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第3部 天然女子高生のための超そーかつ
第90話 ストレスチェック
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)
「はぁ……全く、やってられないよ……」
「野掘殿、珍しくご機嫌が悪いですね。何かお悩みですか?」
ある朝の始業前、少し腹が立つことがあって不機嫌に着席していると同じクラスの男友達である円城寺網人君が心配して声をかけてくれた。
「あ、ごめん。全然大したことじゃないんだけど、ケインズ女子高校の友達が貰い物の宮崎地鶏の炭火焼きを菜食主義だからって私にくれたのに、弟がアメフト部の友達と一緒に全部食べちゃったの。自分のものだって言ってなかった私も悪いんだけど、一口も食べられなかったからつい厳しく叱っちゃって」
「なるほど、それは確かに残念でしたね。弟君は食べ盛りでしょうから容赦してあげて欲しい所ですが」
硬式テニス部つながりの友達であるケインズ女子高校の灰田菜々さんが先日私に炭火焼き地鶏の真空パックを送ってくれたのだが、冷蔵庫に置いておいたところ弟の正輝が翌日の部活帰りに友達と全部食べてしまったのだった。
「最近ちょっとしたことで腹が立っちゃうんだけど、私も反省しないとね。世の中不機嫌な顔してて良いことは何もないし」
「野掘さん、それならスマホにこのアプリを入れてみませんか? 知人の大学生プログラマーが開発中のアプリなのですけど、持ち主のストレスを自動的に察知して、その解消法を提案してくれるのです。ついでにフィードバックを頂いて開発者にお伝えしようかと」
「へえー、そんなアプリがあるんだね。国靖さん、今ダウンロードすることってできる?」
プログラミングの心得がある女友達の国靖まひるさんは頷くと私のスマホにβ版のアプリをインストールしてくれて、私はその日から下校時にアプリを起動することにした。
数日後……
「おっと、アプリ起動するの忘れてた。まだ1回も通知来ないけど大丈夫かな?」
『こんにちは、私はストレスチェックアプリのエモー・ザ・ドルフィンです。マスター、あなたは最近貧乏ゆすりをしていることがありますね? 振動探知機能で分析しました』
「うわっ喋り出した。あー、そういえば自分の部屋だとついやっちゃうかも。これってストレスなのかな?」
『一概には言えませんが、無意識にストレスを感じている可能性があります。こちらの著作権フリーのヒーリングミュージックをお勧めします』
「へえー、心が落ち着くBGMだね。後でベッドでゴロゴロしながら聴いてみようかな」
ストレスチェックアプリ「エモー・ザ・ドルフィン」は中々に凝った作りらしく、私は継続して使ってみることにした。
そして……
『マスター、先週より眉間のしわが0.1%増えています。間食も若干多くなっているので体重測定をお勧めします』
「OK、後で測ってみるね」
『マスター、先ほどテレビ番組のCMをうっとおしいと感じられましたね? こちらのサブスクリプション動画配信サービスがお勧めです』
「いや、そこまで気になってないけど……」
『マスター、飼育されているハムスターの余命は気になりませんか? 突然の死にショックを受けないよう、推定される余命を計算しました。ぜひご覧ください』
「ちょっ、そんなの考えたくないって! 画面消すね!!」
『マスター、私の提供する情報の質はいかがでしょうか? 私の機能について調べたいことがあればお話しください』
「お前を消す方法」
その後、エモー・ザ・ドルフィンが再び起動することはなかった。
(超最終話に続く)
「はぁ……全く、やってられないよ……」
「野掘殿、珍しくご機嫌が悪いですね。何かお悩みですか?」
ある朝の始業前、少し腹が立つことがあって不機嫌に着席していると同じクラスの男友達である円城寺網人君が心配して声をかけてくれた。
「あ、ごめん。全然大したことじゃないんだけど、ケインズ女子高校の友達が貰い物の宮崎地鶏の炭火焼きを菜食主義だからって私にくれたのに、弟がアメフト部の友達と一緒に全部食べちゃったの。自分のものだって言ってなかった私も悪いんだけど、一口も食べられなかったからつい厳しく叱っちゃって」
「なるほど、それは確かに残念でしたね。弟君は食べ盛りでしょうから容赦してあげて欲しい所ですが」
硬式テニス部つながりの友達であるケインズ女子高校の灰田菜々さんが先日私に炭火焼き地鶏の真空パックを送ってくれたのだが、冷蔵庫に置いておいたところ弟の正輝が翌日の部活帰りに友達と全部食べてしまったのだった。
「最近ちょっとしたことで腹が立っちゃうんだけど、私も反省しないとね。世の中不機嫌な顔してて良いことは何もないし」
「野掘さん、それならスマホにこのアプリを入れてみませんか? 知人の大学生プログラマーが開発中のアプリなのですけど、持ち主のストレスを自動的に察知して、その解消法を提案してくれるのです。ついでにフィードバックを頂いて開発者にお伝えしようかと」
「へえー、そんなアプリがあるんだね。国靖さん、今ダウンロードすることってできる?」
プログラミングの心得がある女友達の国靖まひるさんは頷くと私のスマホにβ版のアプリをインストールしてくれて、私はその日から下校時にアプリを起動することにした。
数日後……
「おっと、アプリ起動するの忘れてた。まだ1回も通知来ないけど大丈夫かな?」
『こんにちは、私はストレスチェックアプリのエモー・ザ・ドルフィンです。マスター、あなたは最近貧乏ゆすりをしていることがありますね? 振動探知機能で分析しました』
「うわっ喋り出した。あー、そういえば自分の部屋だとついやっちゃうかも。これってストレスなのかな?」
『一概には言えませんが、無意識にストレスを感じている可能性があります。こちらの著作権フリーのヒーリングミュージックをお勧めします』
「へえー、心が落ち着くBGMだね。後でベッドでゴロゴロしながら聴いてみようかな」
ストレスチェックアプリ「エモー・ザ・ドルフィン」は中々に凝った作りらしく、私は継続して使ってみることにした。
そして……
『マスター、先週より眉間のしわが0.1%増えています。間食も若干多くなっているので体重測定をお勧めします』
「OK、後で測ってみるね」
『マスター、先ほどテレビ番組のCMをうっとおしいと感じられましたね? こちらのサブスクリプション動画配信サービスがお勧めです』
「いや、そこまで気になってないけど……」
『マスター、飼育されているハムスターの余命は気になりませんか? 突然の死にショックを受けないよう、推定される余命を計算しました。ぜひご覧ください』
「ちょっ、そんなの考えたくないって! 画面消すね!!」
『マスター、私の提供する情報の質はいかがでしょうか? 私の機能について調べたいことがあればお話しください』
「お前を消す方法」
その後、エモー・ザ・ドルフィンが再び起動することはなかった。
(超最終話に続く)
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