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第1章 異世界予備校
10 模擬試験
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それから数か月が経ち、エデュケイオンは温暖期に入った。
エデュケイオンでは科学界と同等の単位で24時間が1日として扱われる点は科学界と共通しているが、1か月は30日と決められている。
この関係上暦と気候には次第にずれが生じるためエデュケイオンでは暦と季節は対応しておらず、気候の周期的変化に応じて「生育期」「温暖期」「寒冷期」という3つの季節がゆるやかに定義されていた。
12か月(360日)で1年となる点も概ね科学界と同様であり、上級学校の入学試験は例年2月から3月頃に行われる。
近年では2月から3月の入試シーズンは寒冷期に相当しており、受験生たちは温暖期から本腰を入れて勉強する必要があることから「温暖期の努力が合否を分ける」という認識は受験生並びに教育者たちに共有されていた。
「2人とも、今日は大陸統一模試を受けにきてくれてありがとう。予想以上に多くの受験生が集まって、『獅子の門』の会場には50名以上の高等学校生が集まっているぞ」
「そんなにですか? うちの塾の高等学校4年生は20人もいなかったような……」
「ユキナガ先生、外部からも多くの受験者が訪れたということですね?」
不思議そうな顔をするカンラの横でジェシカは正しい推察を述べ、ユキナガは笑顔で頷いた。
「模試の結果が直接上級学校入試に影響することはないが、模試の成績を見れば合格可能性を推し量ることができるし模試で分からなかった問題を復習すれば自らの弱点をなくしていくことも可能となる。4年生で初の模試という状況になったのは残念だが、この大陸で初めての模試にどうか全力を尽くして欲しい」
「分かりました!」
ジェシカは元気よく答えると会場となっている「獅子の門」の教室へと歩いていき、カンラもユキナガに会釈をするとその後を追った。
模擬試験での偏差値算定を成立させるには人数が不十分だが、それでも多数の受験生がぞろぞろと教室に入っていくのを見てユキナガは会心の笑みを浮かべた。
その時。
「ユキナガ先生、少しお話したいことがあります。こちらに来て頂けますか」
「分かりました。何かございましたか……?」
「獅子の門」の玄関口に立っていたユキナガに駆け寄ってきたリナイは彼を校舎の離れに連れていった。
「実はこの塾の近隣地域に小規模な魔裂が生じまして、住民に警戒指示が出ています。現れた魔獣の群れは騎士団が出動すればすぐに対処できる程度のものですが、この塾に魔獣が襲来する可能性も皆無ではありません」
「と言いますと、模試は中止すべきでしょうか?」
転生して間もないユキナガは魔獣が現れた際の住民の対応についてまだ詳しく知らず、表情を曇らせてリナイにそう尋ねた。
「いえ、今は受験生を帰宅させる方が危険ですし私も含めてこの塾には元騎士の講師が何人もおります。仮に魔獣が襲来しても十分に撃退できますから、模試は予定通り行います。混乱を避けるため受験生には魔裂発生について知らせず、ユキナガさんは試験監督を務めつつ屋内での待機をお願いします」
「承知致しました。戦えない私が言うのも申し訳ありませんが、万が一の時はよろしくお願いします」
そこまで話すとリナイは他の講師を呼びに行き、彼らは軽装の鎧と自衛用の武器を身に着けると校舎周辺の見張りに回った。
騎士団出身の講師たちに心の中で感謝を述べつつ、ユキナガは試験開始の連絡を行うため教室へと向かっていった。
エデュケイオンでは科学界と同等の単位で24時間が1日として扱われる点は科学界と共通しているが、1か月は30日と決められている。
この関係上暦と気候には次第にずれが生じるためエデュケイオンでは暦と季節は対応しておらず、気候の周期的変化に応じて「生育期」「温暖期」「寒冷期」という3つの季節がゆるやかに定義されていた。
12か月(360日)で1年となる点も概ね科学界と同様であり、上級学校の入学試験は例年2月から3月頃に行われる。
近年では2月から3月の入試シーズンは寒冷期に相当しており、受験生たちは温暖期から本腰を入れて勉強する必要があることから「温暖期の努力が合否を分ける」という認識は受験生並びに教育者たちに共有されていた。
「2人とも、今日は大陸統一模試を受けにきてくれてありがとう。予想以上に多くの受験生が集まって、『獅子の門』の会場には50名以上の高等学校生が集まっているぞ」
「そんなにですか? うちの塾の高等学校4年生は20人もいなかったような……」
「ユキナガ先生、外部からも多くの受験者が訪れたということですね?」
不思議そうな顔をするカンラの横でジェシカは正しい推察を述べ、ユキナガは笑顔で頷いた。
「模試の結果が直接上級学校入試に影響することはないが、模試の成績を見れば合格可能性を推し量ることができるし模試で分からなかった問題を復習すれば自らの弱点をなくしていくことも可能となる。4年生で初の模試という状況になったのは残念だが、この大陸で初めての模試にどうか全力を尽くして欲しい」
「分かりました!」
ジェシカは元気よく答えると会場となっている「獅子の門」の教室へと歩いていき、カンラもユキナガに会釈をするとその後を追った。
模擬試験での偏差値算定を成立させるには人数が不十分だが、それでも多数の受験生がぞろぞろと教室に入っていくのを見てユキナガは会心の笑みを浮かべた。
その時。
「ユキナガ先生、少しお話したいことがあります。こちらに来て頂けますか」
「分かりました。何かございましたか……?」
「獅子の門」の玄関口に立っていたユキナガに駆け寄ってきたリナイは彼を校舎の離れに連れていった。
「実はこの塾の近隣地域に小規模な魔裂が生じまして、住民に警戒指示が出ています。現れた魔獣の群れは騎士団が出動すればすぐに対処できる程度のものですが、この塾に魔獣が襲来する可能性も皆無ではありません」
「と言いますと、模試は中止すべきでしょうか?」
転生して間もないユキナガは魔獣が現れた際の住民の対応についてまだ詳しく知らず、表情を曇らせてリナイにそう尋ねた。
「いえ、今は受験生を帰宅させる方が危険ですし私も含めてこの塾には元騎士の講師が何人もおります。仮に魔獣が襲来しても十分に撃退できますから、模試は予定通り行います。混乱を避けるため受験生には魔裂発生について知らせず、ユキナガさんは試験監督を務めつつ屋内での待機をお願いします」
「承知致しました。戦えない私が言うのも申し訳ありませんが、万が一の時はよろしくお願いします」
そこまで話すとリナイは他の講師を呼びに行き、彼らは軽装の鎧と自衛用の武器を身に着けると校舎周辺の見張りに回った。
騎士団出身の講師たちに心の中で感謝を述べつつ、ユキナガは試験開始の連絡を行うため教室へと向かっていった。
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