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手錠

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赦されないものと知っていても愛することは
愛されることはやめられなかった。

イマなら、あの頃よりは、
貴方のこと、解るかもしれない。

……

最初に触れたのはどっちが先だったけ?
ふっと、何気なく気になり始めて貴方に問いかけると貴方は少し困ったように笑いながら
「わたしから触れたくて近づきたくて貴方に触れたんだよ。」と伝えられたとき愛おしい気持ちが溢れて無言で抱きついたことが遠い遠い記憶の中で鈍い〝痛み″を感じつつ呼び起こされていた。

初めて喧嘩したときに貴方の欲深さを本気さを
伝えられた。いや、教え込まれた?のかな。
今では全てわからない。一途に想ってくれていて、愛されていて愛しさ余って…なんだっけ?

考えたくても、目を開けて貴方だけを瞳の中に閉じ込めて見つめていたいのに、
セカイには、ココには2人しか居ないって。
そう、強く強く、わたしも貴方と同じように
想いたいし、想っていたと思っていたのに。

あははっ、馬鹿だから。
もう、何もわからない。
ただ、ただ、この行為は他人からしたら自分たち以外からしたら…愚かで浅はかで到底理解できないものなんだろうな。でも、それでもいい

「ねぇ、わたしに愛されて貴方はしあわせ?」

「もちろん、貴方以上に愛せるヒトなんて
どこにもいない。
だから…これからも
永遠に(とわ)に一緒だよ。」

「死が2人を…なんだっけ?」

「死んでも一緒。」

「ふふっ…ありがと。
ねぇ、最期にお願い聞いてくれる?」

「なに?」

「最期は瞳の中に貴方を閉じ込めたいの。
だから、最後に深く深くキスして」

もう、何も感じられないし、感じたくないけど
貴方からの一途な温もりとは程遠い灼熱の想いだけは感じていたい。

どちらともなく、紡いだコトノハ。

愛してる。
……

事を終えて、なんとも言い難い感情が想いが
己の中を侵食していく。
赦されない想いだとしても、実行に移したのは
じぶん自身だ。後悔はない。

目の前にいる最愛の愛おしいひと。
普段目の前では吸うことのなかった煙草に火をつけながら疑問を問いかける。
ねぇ、なんで片方潰したの?

……

″馬鹿ね、私以外を見るのに両の瞳なんて
要らないでしょ?
貴方だけはわたしを忘れないで。″

ふふ。きっと彼がいまのわたしたちを見たら
泣きながら笑いながら言うんだろうね。

「救いようのない似た者同士めっ。」って。
彼だけは心残りかな。巻き込んでごめんね。
でも、あのとき、あの場所にわたしたち
居たんだって。そう、想える〝場所″と思えば
それはそれで悪くないのかもしれない…
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