40 / 426
クエスト攻略ランクアップ編
40話 休暇 その2
しおりを挟む
「クーラ、この服どうですか?」
「可愛い」
「こっちはどうですか?」
「可愛い」
「これは?」
「もう全部可愛い」
ナコのファッションショーである。
昨日、日用品の買い物が終わってから洋服店に向かった。
ミミさんやリーナも気にしていたことだが、ナコは普段着を一着しか持っていない。
ゲームであれば、強い装備さえあれば無問題だろう。
しかし、今はもう違う――普段着は何着あってもいい。現実となんら変わりないのである。最強装備が一式あればいいじゃん、というわけにはいかないのだ。
洋服店を何軒か巡り、ナコの気に入った服をいくつか購入した。
ナコの嬉しそうな顔を見て、もっと早くに気付いていたらと後悔した。いやまあここまでの道中、買い物する余裕なんて皆無だったけどね。
だからこそ、長期滞在予定のウィンウィンでは日常だけでも、もとの世界に近付けたいと思った。
洋服店で購入する際、ナコはかなり渋っていたのだが、
「ほら、この服なんて可愛くてすっごく似合うと思うよ」
「クーラの気持ちは嬉しいのですが、散財は禁止と言ったはずです」
「違うよ。これは散財には入らない」
「お洋服一着、10万エドルと表記があるのですが」
「リーナのオススメ通り、耐性付きがメインだからね。一般的な服よりはちょっとだけ高めになっちゃうんだよ」
「私のお小遣い10年ぶんですよ」
「ギルド登録料は100年分、ホーム購入は10000年分、この二つに比べたら10年分は優しい範疇じゃないかな?」
「??? 頭がパニックになってきました」
「ほらほら。試着もできるみたいだし何着か持って行ってきなよ」
「はい、行ってきますっ!」
ナコの頭がグルグルしているのを機に、僕は間髪入れずにゴリ押しした。
お会計後、正気に戻ったナコに怒られたが後悔はしていない。
これからもナコと上手い具合に相談しつつ必要だと感じるものは取り揃えていこう。
――そして、現在に至る。
僕も部屋着を何着かピックアップ。
ホーム以外ではいつもの装備、性能重視のままを心がけるつもりだ。ただここまでの旅路で破損箇所が目立っていたので、あるアイテムを大量に購入した。
アイテムの名は『リペアストーン』、装備を初期状態まで修復してくれるという優れものだ。初期状態ということは修復=清潔さも兼ね備えているため、今後の旅の必需品になるだろう。
戦闘時に身に付ける装備は、モンスターの素材を用いているものが大半だ。
リペアストーンはモンスターの強い生存本能を刺激するもので、素材となったあともそうした自然治癒能力を活性化させるものだという。
だからこそ、装備が修復されるのだという裏設定があったようななかったような。
着る服が決定したのか、ナコが鏡の前でくるりと回る。
ミミさんにもらった服とは真逆の白いワンピース、ナコはどんな色でも似合うなぁと無意識に頬が緩んでしまう。
ナコが僕の前まで小走りで駆け寄り、
「ふふ。クーラ、どこかお出かけしませんか?」
「そうだね。今日は外食にしようか」
新しい服でお出かけ、年相応の可愛らしい要望だ。
僕は修復した装備を身に付け、予期せぬ事態が起きてもいいよう万全を期しておく。
ナコは瞬時に魔法少女に切り替え可能なため、どんな服装でも問題ないだろう。
僕たちは馴染みと化してきたマーケット街へと出向くのであった。
「可愛い」
「こっちはどうですか?」
「可愛い」
「これは?」
「もう全部可愛い」
ナコのファッションショーである。
昨日、日用品の買い物が終わってから洋服店に向かった。
ミミさんやリーナも気にしていたことだが、ナコは普段着を一着しか持っていない。
ゲームであれば、強い装備さえあれば無問題だろう。
しかし、今はもう違う――普段着は何着あってもいい。現実となんら変わりないのである。最強装備が一式あればいいじゃん、というわけにはいかないのだ。
洋服店を何軒か巡り、ナコの気に入った服をいくつか購入した。
ナコの嬉しそうな顔を見て、もっと早くに気付いていたらと後悔した。いやまあここまでの道中、買い物する余裕なんて皆無だったけどね。
だからこそ、長期滞在予定のウィンウィンでは日常だけでも、もとの世界に近付けたいと思った。
洋服店で購入する際、ナコはかなり渋っていたのだが、
「ほら、この服なんて可愛くてすっごく似合うと思うよ」
「クーラの気持ちは嬉しいのですが、散財は禁止と言ったはずです」
「違うよ。これは散財には入らない」
「お洋服一着、10万エドルと表記があるのですが」
「リーナのオススメ通り、耐性付きがメインだからね。一般的な服よりはちょっとだけ高めになっちゃうんだよ」
「私のお小遣い10年ぶんですよ」
「ギルド登録料は100年分、ホーム購入は10000年分、この二つに比べたら10年分は優しい範疇じゃないかな?」
「??? 頭がパニックになってきました」
「ほらほら。試着もできるみたいだし何着か持って行ってきなよ」
「はい、行ってきますっ!」
ナコの頭がグルグルしているのを機に、僕は間髪入れずにゴリ押しした。
お会計後、正気に戻ったナコに怒られたが後悔はしていない。
これからもナコと上手い具合に相談しつつ必要だと感じるものは取り揃えていこう。
――そして、現在に至る。
僕も部屋着を何着かピックアップ。
ホーム以外ではいつもの装備、性能重視のままを心がけるつもりだ。ただここまでの旅路で破損箇所が目立っていたので、あるアイテムを大量に購入した。
アイテムの名は『リペアストーン』、装備を初期状態まで修復してくれるという優れものだ。初期状態ということは修復=清潔さも兼ね備えているため、今後の旅の必需品になるだろう。
戦闘時に身に付ける装備は、モンスターの素材を用いているものが大半だ。
リペアストーンはモンスターの強い生存本能を刺激するもので、素材となったあともそうした自然治癒能力を活性化させるものだという。
だからこそ、装備が修復されるのだという裏設定があったようななかったような。
着る服が決定したのか、ナコが鏡の前でくるりと回る。
ミミさんにもらった服とは真逆の白いワンピース、ナコはどんな色でも似合うなぁと無意識に頬が緩んでしまう。
ナコが僕の前まで小走りで駆け寄り、
「ふふ。クーラ、どこかお出かけしませんか?」
「そうだね。今日は外食にしようか」
新しい服でお出かけ、年相応の可愛らしい要望だ。
僕は修復した装備を身に付け、予期せぬ事態が起きてもいいよう万全を期しておく。
ナコは瞬時に魔法少女に切り替え可能なため、どんな服装でも問題ないだろう。
僕たちは馴染みと化してきたマーケット街へと出向くのであった。
31
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる