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新たな武器 俺TUEEEE始まりの時!?

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 遊べる武器屋。
クロスソード・ヴァンガード
うん。色々ギリギリな名前のお店だ。
それに、ショッピングモールの中の武器屋ってのも物騒だ。
 まあ、アメリカのモールの中には、ライフルを売ってる店もあるって聞いたことがあるから、そうでもないのか? 

 俺の服も決まって、ぶらぶら歩いていると、この店の前に来ていた。

 そもそも、遊べる武器屋とはどういうことだ?
「ここは、変わり者の店主が趣味でやってる武器屋っす。人間さんは、魔法が使える人が少ないっすけど。ここの武器は、相性が合えば、その武器にこめられた魔法が使えるらしいっすよ」
 それは、もう俺に魔法を使って、俺TUEEEEをしろってことだよな!?
正直、エリが強いのは分かっているが、女の子に守られるのは、いくらヘタレな俺でも自分で許せない。
 大事な子くらいは、守りたいのだ。
「何か、ちょっとカッコいいじゃない」
 エリがぼそりと呟く。
おおよ。俺はカッコ良くなって見せるぜ!

 意気揚々と店に入ってみる。店には所狭しと武器が並んでいる。
日本刀から銃器。モーニングスターのようなものまで、何でもありだ。

 四十過ぎくらいのおじさんさが、奥のカウンターに座っている。
「こんにちわ。自分に合う武器を探しに来たんですが、良かったら、お勧めとか教えてもらえないですか?」

 おじさんは、俺ら三人をじろりと見ると。俺ら一人一人を指さした。
「そこの魔法少女さん。ここには、あんたが強くなれるような武器はない」
 そりゃそうだ、閻魔様の秘蔵の装備なのだ。
「そして、獣人のお嬢さん。あんたは、自分の肉体で戦ったほうが良さそうだ。それに、魔法使えるだろう?」
 うんうん。確かに獣人は、自分の身体を持ち味にしたほうが強そうだ……え?
「リアナ魔法使えるのか?」
「使えるっすよ。使えないなんて、言った覚えはないっす」
 確かにこっちも聞いてないけど。一体何の魔法が使えるんだ? でも、あの戦場で逃げまどってたぐらいだから、回復とか、支援系とかなのか?

「どんな魔法が使えるんだ?」
「火を使った魔法っす。まあ攻撃魔法ってやつっす」
「そうなのか? 手から火の玉を、バーンって出したりか?」
 てか、それなら何であんなところに隠れてたんだ?
「違うっす。口から爆炎を放出するっす。威力の調整が難しいのと、女の子的に、結構恥ずかしいっす」
 お前はドラゴンかよ!? いざとなればブレス攻撃ができるらしい、新しい発見だった。 

 最後におじさんが、俺の方を指さす。
「そして、そこの兄ちゃんには、魔法の才能が一切ない。魔法が使えるような武器は使えない」
 容赦なくバッサリだ。俺TUEEEEは夢のまた夢だったのか。
「魔法は使えんが、兄ちゃんその小手、神器だろ?」
 毘沙門天様からもらった小手を指さすおじさん。
「そうです、膂力を得る力を持ってます」
 俺がそういうと、ちょっと待ってなと言って、バックヤードに入っていった。

「エリ、俺才能ないらしい……」
「そ、そんなに落ち込まないで純平。私が守ってあげるから」
 あっ! 神楽坂がしまったという顔をした。
俺が、さらに落ち込んだ感情が伝わったらしい。
 フォローすればするほど、俺が落ち込むのが分かったらしく、これ以上エリは何も言わなかった。
「ああ、エリは俺が守る!って言ってみたかった」
「気持ちだけでも、十分嬉しいわよ」
「ウチは? 旦那様、妻であるウチにはないんっすか?」
 また背中の上でリアナが暴れている。
「おうおう、リアナも守るぞ。毘沙門天様からも、博士たちからも、お願いされているからな」
「違うっす。そんなんじゃないっす。もっと甘々なのが、ウチも欲しいっす!」
 暴れて、リアナの胸が、バンバン俺の背中や頭に当たってる。こりゃたまらん。
「よしよし。俺が守ってやるから。へっへ……」
「おお、甘々来たっす。でも、旦那様。流石にここで交尾はちょっと」 
「純平!」
「イテーーー!」
 エリから尻をつねられた。痛いどころか、肉が引きちぎれるかと思った。

