようやくまともなお仕事を始めたらしいが、独特かつ印象に残るサービス名を考えるのは素人には難しそうだった。
「……という訳なんですけど、金坂先生はどういうサービス名がいいと思いますか?」
「そうねえ。考えてあげたいけど、私もそういうサービスには詳しくないから、他のサービスがどんな名前か調べないといけないわね」
点太郎さんに何かアドバイスができればと思い、私は放課後の職員室で国語科の金坂先生に意見を尋ねていた。
「グッアフタヌーンミズ野掘。ワタシも何かお力になれマセンか?」
「あっ、スノハート先生。実はかくかくしかじかなんです」
金坂先生の近くに席がある英語科AET(英語指導助手)のガラー・スノハート先生も話に乗ってきたので、私ははたこ先輩のお兄さんの悩みを分かりやすい日本語で説明した。
「OK、そのテーマならワタシもお力になれマス。ネーミングというのはクリアーかつストロングなインプレッションを与えるモノが一番デスから、ここは健康をお届けするというコトをアピールしまショウ。ワタシが考えたネーミングを今から紙に書いて渡しマスので、それをミズ赤城のブラザーに渡してクダさい」
「分かりました。先輩を通じて渡して貰いますね」
スノハート先生は自分が考えたサービス名を紙に書くと封筒に入れて渡してくれて、私は翌日の練習でそれをはたこ先輩に手渡した。
点太郎さんはスノハート先生が考えたサービス名を正式に採用し、その縁がきっかけで第2回オープンスクールで行われる料理研究部の部活見学では点太郎さんの会社が有機野菜を届けてくれることになった。
そしてオープンスクール当日……
「皆さん、今日は料理研究部の見学に来てくれてありがとう。もうすぐお野菜が届くから、それから部員全員でハヤシライスを作ります。出来上がったら皆さんにもご馳走しますから、楽しみにしていてね」
「はーい!!」
料理研究部の顧問である家庭科の先生は見学に訪れた中学受験生の女の子たちにそう説明し、私も興味本位で点太郎さんの到着を待っていた。
それからすぐに校舎横の駐車場にトラックが走ってくる音が聞こえて、数分後には大きな段ボール箱を抱えた点太郎さんが家庭科室にやって来た。
「遅くなりました、有機野菜宅配のデリバリーヘルスです!!」
小学生女子の前で驚くべき単語を口にした点太郎さんに、家庭科の先生は目を回して倒れた。
「お兄ちゃんの会社潰れちゃったから、今度はソープランドっていう石鹸屋さん始めるんだって」
「今度は上手くいくといいですね……」
その後の点太郎さんについて報告してきたはたこ先輩に、私はもう知らないと思った。
(続く)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる