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クエスト攻略ランクアップ編
48話 フラリシアの花束
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「三番街の△△×○――ここかな」
古家が並ぶ住宅街、依頼者のホームはその一角にあった。
――扉をノックする。
ナコよりもいくつか年下だろう、小さな女の子が無邪気な笑顔で僕たちを出迎えてくれた。
「初めまして、マリーです! マリーの依頼を受けてくれた冒険者さんたちですよね! 待っていましたっ!」
活発そうで明るい子だ。
ナコがマリーちゃんにフラリシアの花束を手渡す。
「……あれ? マリー、頼んだの一輪だよ? こんなにいっぱいだとお金が足りないよ」
マリーちゃんはお小遣いを貯めて依頼書をだしたのだという。
本来、この報酬金では冒険所に依頼書を受け取ってもらえない可能性が高い。
もしかすると、ユーリさんの受付時の様子から察するに――私情を挟んでクエストボードに貼ってくれたのかもしれないな。
……マリーちゃんの素直な一言。
ナコの気持ちを込めて、花束で渡したいところだが――依頼書に反していることは事実。
どう辻褄を合わせたらいいだろうか。
僕が悩んでいる最中、ナコがマリーちゃんの目線に合わせるようしゃがみ込み、
「これはね、お花畑にいた風の妖精さんからのオマケだよ」
「風の妖精さん?」
「うん。お礼は言ってきたから大丈夫」
「うわぁ、嬉しい! ありがとう!」
ナコがマリーちゃんの頭をなでる。
なんだか、いつもと雰囲気が違って――お姉さんっぽい。今の渡し方ならマリーちゃんも気にしないだろう。
僕たちはマリーちゃんから依頼書に完了のサインをしてもらう。
帰り際、ナコが何気なくマリーちゃんに尋ねた。
「マリーちゃん、そのお花は誰かにプレゼントするの?」
「うん! お母さんにプレゼントするんだ! よかったらお姉ちゃんたちもお母さんに会っていってよ!」
マリーちゃんが元気よく家を飛び出した。
「マリーちゃんのママ、お外で働いているのでしょうか」
「いや、これは」
走っていく後ろ姿。
あっちの方面は――マリーちゃんの向かう先がどこか、僕には察しがついた。
フラリシアは主に薬の調合素材に利用されるのだが、別の用途にも使うことがある。
オンリー・テイルはモンスターが普通に生息する世界、もといた世界より命の価値はとても軽い。
花が必要だったのは――こっちの『理由』だったのか。
マリーちゃんを追いかけて、追い付いた先は霊園だった。
「お母さん、遅くなっちゃってごめんね。このお花、冒険者のお姉ちゃんたちが持って来てくれたんだよ」
とあるお墓の前、マリーちゃんが話しかけている。
たくさんの人が眠る場所、マリーちゃんのお母さんもここにいるのだろう。
僕とナコは手を合わせて挨拶をする。
「マリーは元気でやってるよってお母さんに伝えるんだ!」
フラリシアは天国にいる家族に、メッセージを届ける花とも言われている。
だが、こんな世界だからこそフラリシアは市場に出回ることは少ない。今を生きる命のために、薬の調合素材として使われることが多いからだ。
マリーちゃんはフラリシアの花束をお墓の前にお供えし、
「えへへ。お花いっぱいだから、マリーの元気もいっぱいだね」
その光景を見て、ナコの目からポロポロと雫がこぼれ落ちる。
マリーちゃんの姿に、なにかを重ね合わせたのかもしれない。マリーちゃんが心配そうにナコの顔を覗き込む。
「お姉ちゃん? どこか痛いの?」
「……なんでも、ないよ。マリーちゃんの元気、いっぱい届いてると思う」
「うん! 届いてると嬉しいなっ!」
僕とナコはマリーちゃんにまたねと告げて霊園をあとにした。
「ユーリさんに完了報告をしてホームに帰ろうか」
「はい」
「きっと、ナコの優しい気持ちは伝わってるはずだよ」
「う、うぅ、わぁあああっ!」
我慢していたものが溢れ出したのか、ナコが大声で泣き叫ぶ。
僕たちが色々と背負っているように、僕たち以外の誰かも背負っているものがある。
命の軽いこの世界では日々たくさんの繋がりが理不尽に散らされ、僕たちのいる今は誰かが生きたいと願っていた一日なのかもしれない。
