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第2部 天然女子高生のための再そーかつ
第52話 尊王攘夷
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
「……という訳で困っておりますの。転売目的で買い占められたら本当に欲しい方が手に入りませんし、何より転売されてもわたくしには一銭も入りませんから。協力して頂けませんこと?」
「それは確かに問題ですよね。私も何か情報が入ったらすぐお伝えしますね」
ある日の練習後、私、野掘真奈は硬式テニス部所属の2年生である堀江有紀先輩に身の回りで起きている事件の解決への協力を頼まれていた。
ゆき先輩は以前から自分とデートする権利と引き換えのチケットを校内で売りさばいて儲けているが、最近になって一部の男子生徒が転売目的でチケットを買いに来ているという噂が広まっているらしい。
転売といっても枚数が限られている以上そこまで儲かるとは思えないが、仲の良い先輩の悩みごとなので私はできる範囲でゆき先輩を助けることにした。
その翌週……
「あっ、ゆき先輩のチケットじゃないですか! 何やってるんですか!?」
「やべっ、俺は逃げますんで」
高校からすぐ近くの路地裏で見知らぬ男子生徒がチケットを転売している場面に遭遇した私は大声を上げたが、声を聞いた男子生徒はさっさと逃げてしまった。
「あなた、ケインズ女子高校の……」
「このような場面を見られては、もはや生きてはおられません。この命に代えてお詫びを……」
「わー! そういうのもう間に合ってますから!!」
チケットを買おうとしていたのは私立ケインズ女子高校硬式テニス部の1年生である三島右子さんで、私は懐から取り出した短刀で切腹しようとした彼女を慌てて制止した。
「それで、どうして転売させてまでゆき先輩のチケットが欲しかったんですか? あっ、まさか……」
「野掘さん、あなたは勘違いをしておられます。私は女色などというふしだらな行為に興味はなく、有紀様に抱いている思いは忠君の精神です。私は尊王攘夷を実践し、有紀様を敬愛するとともに有紀様に近づく下賤な男共を打ち払いたいのです」
「は、はあ……」
三島さんは武家の末裔で思想も保守的と聞いていたので、彼女なりにゆき先輩を尊敬しているらしい。
「そのために貯金をはたいてチケットを大量に購入しました。24時間有紀様のお傍にいて、私は尊王攘夷を徹底致します。それこそお風呂でも寝床でも……」
「下心丸見えじゃないですか!!」
ともかく三島さんはチケットを大量に買ってしまったので、駄目元でもゆき先輩にデートを頼むつもりらしかった。
計画的に転売させていたことは黙っておくという条件で私は三島さんがゆき先輩にデートを頼む時に同席することになり、その翌日に私はマルクス高校の校舎裏に三島さんを連れていった。
「……かくかくしかじかで、私は有紀様を敬愛しているのです。このチケットで、どうか私をお傍にいさせてください!」
「お気持ちは嬉しいですけど、このチケットは男子生徒にしか販売しておりませんし、そもそも学外の方は対象外ですの。何より、わたくしとあなたは学校と学年こそ違えど同じ硬式テニス部員のお友達であって、一緒に過ごすのにチケットなど必要ありませんわ。後で払い戻しをさせて頂きます」
「そ、そんな……」
ゆき先輩は友達同士の関係にお金は必要ないと正論を述べたが、三島さんはその対応にショックを受けていた。
その時……
「ただ、最近始めた支援プランがありまして、そちらは女性の方や学外の方も加入を受け付けておりますの。堀江有紀ファンクラブ、通称黒猫倶楽部はスタンダードプランが月500円、プレミアムプランが月2000円となっておりますわ」
「本当ですか!? 今すぐ加入させて頂きます!!」
「ありがとう。これであなたもわたくしの正式な支援者でしてよ!」
ゆき先輩がスマホでQRコードを示しつつ案内したファンクラブのプレミアムプランに三島さんは大喜びで加入し、私は高校生に月2000円はかなり高いが本人が満足ならまあいいかと思った。
(続く)
「……という訳で困っておりますの。転売目的で買い占められたら本当に欲しい方が手に入りませんし、何より転売されてもわたくしには一銭も入りませんから。協力して頂けませんこと?」
「それは確かに問題ですよね。私も何か情報が入ったらすぐお伝えしますね」
ある日の練習後、私、野掘真奈は硬式テニス部所属の2年生である堀江有紀先輩に身の回りで起きている事件の解決への協力を頼まれていた。
ゆき先輩は以前から自分とデートする権利と引き換えのチケットを校内で売りさばいて儲けているが、最近になって一部の男子生徒が転売目的でチケットを買いに来ているという噂が広まっているらしい。
転売といっても枚数が限られている以上そこまで儲かるとは思えないが、仲の良い先輩の悩みごとなので私はできる範囲でゆき先輩を助けることにした。
その翌週……
「あっ、ゆき先輩のチケットじゃないですか! 何やってるんですか!?」
「やべっ、俺は逃げますんで」
高校からすぐ近くの路地裏で見知らぬ男子生徒がチケットを転売している場面に遭遇した私は大声を上げたが、声を聞いた男子生徒はさっさと逃げてしまった。
「あなた、ケインズ女子高校の……」
「このような場面を見られては、もはや生きてはおられません。この命に代えてお詫びを……」
「わー! そういうのもう間に合ってますから!!」
チケットを買おうとしていたのは私立ケインズ女子高校硬式テニス部の1年生である三島右子さんで、私は懐から取り出した短刀で切腹しようとした彼女を慌てて制止した。
「それで、どうして転売させてまでゆき先輩のチケットが欲しかったんですか? あっ、まさか……」
「野掘さん、あなたは勘違いをしておられます。私は女色などというふしだらな行為に興味はなく、有紀様に抱いている思いは忠君の精神です。私は尊王攘夷を実践し、有紀様を敬愛するとともに有紀様に近づく下賤な男共を打ち払いたいのです」
「は、はあ……」
三島さんは武家の末裔で思想も保守的と聞いていたので、彼女なりにゆき先輩を尊敬しているらしい。
「そのために貯金をはたいてチケットを大量に購入しました。24時間有紀様のお傍にいて、私は尊王攘夷を徹底致します。それこそお風呂でも寝床でも……」
「下心丸見えじゃないですか!!」
ともかく三島さんはチケットを大量に買ってしまったので、駄目元でもゆき先輩にデートを頼むつもりらしかった。
計画的に転売させていたことは黙っておくという条件で私は三島さんがゆき先輩にデートを頼む時に同席することになり、その翌日に私はマルクス高校の校舎裏に三島さんを連れていった。
「……かくかくしかじかで、私は有紀様を敬愛しているのです。このチケットで、どうか私をお傍にいさせてください!」
「お気持ちは嬉しいですけど、このチケットは男子生徒にしか販売しておりませんし、そもそも学外の方は対象外ですの。何より、わたくしとあなたは学校と学年こそ違えど同じ硬式テニス部員のお友達であって、一緒に過ごすのにチケットなど必要ありませんわ。後で払い戻しをさせて頂きます」
「そ、そんな……」
ゆき先輩は友達同士の関係にお金は必要ないと正論を述べたが、三島さんはその対応にショックを受けていた。
その時……
「ただ、最近始めた支援プランがありまして、そちらは女性の方や学外の方も加入を受け付けておりますの。堀江有紀ファンクラブ、通称黒猫倶楽部はスタンダードプランが月500円、プレミアムプランが月2000円となっておりますわ」
「本当ですか!? 今すぐ加入させて頂きます!!」
「ありがとう。これであなたもわたくしの正式な支援者でしてよ!」
ゆき先輩がスマホでQRコードを示しつつ案内したファンクラブのプレミアムプランに三島さんは大喜びで加入し、私は高校生に月2000円はかなり高いが本人が満足ならまあいいかと思った。
(続く)
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