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第6部 天然女子高生のための重そーかつ

第162話 CtoC

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 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)


「どうもこんにちは、実は見学させて頂きたい地球の文化があるのですが」
「何勝手に人の部屋に侵入しとんじゃああああああああ!!」

 ある土曜日の放課後、帰宅した私は弟の正輝まさきが私の部屋のベッドに腰掛けてスマホをいじっていたので脳天にゲンコツを食らわせた。

 気絶した正輝を引きずって正輝の自室に運ぶと正輝には案の定外宇宙の異星人であるローキ星人が憑依しており、ローキ星人は慣れない手つきでスマホを操作すると私にフリマアプリであるマルカリの画面を見せてきた。

「この度は失礼致しました。地球上では最近CtoC個人間取引と呼ばれる文化が活況を呈していると恒星間通信で耳にしまして、その具体的なやり方を知りたかったのです。真奈様はこのマルカリというアプリケーションをご利用されていますか?」
「どっちかと言うと買う方がメインですけど、たまに使わなくなった小物とかを売りに出すことがありますね。ハムリンの古い回し車が1000円で売れた時は嬉しかったです」
「そうなのですね。個人間取引と言いますと質の担保などが難しそうですが、このマルカリというアプリではどのように公正な取引の確保や詐欺の防止が図られているのですか?」
「ええとですね、マルカリでは取引の時に買った側と売った側がそれぞれ相手を評価することができて、写真と全然違う商品を売りつけたりお金の支払いが遅れたりした人は低評価を付けられるんです。悪質なユーザーは低評価が多くなってあまり売ったり買ったりできなくなるので、それで質が保たれてるんですよ」

 ローキ星人はなるほど! と言いながらマルカリの画面を楽しそうに操作し、あまり深く考えたことがなかったが私はCtoCでは口コミという原始的な仕組みでサービスの治安が保たれているということに気づいた。

「これは面白いですね、1000円札で作った折り紙が1200円で売られています。面白いので買ってみてもいいでしょうか?」
「それ駄目なやつです! すぐ通報してください!!」
「ああ、これはマネーロンダリングということなのですね。面白いことを考える地球人もいるものですね」

 ローキ星人はひとしきりマルカリで遊ぶとお礼に私にご飯をおごってくれることになり、私はローキ星人が以前から行ってみたかったという回転寿司に連れて行ってあげることにした。

 ローキ星人が持っていた日本円がどこから調達されたものかは気にしないことにして私は自宅から歩いて10分ほどの所にある回転寿司にローキ星人を案内し、遅めの昼ご飯に回転寿司をエンジョイした。


 お冷がなくなったのでおしぼりを取るついでにお冷コーナーまで行って帰ってくると、そこではローキ星人(に憑依された正輝)が隣のテーブル席にいた幼児と話していた。

「おにいちゃんありがとう、これでがちゃがちゃがまわせるよ!」
「いえいえ、これは私には不要なものですので。欲しかったらいくらでもお渡ししますよぬぐふっ!!」

 回転寿司のお皿を幼児にあげようとしていたローキ星人に勢いよくゲンコツを食らわせ、私はCtoCは規制する立場の存在がいないと危険だと思った。


 (続く)
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