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第4部 天然女子高生のための大そーかつ
第118話 つながらない権利
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
「なあ野掘さん、女の子にメッセージ送る時ってどういうタイミングが一番邪魔にならないのかな?」
「女の子っていっても人によって違うと思うけど、まず誰にどういうメッセージを送りたいのか聞いていい?」
ある日の始業前、私、野掘真奈は同じクラスの男友達である梅畑伝治君に後ろの席から話しかけられた。
「実は少し前から朝日さんと『イカラトゥーン3』を遊んでて、お互いにスコアを見せ合ってるんだよ。朝日さんはアクションシューティングってジャンル以前にゲーム自体初めてらしいから、色々アドバイスしてあげてるんだ」
「へえー、いい感じの交流だね。でも、そんな平和的なメッセージならいつでも送ればいいんじゃないの?」
高校生プロゲーマーである梅畑君は以前から同じクラスで新聞部員の朝日千春さんに想いを寄せており、以前はゲームという趣味を理解して貰えていなかったが今では彼女と同じゲームを楽しめる仲になっているらしかった。
「そうとも思うんだけど、最近はつながらない権利っていって相手が連絡を取りたくない時にはメッセージを送らないのがマナーらしいんだ。朝日さんも部活だったりお兄さんと遊びに行ったりしてる時があるはずだし、できるだけ迷惑にならない時間帯を知りたくて……」
「うーん、それは確かに分かるかも。特に女の子はゆっくりお風呂に入ったり髪をセットしたりお化粧したりがあるから、完全に迷惑にならない時間帯は男友達よりは少なそう」
科学技術が発達したおかげで人類の生活は便利になったが、現代社会ではそのせいでオフの時間をゆっくり過ごしたい時にも友達や仕事相手からメッセージが届いてしまう不便さが生じていた。
「ただ、迷惑にならないよう気にしすぎてメッセージを送れなくなったら本末転倒だから、ここは『つながらない権利』っていう後ろ向きな言葉じゃなくて相手と交流したいっていう前向きな姿勢を大事にしてみたら? それこそお付き合いできればそんなに気にしなくてよくなる訳だし」
「確かにそうだな。よし、俺もっと前向きに朝日さんと付き合ってみるよ!」
「マナちゃんと梅畑君、そんなに盛り上がってどうしたの? あっ梅畑君、昨日はメッセージ気づかなくてごめん」
そうこうしているうちに朝日さんも登校してきて、梅畑君は座席から立ち上がると朝日さんの目をまっすぐに見つめて口を開いた。
「朝日さん、俺は君とつながりたい!! そう、俺たちはつながる権利を行使するんだ! 俺はいつだって君とコネクトしてぬぐふっ!!」
「○ね!!!」
つながる権利を行使しようとした梅畑君は、朝日さんの右ストレートで顔面を潰されつつ椅子ごと倒れた。
「こんな人前でセクハラとか何考えてるの!? しばらくメッセージアプリブロックしとくから!!」
「つ、つながらない権利を行使されてしまった……」
朝日さんに激怒されながら気絶した梅畑君を見て、私は権利というものは自分の意思だけじゃ行使できないなあと思った。
(続く)
「なあ野掘さん、女の子にメッセージ送る時ってどういうタイミングが一番邪魔にならないのかな?」
「女の子っていっても人によって違うと思うけど、まず誰にどういうメッセージを送りたいのか聞いていい?」
ある日の始業前、私、野掘真奈は同じクラスの男友達である梅畑伝治君に後ろの席から話しかけられた。
「実は少し前から朝日さんと『イカラトゥーン3』を遊んでて、お互いにスコアを見せ合ってるんだよ。朝日さんはアクションシューティングってジャンル以前にゲーム自体初めてらしいから、色々アドバイスしてあげてるんだ」
「へえー、いい感じの交流だね。でも、そんな平和的なメッセージならいつでも送ればいいんじゃないの?」
高校生プロゲーマーである梅畑君は以前から同じクラスで新聞部員の朝日千春さんに想いを寄せており、以前はゲームという趣味を理解して貰えていなかったが今では彼女と同じゲームを楽しめる仲になっているらしかった。
「そうとも思うんだけど、最近はつながらない権利っていって相手が連絡を取りたくない時にはメッセージを送らないのがマナーらしいんだ。朝日さんも部活だったりお兄さんと遊びに行ったりしてる時があるはずだし、できるだけ迷惑にならない時間帯を知りたくて……」
「うーん、それは確かに分かるかも。特に女の子はゆっくりお風呂に入ったり髪をセットしたりお化粧したりがあるから、完全に迷惑にならない時間帯は男友達よりは少なそう」
科学技術が発達したおかげで人類の生活は便利になったが、現代社会ではそのせいでオフの時間をゆっくり過ごしたい時にも友達や仕事相手からメッセージが届いてしまう不便さが生じていた。
「ただ、迷惑にならないよう気にしすぎてメッセージを送れなくなったら本末転倒だから、ここは『つながらない権利』っていう後ろ向きな言葉じゃなくて相手と交流したいっていう前向きな姿勢を大事にしてみたら? それこそお付き合いできればそんなに気にしなくてよくなる訳だし」
「確かにそうだな。よし、俺もっと前向きに朝日さんと付き合ってみるよ!」
「マナちゃんと梅畑君、そんなに盛り上がってどうしたの? あっ梅畑君、昨日はメッセージ気づかなくてごめん」
そうこうしているうちに朝日さんも登校してきて、梅畑君は座席から立ち上がると朝日さんの目をまっすぐに見つめて口を開いた。
「朝日さん、俺は君とつながりたい!! そう、俺たちはつながる権利を行使するんだ! 俺はいつだって君とコネクトしてぬぐふっ!!」
「○ね!!!」
つながる権利を行使しようとした梅畑君は、朝日さんの右ストレートで顔面を潰されつつ椅子ごと倒れた。
「こんな人前でセクハラとか何考えてるの!? しばらくメッセージアプリブロックしとくから!!」
「つ、つながらない権利を行使されてしまった……」
朝日さんに激怒されながら気絶した梅畑君を見て、私は権利というものは自分の意思だけじゃ行使できないなあと思った。
(続く)
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