「店で騒ぐんじゃねえよ。この剣なら兄ちゃんも使えるよ」
 うん。確かに剣だ。特に装飾もない、両手持ち両刃のロングソード。
ゲームなら、最序盤で手に入りそうな武器だ。
 でも、裏から持ってきてくれた武器。何か特別な力があるに違いない。

「これにはどんな力があるんですか?」
「ない」
「これにはどんな力があるんですか?」
「ない」
 成程。聞き間違えではないらしい。
「力はない、切れ味も普通。ただ、丈夫だ。ここにあるどの剣よりも丈夫だ」
 丈夫なだけが取り柄の剣。がっかりだ。せめて、どんなものでも切れる剣とかだったら、格好がつくのに。
「不満そうだな。まあ、試してみな。こっちだ」
 おじさんはカウンターを出て、店内の一番奥にある。ドアを開ける。

 そこは、銃器の射撃場だった。カウンターがあり。20m位先に、的が10個並んでいる。
的の位置は調節できるようで、一番奥までは100m位ありそうだった。
 こんな空間を準備できるスペースは、店内になさそうだったが、魔法的な何かなのだろうか。
 おじさんがボタンを押すと。的は一番遠くまで流れてゆく。
「兄ちゃん。カウンターの前に出な」
 そう言って、さっきの剣を俺に寄こした。

 カウンターの前に出てみたが。
今から何をするんだ? 魔法は出ないから、走って切り付けに行けって事か?
「その場で、思いっきり、剣を横薙ぎにしてみろ。型なんて考えなくていいから、横薙ぎにする位置はだけは、的の真ん中ら辺だ」
 良く分からんが、全力で剣を振れという事らしい。
横薙ぎか? 剣なんて振ったことないから、よく分からないしな。
 取り敢えず。バットを振るような感じでスウィングしたら、全力で行けそうだ。

「旦那様。頑張るっす!」
「ありがとうリアナ。じゃあ、せーの」
 俺は思いっきり剣を振った。
物凄い突風が吹き荒れる。そして同時に、的十個が全て真っ二つになった。その先の壁にもひびが入っている。
「うお!! 凄いじゃないですか、おじさん。これ、風の魔法とかじゃないんですか?」
「魔法じゃない。ただのバカ力で、発生した風圧だ」
 魔法じゃないのか。風の魔法(物理)といったところか。
「まあ、魔法じゃないが、威力は中々だっただろ? 普通の剣だと、今のでポッキリ逝ってるよ」
 確かに。これなら、少しは役に立てそうだ。

「おじさん、ありがとう。俺にぴったりの武器でした。これ頂いてもいいんですか?」
「ああ、もちろんだ。むしろ在庫処分できて、こっちは助かる」
 その本音は聞きたくなかったです。

「あの、おじさん。私も自分の武器、試し打ちしてみたいんですけど。良いですか?」
「駄目だ」
 即答だった。お店の武器以外は禁止か何かかな?
 それにしてもエリの奴、また負けず嫌いの性格が疼いたんだろう。
「嬢ちゃんがここで試し打ちしたら、ここのモール事、消えちまう可能性がある。勘弁してくれ」
 相変わらず、チート能力の神楽坂さんです。
エリはこちらを見て、勝ち誇ったような顔をしている。
 俺がエリを守る想像がつかない。
 でもこれで、足を引っ張る可能性が、少しは減った気がする。
エリのお荷物というのだけは勘弁だ。リアナもこれで、少しは守る事が出来そうだ。

 リアナに、他に必要そうなものが無いか聞いたが、特にないという。
宿は、趣味でペンションみたいなのをやってるところが、所々あるらしい。
 俺たちには食料は必要ないし。RPGの回復薬みたいなアイテムも、ないとの事だった。

 聖クラリス帝国までは、歩けば1週間以上かかるとの事だったが、今回はエリが抱えて飛んで行ってくれるらしい。
 神楽坂さんマジ天使。お、また赤くなってカワイイ。
羽がパタパタしている。どうも嬉しい時も羽は動くらしい。そこもまたカワイイ。
「純平。だから伝わっちゃうから」

 多分エリのチート能力なら、一日かからないだろう。どちらかというと、ふっ飛ばされないように気を付ける方が、大変そうだ。

 それから、おじさんは盾もくれた。これも丈夫だけが取り柄の物らしい。
でも、今の俺には十分だ。
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