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氷迷宮の迷い子編
25話 触手と魔法少女
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「お手伝いってなにか方法があるの?」
「ふふふーん。リーナにはとっておきの秘策があるんだなー」
リーナがアイテムボックスから赤い塊を取り出し頭上に投げる。
「ゴーレムの、魔核?」
「これをねー、こうするんだよ」
リーナがパチっと指を鳴らすと、魔核が燃え上がり爆発した。
小さな花火くらいの火力であったが、リーナの言わんとしていることが――なんとなくではあるが想像できた。
「本体からはずれた魔核はね、高い熱に反応して爆発するんだ。この魔核は小さいからこんな威力だけど、大きな魔核だったらどうなるか予想はできるよねー? つまり、巨大なゴーレムの魔核を」
今の爆発で目が覚めたのだろう。
リーナの説明を半ば強制的に遮るよう、ナコがリーナの首もとに剣の切っ先を向けながら、
「クーラ、敵ですか?」
しかも、完全に悪い方向に勘違いしている。
「ちょわぇっ?! なにこの黒猫ちゃん、とっても怖いー。目が本気すぎてリーナ泣きそうなんだけど、クーちゃん助けてくれる?」
「クー、ちゃん? 馴れ馴れしいですね。ハッピー、状況を分析して」
《 クーラ様との会話を聞いていましタガ、敵意のない可能性が大かと思われマス 》
「了解、ありがとう」
「えぇーっ! なにを了解して剣をさらに近付けたの? あと数ミリ進んだらもう危ない予感、どこか琴線に触れちゃったー?」
本気で殺りそうな気がするので、僕は慌ててナコを後ろから抱きとめる。
「ナコ、落ち着いて。彼女は――リーナは僕たちに協力してくれるって言ってるんだ。ハッピーの言う通り敵なんかじゃない」
「クーラがそういうなら我慢します」
「ニュアンスおかしいよね? 我慢することでもないよね? クーちゃん、飼い主さんならリーナに噛み付かないようちゃんと見張っててよー」
リーナが怯え混じりに涙目で言う。
「あ、それで話の続きなんだけどさー、巨大なゴーレムを倒して魔核を集めちゃおうって話ね」
「切り替えが早い! 理屈は理解できたけど、今の着火ってどうやったの?」
「リーナのスキル"パイロキネシス"だよ、視界に入るものを燃やすことができるの。リーナのジョブは『超能力者』だからねー。微妙で絶妙な効果を持つスキルが多いんだ。指パッチンは演出的に格好良いからやっただけー」
超能力者。
指パッチンの件はスルーするとして、まさかのジョブに驚きを隠せなかった。
ここまで遭遇率が高いと類は友を呼ぶとでもいうべきか、同じユニーク職である。
……出会ったばかりの僕たちに、自分のジョブを打ち明けたリーナ。
信じてみようと思った。
正直なところ、リーナの提案以外に現状選択肢はない。
どんな障害があろうと引き返すことは不可能、僕たちは前に進むしかないのだ。
リーナは僕とナコを交互に見やりながら、
「きひひ。それに同じユニーク職だから親近感バリバリ湧くやつー」
「参ったな。そこまで把握していたのか」
「リーナのスキル"透視"だよ、色々なものが透けて見えるの。触手に魔法少女の組み合わせとか妄想掻き立てられるよねー」
「触手に魔法少女で妄想、ですか?」
不思議そうに首を傾げるナコ、リーナは悪戯気にニヤニヤと笑い、
「ウブな黒猫ちゃんに教えてあげる。魔法少女はねー、触手に縛られてイタズラされるのがデフォなんだ。身体の隅から隅までまさぐられて、悔しい! でも気持ちいい! ってなっちゃうの。クーちゃんも常日頃から妄想全開にしてるはずだよー」
「クーラが、私にイタズラっ?!」
「僕も男だからそっちの分野は多少心得あるけど、ナコでそういった妄想をしたことはない。デフォなんて偏った知識与えないで。リーナ、ナコは小学生だよ?」
「うわぉ、ロリっとした属性まで加わっちゃったねー」
「クーラが、私の身体を触手でっ?!」
「属性って、リーナ結構詳しいのかな?」
僕はなんとなく聞き返す。リーナは数秒沈黙した後、
「BLも好きですし同人誌も好きですし、一人称リーナでアラサーですけど問題とかあります? あ、この世界に来る前はブラック会社で毎日汗水流して働いていました。癒やしは家でマッスル勇太くん人形と妄想念話することです」
「急に口調変えないでよっ! 年齢まで聞いてないでしょ?!」
「独り身のOL舐めるなよゴラァっ!」
「……クーラだったら、気持ちいいってなるのかな」
「リーナさん、ナコさん。一回だけ深呼吸してもらってもいいですか?」
会話の情報が混雑しすぎである。
僕とリーナの話の合間合間に、ナコはなにを考えていたのか。顔を上気させながら棒立ちしている。
リーナは紅茶を一啜り、どうやら落ち着いたようで、
「ふふぅぃー。今の話の中で気になったことが一つあるんだけどさー、クーちゃんが男ってどういうことなの?」
「ああ、言葉の通りだよ。僕の中身は男なんだ」
物の弾みのカミングアウトとなったが、隠すことでもない。
僕はナコに話した時と同様、リーナに経緯を説明する。
僕の話を聞き終わるや否や、リーナが腹を抱えて笑い出した。
「く、きひ、くふふ。そ、ぶふっ、そんなパターンあるの? この場合ってある意味新種のふたなりになるのかなー?」
「リーナ、これ以上ナコにその手の話はやめておこう」
「ふたなりってなんですか?」
「ほら、興味持っちゃったじゃんっ!」
「ウブな黒猫ちゃんに教えてあげる。ふたなりっていうのはね」
賑やかに、夜が更けていく。
「ふふふーん。リーナにはとっておきの秘策があるんだなー」
リーナがアイテムボックスから赤い塊を取り出し頭上に投げる。
「ゴーレムの、魔核?」
「これをねー、こうするんだよ」
リーナがパチっと指を鳴らすと、魔核が燃え上がり爆発した。
小さな花火くらいの火力であったが、リーナの言わんとしていることが――なんとなくではあるが想像できた。
「本体からはずれた魔核はね、高い熱に反応して爆発するんだ。この魔核は小さいからこんな威力だけど、大きな魔核だったらどうなるか予想はできるよねー? つまり、巨大なゴーレムの魔核を」
今の爆発で目が覚めたのだろう。
リーナの説明を半ば強制的に遮るよう、ナコがリーナの首もとに剣の切っ先を向けながら、
「クーラ、敵ですか?」
しかも、完全に悪い方向に勘違いしている。
「ちょわぇっ?! なにこの黒猫ちゃん、とっても怖いー。目が本気すぎてリーナ泣きそうなんだけど、クーちゃん助けてくれる?」
「クー、ちゃん? 馴れ馴れしいですね。ハッピー、状況を分析して」
《 クーラ様との会話を聞いていましタガ、敵意のない可能性が大かと思われマス 》
「了解、ありがとう」
「えぇーっ! なにを了解して剣をさらに近付けたの? あと数ミリ進んだらもう危ない予感、どこか琴線に触れちゃったー?」
本気で殺りそうな気がするので、僕は慌ててナコを後ろから抱きとめる。
「ナコ、落ち着いて。彼女は――リーナは僕たちに協力してくれるって言ってるんだ。ハッピーの言う通り敵なんかじゃない」
「クーラがそういうなら我慢します」
「ニュアンスおかしいよね? 我慢することでもないよね? クーちゃん、飼い主さんならリーナに噛み付かないようちゃんと見張っててよー」
リーナが怯え混じりに涙目で言う。
「あ、それで話の続きなんだけどさー、巨大なゴーレムを倒して魔核を集めちゃおうって話ね」
「切り替えが早い! 理屈は理解できたけど、今の着火ってどうやったの?」
「リーナのスキル"パイロキネシス"だよ、視界に入るものを燃やすことができるの。リーナのジョブは『超能力者』だからねー。微妙で絶妙な効果を持つスキルが多いんだ。指パッチンは演出的に格好良いからやっただけー」
超能力者。
指パッチンの件はスルーするとして、まさかのジョブに驚きを隠せなかった。
ここまで遭遇率が高いと類は友を呼ぶとでもいうべきか、同じユニーク職である。
……出会ったばかりの僕たちに、自分のジョブを打ち明けたリーナ。
信じてみようと思った。
正直なところ、リーナの提案以外に現状選択肢はない。
どんな障害があろうと引き返すことは不可能、僕たちは前に進むしかないのだ。
リーナは僕とナコを交互に見やりながら、
「きひひ。それに同じユニーク職だから親近感バリバリ湧くやつー」
「参ったな。そこまで把握していたのか」
「リーナのスキル"透視"だよ、色々なものが透けて見えるの。触手に魔法少女の組み合わせとか妄想掻き立てられるよねー」
「触手に魔法少女で妄想、ですか?」
不思議そうに首を傾げるナコ、リーナは悪戯気にニヤニヤと笑い、
「ウブな黒猫ちゃんに教えてあげる。魔法少女はねー、触手に縛られてイタズラされるのがデフォなんだ。身体の隅から隅までまさぐられて、悔しい! でも気持ちいい! ってなっちゃうの。クーちゃんも常日頃から妄想全開にしてるはずだよー」
「クーラが、私にイタズラっ?!」
「僕も男だからそっちの分野は多少心得あるけど、ナコでそういった妄想をしたことはない。デフォなんて偏った知識与えないで。リーナ、ナコは小学生だよ?」
「うわぉ、ロリっとした属性まで加わっちゃったねー」
「クーラが、私の身体を触手でっ?!」
「属性って、リーナ結構詳しいのかな?」
僕はなんとなく聞き返す。リーナは数秒沈黙した後、
「BLも好きですし同人誌も好きですし、一人称リーナでアラサーですけど問題とかあります? あ、この世界に来る前はブラック会社で毎日汗水流して働いていました。癒やしは家でマッスル勇太くん人形と妄想念話することです」
「急に口調変えないでよっ! 年齢まで聞いてないでしょ?!」
「独り身のOL舐めるなよゴラァっ!」
「……クーラだったら、気持ちいいってなるのかな」
「リーナさん、ナコさん。一回だけ深呼吸してもらってもいいですか?」
会話の情報が混雑しすぎである。
僕とリーナの話の合間合間に、ナコはなにを考えていたのか。顔を上気させながら棒立ちしている。
リーナは紅茶を一啜り、どうやら落ち着いたようで、
「ふふぅぃー。今の話の中で気になったことが一つあるんだけどさー、クーちゃんが男ってどういうことなの?」
「ああ、言葉の通りだよ。僕の中身は男なんだ」
物の弾みのカミングアウトとなったが、隠すことでもない。
僕はナコに話した時と同様、リーナに経緯を説明する。
僕の話を聞き終わるや否や、リーナが腹を抱えて笑い出した。
「く、きひ、くふふ。そ、ぶふっ、そんなパターンあるの? この場合ってある意味新種のふたなりになるのかなー?」
「リーナ、これ以上ナコにその手の話はやめておこう」
「ふたなりってなんですか?」
「ほら、興味持っちゃったじゃんっ!」
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賑やかに、夜が更けていく。
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