命がある限り、与えられた限り、決して無駄にしてはいけない。
どれだけ厳しい世界であろうとも、全力で足掻く以外に道はないのだ。
古家が並ぶ住宅街、依頼者のホームはその一角にあった。
――扉をノックする。
ナコよりもいくつか年下だろう、小さな女の子が無邪気な笑顔で僕たちを出迎えてくれた。
「初めまして、マリーです! マリーの依頼を受けてくれた冒険者さんたちですよね! 待っていましたっ!」
活発そうで明るい子だ。
ナコがマリーちゃんにフラリシアの花束を手渡す。
「……あれ? マリー、頼んだの一輪だよ? こんなにいっぱいだとお金が足りないよ」
マリーちゃんはお小遣いを貯めて依頼書をだしたのだという。
本来、この報酬金では冒険所に依頼書を受け取ってもらえない可能性が高い。
もしかすると、ユーリさんの受付時の様子から察するに――私情を挟んでクエストボードに貼ってくれたのかもしれないな。
……マリーちゃんの素直な一言。
ナコの気持ちを込めて、花束で渡したいところだが――依頼書に反していることは事実。
どう辻褄を合わせたらいいだろうか。
僕が悩んでいる最中、ナコがマリーちゃんの目線に合わせるようしゃがみ込み、
「これはね、お花畑にいた風の妖精さんからのオマケだよ」
「風の妖精さん?」
「うん。お礼は言ってきたから大丈夫」
「うわぁ、嬉しい! ありがとう!」
ナコがマリーちゃんの頭をなでる。
なんだか、いつもと雰囲気が違って――お姉さんっぽい。今の渡し方ならマリーちゃんも気にしないだろう。
僕たちはマリーちゃんから依頼書に完了のサインをしてもらう。
帰り際、ナコが何気なくマリーちゃんに尋ねた。
「マリーちゃん、そのお花は誰かにプレゼントするの?」
「うん! お母さんにプレゼントするんだ! よかったらお姉ちゃんたちもお母さんに会っていってよ!」
マリーちゃんが元気よく家を飛び出した。
「マリーちゃんのママ、お外で働いているのでしょうか」
「いや、これは」
走っていく後ろ姿。
あっちの方面は――マリーちゃんの向かう先がどこか、僕には察しがついた。
フラリシアは主に薬の調合素材に利用されるのだが、別の用途にも使うことがある。
オンリー・テイルはモンスターが普通に生息する世界、もといた世界より命の価値はとても軽い。
花が必要だったのは――こっちの『理由』だったのか。
マリーちゃんを追いかけて、追い付いた先は霊園だった。
「お母さん、遅くなっちゃってごめんね。このお花、冒険者のお姉ちゃんたちが持って来てくれたんだよ」
とあるお墓の前、マリーちゃんが話しかけている。
たくさんの人が眠る場所、マリーちゃんのお母さんもここにいるのだろう。
僕とナコは手を合わせて挨拶をする。
「マリーは元気でやってるよってお母さんに伝えるんだ!」
フラリシアは天国にいる家族に、メッセージを届ける花とも言われている。
だが、こんな世界だからこそフラリシアは市場に出回ることは少ない。今を生きる命のために、薬の調合素材として使われることが多いからだ。
マリーちゃんはフラリシアの花束をお墓の前にお供えし、
「えへへ。お花いっぱいだから、マリーの元気もいっぱいだね」
その光景を見て、ナコの目からポロポロと雫がこぼれ落ちる。
マリーちゃんの姿に、なにかを重ね合わせたのかもしれない。マリーちゃんが心配そうにナコの顔を覗き込む。
「お姉ちゃん? どこか痛いの?」
「……なんでも、ないよ。マリーちゃんの元気、いっぱい届いてると思う」
「うん! 届いてると嬉しいなっ!」
僕とナコはマリーちゃんにまたねと告げて霊園をあとにした。
「ユーリさんに完了報告をしてホームに帰ろうか」
「はい」
「きっと、ナコの優しい気持ちは伝わってるはずだよ」
「う、うぅ、わぁあああっ!」
我慢していたものが溢れ出したのか、ナコが大声で泣き叫ぶ。
僕たちが色々と背負っているように、僕たち以外の誰かも背負っているものがある。
命の軽いこの世界では日々たくさんの繋がりが理不尽に散らされ、僕たちのいる今は誰かが生きたいと願っていた一日なのかもしれない。
命がある限り、与えられた限り、決して無駄にしてはいけない。
どれだけ厳しい世界であろうとも、全力で足掻く以外に道はないのだ。
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