7 / 426
魔法少女遭遇編
07話 事前の準備は大事
しおりを挟む
奴隷商の店をでる。
すでに日は落ちかけており、コールディンを追いかけるならば――すぐに行動しなくてはならない。
「あ、あの、ご主人様。私たちはどうすれば」
僕の後ろを付いてくるミミモケ族が言う。
年端もいかない子が二人、僕と同い年くらいの子が一人、皆その姿はすごく怯えて見える。
これからなにをされるのか、恐怖に苛まれた表情だった。
「安心して、大丈夫だよ。君たちを解放する」
「えっ? か、解放、ですか?」
「うん。故郷は近いのかな?」
「は、はい。先ほどお二人が話されていた場所、そこをさらに北東に登った『ファーポッシ』という村です。狩りをしていた最中、盗賊に襲われてしまいまして」
盗賊、か。
解放したとてまた同じことが起きる可能性は高い。現状、すぐに考えられる案は一つだった。
僕はミミモケ族の皆を前に、これからのことを打診する。
「さっきも言った通り君たちを解放するんだけれど、僕を信じて奴隷輪はそのままでもいいかな?」
「そのまま、ですか?」
「奴隷輪の上書きはできないから、僕という主を残して予防線を張っておきたいんだ。僕は特に君たちになにかをしてほしいという考えは持っていない。自身の用事の最中、君たちにたまたま出会って、お金でどうにかなるのであればと思って助けたんだ」
僕は頭を下げる。
まさに言葉通り、ただの偶然ただの偽善だ。お金を持っていたから、そんな些細な理由にすぎない。
「なにを謝るのでしょう。どんな理由であれ助けてくれたことは事実です。私たちはあなたに救われました。ありがとうございます、ご主人様」
ミミモケ族の皆が、口を揃えて同じことを言う。
「そう言ってくれると嬉しいよ。それじゃ、ファーポッシの道中まで一緒に向かおう。街中に『飛車』の貸出所があるから乗って行こうか」
「……本当にありがとうございます、ご主人様」
「あはは。ご主人様なんて堅苦しく呼ばなくていいよ」
「は、はいっ! では、お姉様とお呼びしても?」
「……」
ぉ、お姉様か。
その呼び方に対し上手く説明できる気がしないため、僕は頷き返すしかないのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
飛車とは、空を飛ぶ竜の乗り物である。
スピード重視であり、乗車人数は3人~4人ほどが限界となっている。値段も高額であるため、緊急でない限り使用する人は少ない乗り物だ。
その他、地上を走るトカゲの乗り物の『角車』があるのだが――こちらは真逆、荷物を大量に載せられるぶんスピードが遅い乗り物となっていた。
まず間違いなく、コールディンは後者だろう。
ここまで向かう最中、例のルートに向かって走る一台の角車が空の上から見えた。
ファーポッシの道中にて、僕は単独で降車し――ミミモケ族の皆と別れる。
先回りは成功、マップを広げて再度ルートを確認する。奴隷商のおっさんが言っていた道は間違いなくここだ。
僕は大きい一本道を観察しながら歩く。
時刻は夜のはじめごろ、すでに日は落ちている。暗闇に溶け込んで仕掛けるには丁度いい頃合いだろう。
アイテムボックスを表示し、使えそうなアイテムをピックアップしていく。
うーむ、襲撃する以上顔は隠しておきたいな。
・ 雪だるまんフード(これで君も雪だるま?)
頭に装着、戦隊ヒーローよろしく決めポーズをとってみる。
水着に雪だるまかぁ、季節感にメリハリついてるぅっ! これってもうただの変質者じゃ――細かいことは考えないでおこう。
ある程度顔が隠れたらそれでいいんだ。
……さて、どこで仕掛ける?
仕掛けるに当たって問題は山積みだ。可能性として高いのが護衛だろう。モンスターが出現する道中、その点に対して対策がされていないとは考えられない。
はたして、戦闘になったら勝てるのだろうか?
