転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
23 / 426
氷迷宮の迷い子編

23話 それぞれの想い

しおりを挟む
 かまくらを作ろう。
 ナコも僕の思惑に気付いたようで楽しそうに雪を一箇所に集め始める。

「ふふ。雪ってテンション上がっちゃいますよね」
「その気持ちわかる。そういや手とか冷たくない?」
「魔装デバイスをONにしていると、あまり暑さも寒さも感じません」
「魔法少女になると色んな面が強化されるのかもしれないね」
「まさに魔法少女です」

 なにがまさにかは不明だが、ナコが嬉しそうなので僕も笑顔で頷き返す。
 ナコのイメージする魔法少女とは一体なんなのか。小さいころ妹と一緒に魔法少女的なアニメを見た記憶はあるがこんなパワータイプだったっけ。
 もっとキラプリしていたような――本人が納得してるならいいか。

「てーいっ」

 ナコが僕に小さな雪玉を投げつける。
 ナコは遊びのつもりだったのだろうが、想定外の威力があり三メートルほど吹っ飛んだ。
 魔法少女の基本性能強すぎない?

「ごめんなさい! 大丈夫ですか、クーラ?!」
「……ま、まさに魔法少女だね」

 溢れるパワーの通り、ここまでの道中ナコが疲れた様子はなかった。
 進もうと思えばまだまだ進めるといった元気さである。情けないことに僕の方が疲れて休憩を打診したようなものだ。
 まだまだ疲れ知らずのようで、ナコは笑顔で雪玉を転がしながら、

「見てください、雪だるまです」
「わぁ、可愛らしいね」
「名前はクーラくんと名付けました」
「えぇー、なんで?」
「私を助けに来てくれたヒーローの名前です」

 雪だるまんフードのことかぁ。
 あの時は顔を隠すことしか考えていなかったので、手近にあったものでどうにかしただけなのだが、ヒーローとまで言ってくれるとは嬉しい限りである。

 大量の雪を一箇所に集め終わり、真ん中を触手で堀り掘りする。
 せっかくなので、ナコが丹精込めて作ってくれた雪だるま(クーラくん)を入り口に飾り付けて――、

「こんなものかな」

 ――かまくらの完成である。
 アイテムボックスに詰めてきた薪を重ね置き、お馴染み火竜玉を篭手で削り落として着火する。
 その周囲に串に刺した魚を立て、ゆっくりとできあがりを待った。
 じりじりと魚が焼けていく音。
 今までに起こったできごとを胸の内で噛み砕くように――僕とナコは無言でそれを見つめ続ける。

 薪や食料一式はファーポッシから持ってきたものだ。

 村の中に生き残った人がいないことを確認後、旅路に必要だと思うものは全ていただいてきた。
 背に腹は代えられぬ状況とはいえど、村の人にとって僕は厄災に等しいだろう。
 物資をあさりながら、なんて愚かな行為をしているのかと何度も自省しては――無理やり振り払った。

 ――ゲームしていた世界がリアルになるとこんなに恐ろしいなんてな。

 後藤さんの言葉は恐ろしいくらいに正しかった。
 彼はどんな体験をしてきたのだろう。またどこかで会えるのならば、敵としてではなく先輩として話を聞いてみたいと思った。

 今この瞬間、ナコはナコでなにを思い巡らせているのか。

 それを無理に聞いたりはしない。
 二人でいることは確かに心強いけれど、一人で悩み抜く時間も必要だ。

 ……特にこの世界ではそうだろう。

 いつ何時、僕が不慮の事故でいなくなるとも限らない。
 ナコにはナコ自身の強さを持ってほしいと思っている。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

処理中です...