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2021年5月 2021年5月の微生物学ボーイと元ヤンデレ歯学生
第3話 俺は小説が書けない
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「美波……一児の母にもなって、君は一体何をやっているんだ」
「本当にごめん。でも頑張れば何とかなるでしょ? まれ君、小説も漫画も一杯読んでるし」
「そうだといいんだけどなあ……」
場所は引き続き京都市内の自然公園。
美波が俺に頼んできたのは「まれ君が書いた小説を後輩に見せたい」ということだった。
ここで記憶力のよい読者なら違和感を覚えるだろう。
確かに俺は畿内医科薬科大学の文芸研究会に所属しているし、4回生に進級するまでは部活の代表者である主将を務めていた。
文芸研究会は『風雲』という部誌を定期的に刊行して学内で配布しており、その部誌には主に部員が書いた小説が掲載されている。
それならば俺は小説など簡単に書けるはずだし、美波の後輩に見せられないというのには何か事情があるはずだ。
そういう推測になりそうな所だが、実の所を話すと……
俺は、小説というものを書いたことがない。
厳密には部誌に掲載できるような小説を書いたことがなく当然部誌に小説を寄稿したこともないという意味になるが、ともかく俺は小説を書けないのだ。
思い返せば南東寺高校で新聞部に所属していた頃から、俺はいつか小説家になりたいと思っていた。
中高一貫校での生活では毎日をひたすら読書に費やしていて、6年間で500冊以上は小説やライトノベルを読んだ記憶がある。
その経験から小説を書こうと何度も試みたのだが、これがもう本当に上手くいかなかった。
壮大なSFやファンタジーの世界観を構築していざ長編小説を書き出してみるのだが、5話まで書ければいい方だった。
大抵は書いているうちに矛盾だらけになるか書く気力を失ってしまい、俺は小説家には絶対になれないと理解した。
短編小説でさえ1作品も最後まで書けたことがなく、文芸研究会でショートショートを量産する後輩で看護学部生の三原加里奈君にはいつも尊敬の念を感じていた。
ちなみに南東寺高校新聞部の後輩でもある美波は俺と違って小説の才能があり、畿内歯科大学には文芸系の部活・サークルがないので普段は書いていないが彼女は志望校だった畿内医大に受かっていたら文芸研究会のエースになっていただろうと思う。
そういう訳で俺は文芸研究会で1作品も小説を書いたことがなく、部誌にはフィリピンへの短期留学の経験などを書いた旅行記やこれまで読んできた本の書評などエッセイだけを寄稿してきた。
新入部員に物部先輩は小説を書けないと知られるのは毎年恥ずかしかったが、三原君や医学部4回生の白神塔也君など後輩たちはエッセイしか書かなくていいのも文芸研究会の多様性の象徴だと上手くフォローしてくれていた。
「とにかくいきなり小説書けって言われても難しいよ。ショートショートでも書けるならこれまでに書いてるし、俺の小説はすごく面白いとまで言っちゃったんだろ? 部誌自体は出せるけどさ」
「本当にごめんね。私もまれ君に小説の才能はゼロだって分かってたけど、後輩にいい所を見せたくて……」
「は、ははは……」
謝りつつ事実を指摘した美波に俺は苦笑いするしかなかった。
「本当にごめん。でも頑張れば何とかなるでしょ? まれ君、小説も漫画も一杯読んでるし」
「そうだといいんだけどなあ……」
場所は引き続き京都市内の自然公園。
美波が俺に頼んできたのは「まれ君が書いた小説を後輩に見せたい」ということだった。
ここで記憶力のよい読者なら違和感を覚えるだろう。
確かに俺は畿内医科薬科大学の文芸研究会に所属しているし、4回生に進級するまでは部活の代表者である主将を務めていた。
文芸研究会は『風雲』という部誌を定期的に刊行して学内で配布しており、その部誌には主に部員が書いた小説が掲載されている。
それならば俺は小説など簡単に書けるはずだし、美波の後輩に見せられないというのには何か事情があるはずだ。
そういう推測になりそうな所だが、実の所を話すと……
俺は、小説というものを書いたことがない。
厳密には部誌に掲載できるような小説を書いたことがなく当然部誌に小説を寄稿したこともないという意味になるが、ともかく俺は小説を書けないのだ。
思い返せば南東寺高校で新聞部に所属していた頃から、俺はいつか小説家になりたいと思っていた。
中高一貫校での生活では毎日をひたすら読書に費やしていて、6年間で500冊以上は小説やライトノベルを読んだ記憶がある。
その経験から小説を書こうと何度も試みたのだが、これがもう本当に上手くいかなかった。
壮大なSFやファンタジーの世界観を構築していざ長編小説を書き出してみるのだが、5話まで書ければいい方だった。
大抵は書いているうちに矛盾だらけになるか書く気力を失ってしまい、俺は小説家には絶対になれないと理解した。
短編小説でさえ1作品も最後まで書けたことがなく、文芸研究会でショートショートを量産する後輩で看護学部生の三原加里奈君にはいつも尊敬の念を感じていた。
ちなみに南東寺高校新聞部の後輩でもある美波は俺と違って小説の才能があり、畿内歯科大学には文芸系の部活・サークルがないので普段は書いていないが彼女は志望校だった畿内医大に受かっていたら文芸研究会のエースになっていただろうと思う。
そういう訳で俺は文芸研究会で1作品も小説を書いたことがなく、部誌にはフィリピンへの短期留学の経験などを書いた旅行記やこれまで読んできた本の書評などエッセイだけを寄稿してきた。
新入部員に物部先輩は小説を書けないと知られるのは毎年恥ずかしかったが、三原君や医学部4回生の白神塔也君など後輩たちはエッセイしか書かなくていいのも文芸研究会の多様性の象徴だと上手くフォローしてくれていた。
「とにかくいきなり小説書けって言われても難しいよ。ショートショートでも書けるならこれまでに書いてるし、俺の小説はすごく面白いとまで言っちゃったんだろ? 部誌自体は出せるけどさ」
「本当にごめんね。私もまれ君に小説の才能はゼロだって分かってたけど、後輩にいい所を見せたくて……」
「は、ははは……」
謝りつつ事実を指摘した美波に俺は苦笑いするしかなかった。
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