僕の現在のレベルは10、ビギナッツによるパワープレイを施したとて10なのだ。
懸念材料があるとすれば、ここはもう疑いようのない現実であり、全てがリアルだということ。一つ一つの行動に対してやり直しがきかないのだ。
僕は改めてステータスを開示する。
《ネーム》 Kura
《ジョブ》 触術師(レベル10)
《種族》 人族
《保有スキル》 触手 捕食
最初に、ステータスを見た時から気付いていた。
ゲームではお馴染み、見慣れたいつものレベル表記。だが、その中にあるべきはずの重要項目がないのだ。
「……HPとMP、攻撃防御、基本的なステータス数値はどこにいったんだよ」
熟考している間に角車が走る音、地面の振動が身体に伝わってくる。
やるしかない、やるしかない、やるしかない。このチャンスを逃せばもう手がかりは掴めない。
僕は覚悟を決めて、アイテムボックスから『火竜玉』を取り出した。
すでに日は落ちかけており、コールディンを追いかけるならば――すぐに行動しなくてはならない。
「あ、あの、ご主人様。私たちはどうすれば」
僕の後ろを付いてくるミミモケ族が言う。
年端もいかない子が二人、僕と同い年くらいの子が一人、皆その姿はすごく怯えて見える。
これからなにをされるのか、恐怖に苛まれた表情だった。
「安心して、大丈夫だよ。君たちを解放する」
「えっ? か、解放、ですか?」
「うん。故郷は近いのかな?」
「は、はい。先ほどお二人が話されていた場所、そこをさらに北東に登った『ファーポッシ』という村です。狩りをしていた最中、盗賊に襲われてしまいまして」
盗賊、か。
解放したとてまた同じことが起きる可能性は高い。現状、すぐに考えられる案は一つだった。
僕はミミモケ族の皆を前に、これからのことを打診する。
「さっきも言った通り君たちを解放するんだけれど、僕を信じて奴隷輪はそのままでもいいかな?」
「そのまま、ですか?」
「奴隷輪の上書きはできないから、僕という主を残して予防線を張っておきたいんだ。僕は特に君たちになにかをしてほしいという考えは持っていない。自身の用事の最中、君たちにたまたま出会って、お金でどうにかなるのであればと思って助けたんだ」
僕は頭を下げる。
まさに言葉通り、ただの偶然ただの偽善だ。お金を持っていたから、そんな些細な理由にすぎない。
「なにを謝るのでしょう。どんな理由であれ助けてくれたことは事実です。私たちはあなたに救われました。ありがとうございます、ご主人様」
ミミモケ族の皆が、口を揃えて同じことを言う。
「そう言ってくれると嬉しいよ。それじゃ、ファーポッシの道中まで一緒に向かおう。街中に『飛車』の貸出所があるから乗って行こうか」
「……本当にありがとうございます、ご主人様」
「あはは。ご主人様なんて堅苦しく呼ばなくていいよ」
「は、はいっ! では、お姉様とお呼びしても?」
「……」
ぉ、お姉様か。
その呼び方に対し上手く説明できる気がしないため、僕は頷き返すしかないのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
飛車とは、空を飛ぶ竜の乗り物である。
スピード重視であり、乗車人数は3人~4人ほどが限界となっている。値段も高額であるため、緊急でない限り使用する人は少ない乗り物だ。
その他、地上を走るトカゲの乗り物の『角車』があるのだが――こちらは真逆、荷物を大量に載せられるぶんスピードが遅い乗り物となっていた。
まず間違いなく、コールディンは後者だろう。
ここまで向かう最中、例のルートに向かって走る一台の角車が空の上から見えた。
ファーポッシの道中にて、僕は単独で降車し――ミミモケ族の皆と別れる。
先回りは成功、マップを広げて再度ルートを確認する。奴隷商のおっさんが言っていた道は間違いなくここだ。
僕は大きい一本道を観察しながら歩く。
時刻は夜のはじめごろ、すでに日は落ちている。暗闇に溶け込んで仕掛けるには丁度いい頃合いだろう。
アイテムボックスを表示し、使えそうなアイテムをピックアップしていく。
うーむ、襲撃する以上顔は隠しておきたいな。
・ 雪だるまんフード(これで君も雪だるま?)
頭に装着、戦隊ヒーローよろしく決めポーズをとってみる。
水着に雪だるまかぁ、季節感にメリハリついてるぅっ! これってもうただの変質者じゃ――細かいことは考えないでおこう。
ある程度顔が隠れたらそれでいいんだ。
……さて、どこで仕掛ける?
仕掛けるに当たって問題は山積みだ。可能性として高いのが護衛だろう。モンスターが出現する道中、その点に対して対策がされていないとは考えられない。
はたして、戦闘になったら勝てるのだろうか?
僕の現在のレベルは10、ビギナッツによるパワープレイを施したとて10なのだ。
懸念材料があるとすれば、ここはもう疑いようのない現実であり、全てがリアルだということ。一つ一つの行動に対してやり直しがきかないのだ。
僕は改めてステータスを開示する。
《ネーム》 Kura
《ジョブ》 触術師(レベル10)
《種族》 人族
《保有スキル》 触手 捕食
最初に、ステータスを見た時から気付いていた。
ゲームではお馴染み、見慣れたいつものレベル表記。だが、その中にあるべきはずの重要項目がないのだ。
「……HPとMP、攻撃防御、基本的なステータス数値はどこにいったんだよ」
熟考している間に角車が走る音、地面の振動が身体に伝わってくる。
やるしかない、やるしかない、やるしかない。このチャンスを逃せばもう手がかりは掴めない。
僕は覚悟を決めて、アイテムボックスから『火竜玉』を取り出した。
83
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる