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輪島ライ

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1 自業自得

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 大学に入って初めてできた彼女に振られたのは、行きつけのファミレスの店内だった。

「……ねえ、ケン君」

 注文後10分ほどで運ばれてきた料理にすぐさま手を付けミラノ風ドリアをおかずに大盛りライスをかき込んでいた俺に、彼女である青葉あおば美紗みさは何か言いたげに呼びかけた。

 ケン君というのは吉良きら健一けんいちという俺の名前を略した愛称で、簡潔なので呼ばれる俺自身も気に入っている。

「んんー、何?」

 ガツガツと米&ライスを口に放り込んでいた最中、

「私たち、一旦別れない?」
「がふっ! ぐあはっ!!」

 インパクトがありすぎる一言が飛んできて俺は割と久々にむせた。

 落ち着いてグレープソーダ(fromドリンクバー)で食物を咽頭に流し込んでから俺は慌てて尋ねた。

「別れるって、いきなり何で!?」
「長いこと付き合ってきたから言うけど、ケン君はいい加減太りすぎ! 特に最近酷いよ!? ここ1か月でまた何キロか増えてない!?」
「いや、太ってるのは今に始まったことじゃないし、最近体重測ってないから数値は知らない」
「そういうこと言ってるんじゃないの! 確かにケン君は入学した頃から大柄だったけど付き合い始めた頃はラグビー部員と言えば済む体型だったよね。今は相撲部って言っても疑われるぐらいの脂肪のカタマリじゃない」
「うう……」

 何故いきなりここまで罵られるのかは分からないが、美紗が言っていることはすべて事実だった。

「友達は幸せ太りって茶化すけど私は健康管理に気を配れないような人とは結婚できないし、付き合っていくつもりもないから。しばらく連絡取らないから大学でも話しかけないでね」

 美紗は冷たくそう言い放つとそのままバッグを持ってファミレスを出ていった。

 入店後に何も注文しなかったのはそういう理由だったらしい。

 そして、店内に残された俺は。


「……痩せた方がいいのか?」

 今この瞬間に非リア充に転落した若年肥満男性(21)でしかなかった。


 翌日から大学に行ってもいつもの目が届く座席に美紗はいなくて、大講堂のどこか離れた場所で授業を受けているらしかった。

 メッセージアプリでは不摂生を詫びる文章と共にこれから頑張って痩せるという決意を伝えたが、やはりと言うべきか返信はなかった。

 そうして1か月が過ぎ、暴飲暴食を控えたら体重が2kg減ったことに(全体の2%にもならないことを忘れて)喜んでいた矢先、俺は大学の廊下で驚くべき光景を目にした。
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