42 / 426
クエスト攻略ランクアップ編
42話 鍛錬場
しおりを挟む
休暇も終盤に近付いたころ、ある一通の手紙がホームに届く。
「わぁ。クーラ、急に目の前に手紙が現れましたよ」
「マジックレター、転移魔法が込められたアイテムだったかな。ゲーム時はホーム同士の連絡用によく使っていたんだ」
もちろん、実物で見たのは初めてである。
ナコとリビングでくつろいでいる最中、不意に机の上にひらりと降ってきた。
ちょっとした面から、ファンタジーの世界なんだなぁとしみじみ感じる。
手紙の差出人は冒険所、鍛錬場が完成したとの内容が記されていた。
早速、庭側に回り確認に向かう。
バリア素材が張られた白い館、内部は天井も高く広々とした空間となっていた。
スキルの練習用ターゲットプレートも用意されており、色々と捗りそうな造りだ。
鍛錬場を見終わり出入り口をでると、見覚えのある人物が立っていた。
スキンヘッドの筋骨隆々なおじさん、相手も僕たちに気付いたのか、
「おぉんっ! 『魚々助』にいた嬢ちゃんたちじゃねえか、面白い縁だなぁこりゃあっ! 前は恥ずかしいところ見せちまったが、俺の本職はこっちなのよぉーっ! 改めてよろしくな、キローヒだ!」
魚々助とは、巨大魚とウィールを嗜んだお店のことだ。
実はその日以降も何度か伺っており、どの料理も美味しくてメニューの端から端まで制覇していたりする。
ナコはあの日以来、お酒を飲みたいとは一言も言わなくなった。
酔った翌日、妙に照れくさそうな顔をしていたので、記憶が残るタイプなのかもしれない。
「よろしくお願いします。僕はクーラ、こちらの子が」
「ナコです」
「おう、猫の嬢ちゃん! 今日は酔ってないみたいだなぁー?」
「よ、酔ってませんっ!」
狼狽えるナコ、キローヒさんは豪快に笑い飛ばしながら、
「もうすでに中は確認してくれたみたいだなっ! ここは俺の生産ギルドが受け持った案件でなぁ、気合い入れて作ったから絶対に気に入ると思うさーっ! 鍛錬場の設備についてはこれこれこうでなぁ」
キローヒさん曰く、かなりのこだわりを詰め込んだようだ。
「とまあ、こんなとこだなっ。あとで不備が見つかったらしっかり直すから安心してくれよー! それじゃ、この書類にサインだけ頼むっ!」
「ありがとうございます。とても丁寧な造りで気に入りました」
僕はサインをし、キローヒさんに手渡す。
「そう言ってくれると嬉しいさーっ! 魚々助の近くに俺の店もあるから、またよかったら遊びに来てくれよっ!」
キローヒさんを見送り、僕とナコは一度ホームへと戻る。
今日は休暇の最終日、鍛錬場は明日から使用する予定だ。
無論、王都に行くという目標を忘れたわけではない。
僕はギルドメンバーと会って、当初の予定通りオフ会をする。
「クーラは皆さんに出会ったあとはどうするんですか?」
休暇中、ナコに言われた言葉だった。
今ではそこがゴールではなく、ナコと共にホームを賑やかに、そういった目標も追加されている。
だが、僕にはもう一つ思い描いている未来図があった。
それは果てしなく困難な道、オンリー・テイルの根本を覆すことになるだろう。今の僕の力では到底及ばない領域、無謀だと笑われるかもしれない。
それでもいつか心強い仲間が、ナコのように信頼できる仲間が集結した暁には、
「この世界を変えてみたい」
あの日、ファーポッシ村で――お墓の前で誓った想いを僕は忘れない。
「わぁ。クーラ、急に目の前に手紙が現れましたよ」
「マジックレター、転移魔法が込められたアイテムだったかな。ゲーム時はホーム同士の連絡用によく使っていたんだ」
もちろん、実物で見たのは初めてである。
ナコとリビングでくつろいでいる最中、不意に机の上にひらりと降ってきた。
ちょっとした面から、ファンタジーの世界なんだなぁとしみじみ感じる。
手紙の差出人は冒険所、鍛錬場が完成したとの内容が記されていた。
早速、庭側に回り確認に向かう。
バリア素材が張られた白い館、内部は天井も高く広々とした空間となっていた。
スキルの練習用ターゲットプレートも用意されており、色々と捗りそうな造りだ。
鍛錬場を見終わり出入り口をでると、見覚えのある人物が立っていた。
スキンヘッドの筋骨隆々なおじさん、相手も僕たちに気付いたのか、
「おぉんっ! 『魚々助』にいた嬢ちゃんたちじゃねえか、面白い縁だなぁこりゃあっ! 前は恥ずかしいところ見せちまったが、俺の本職はこっちなのよぉーっ! 改めてよろしくな、キローヒだ!」
魚々助とは、巨大魚とウィールを嗜んだお店のことだ。
実はその日以降も何度か伺っており、どの料理も美味しくてメニューの端から端まで制覇していたりする。
ナコはあの日以来、お酒を飲みたいとは一言も言わなくなった。
酔った翌日、妙に照れくさそうな顔をしていたので、記憶が残るタイプなのかもしれない。
「よろしくお願いします。僕はクーラ、こちらの子が」
「ナコです」
「おう、猫の嬢ちゃん! 今日は酔ってないみたいだなぁー?」
「よ、酔ってませんっ!」
狼狽えるナコ、キローヒさんは豪快に笑い飛ばしながら、
「もうすでに中は確認してくれたみたいだなっ! ここは俺の生産ギルドが受け持った案件でなぁ、気合い入れて作ったから絶対に気に入ると思うさーっ! 鍛錬場の設備についてはこれこれこうでなぁ」
キローヒさん曰く、かなりのこだわりを詰め込んだようだ。
「とまあ、こんなとこだなっ。あとで不備が見つかったらしっかり直すから安心してくれよー! それじゃ、この書類にサインだけ頼むっ!」
「ありがとうございます。とても丁寧な造りで気に入りました」
僕はサインをし、キローヒさんに手渡す。
「そう言ってくれると嬉しいさーっ! 魚々助の近くに俺の店もあるから、またよかったら遊びに来てくれよっ!」
キローヒさんを見送り、僕とナコは一度ホームへと戻る。
今日は休暇の最終日、鍛錬場は明日から使用する予定だ。
無論、王都に行くという目標を忘れたわけではない。
僕はギルドメンバーと会って、当初の予定通りオフ会をする。
「クーラは皆さんに出会ったあとはどうするんですか?」
休暇中、ナコに言われた言葉だった。
今ではそこがゴールではなく、ナコと共にホームを賑やかに、そういった目標も追加されている。
だが、僕にはもう一つ思い描いている未来図があった。
それは果てしなく困難な道、オンリー・テイルの根本を覆すことになるだろう。今の僕の力では到底及ばない領域、無謀だと笑われるかもしれない。
それでもいつか心強い仲間が、ナコのように信頼できる仲間が集結した暁には、
「この世界を変えてみたい」
あの日、ファーポッシ村で――お墓の前で誓った想いを僕は忘れない。
31
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる