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クエスト攻略ランクアップ編
63話 神はさらなる試練を与える
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「デスクロックを受けた時、体内で闇が広がっていく感覚があったんです」
ナコは言う。
同じ属性同士、ナコは敏感に感じ得るものがあったのだろう。
「その闇が一杯になったら死ぬスキルだと判断しました。戦闘中私の闇で上書きを試した結果秒針を一瞬とめることができたので、ギリギリまでスカル・キラーを泳がそうと考えました」
戦っていて、性格が悪い敵だとすぐに理解したそうだ。
「死んだ私の首を確実に取りに来ると思ったんです。だから、そこを本気の一撃で迎え撃つ作戦にしました。力を溜めに溜めてチャンスを待ったんです」
口では簡単に言いつつも、どれだけの勇気と覚悟が必要だったろうか。
「心配かけてしまって、ごめんなさ」
「おかえり、ナコ」
「……クーラ」
会話の最中、僕はナコを強く抱き締める。
約束通り僕のもとに帰って来てくれた。この体温を感じ取れるという事実がとても喜ばしかった。
つい感情が赴くままに動いてしまった、ナコが息苦しいかもしれない。
「ごめん。苦しかったかな」
「いえ。もう少し、このまま」
と、ナコが僕の身体を離さない。
僕の胸もとに頬ずりをしながらパタパタと尻尾が揺らめいている。オンオフの切り替え速度にびっくり、スカル・キラーと死闘を繰り広げていた勇猛さはいずこに。
今の姿は本当に、一人の可愛らしい女の子だ。
「ふふ。クーラがいっぱい抱き締めてくれて嬉しいです」
いつまでもこうしていたいが、早いところ脱出せねばならない。
現状、第三層のモンスターは一掃されているが――時間が経過するとダンジョンのバランスを維持するため新たな個体が生まれてくる。
さすがに、ネームドが短時間で湧くことはありえないだろうが、スパイダーがまた大量に襲って来たら時間を割いてしまう。
「……ん、んんっ」
その時、背後で動く気配がした。
僕とナコは二人に駆け寄り様子を確認する。サークルドレインの効果が薄れてきたのだろう、先にサマロの目が少しずつ開いていく。
すぐに、伝えねばならないことがあった。
「サマロ、すまない。ユースさんとモッズさんが」
「……謝る必要はない、どうなったか直前の記憶くらいは残っている。ユースとモッズは死んだんだろう」
まだおぼつかない足取りで、サマロがユースさんとモッズさんに歩み寄る。
少し時間が欲しいと、二人の髪を切り取り装備の一部分を袋に入れた。遺体はそのまま置いていくと言う。担いで帰るにはリスクも伴い体力だって失う、生存しているものをメインに考えるのは当然のことだろう。
だからこそ、代わりとなるものを持って帰る。
「こいつらにも家族がいてな、せめてなにか渡してやらないといけない。冒険者だからこそ生き死には常に覚悟しているが、いざこうなると悲しいものだな」
ユースさんとモッズさんだけではない。
今ここには、その他の事切れた冒険者たちもたくさんいる。この人たちにだって家族がいたかもしれない。
だけど、全ての人に情をかけることなんてできないのだ。サマロの言葉から察するに、死んだ冒険者はダンジョンに置くのが常識なのだろう。
パンっと、サマロが自身の両頬を叩きながら立ち上がり、
「おっし! 泣き言は後回しだっ!! レイナは俺が背負っていく、何度も助けてもらって悪いが出入り口まで先導してもらってもいいか?」
僕とナコは二つ返事で引き受ける。
オーラ・ストーンの第三層、マップから察するに最短ルートで真っ直ぐ帰還したとしても――半日ほどはかかるだろう。
落ちるだけの行きとは違い、ショートカットの類は使えない。
なにごともなく、無事に帰ることができればそれでいい。だが、そんな淡い希望は一瞬にして打ち砕かれる。
第二層に上がる通路の直前、ナコがハッピーを構え――周囲を警戒する。
「……クーラ、ネームドは滅多に湧かないんですよね?」
「基本は時間経過、特殊な条件下でしか湧かないよ」
「います」
真剣な眼差しでナコが言う。
「この気配、スカル・キラーが――大量にいます」
さらなる絶望が舞い降りる。
ナコは言う。
同じ属性同士、ナコは敏感に感じ得るものがあったのだろう。
「その闇が一杯になったら死ぬスキルだと判断しました。戦闘中私の闇で上書きを試した結果秒針を一瞬とめることができたので、ギリギリまでスカル・キラーを泳がそうと考えました」
戦っていて、性格が悪い敵だとすぐに理解したそうだ。
「死んだ私の首を確実に取りに来ると思ったんです。だから、そこを本気の一撃で迎え撃つ作戦にしました。力を溜めに溜めてチャンスを待ったんです」
口では簡単に言いつつも、どれだけの勇気と覚悟が必要だったろうか。
「心配かけてしまって、ごめんなさ」
「おかえり、ナコ」
「……クーラ」
会話の最中、僕はナコを強く抱き締める。
約束通り僕のもとに帰って来てくれた。この体温を感じ取れるという事実がとても喜ばしかった。
つい感情が赴くままに動いてしまった、ナコが息苦しいかもしれない。
「ごめん。苦しかったかな」
「いえ。もう少し、このまま」
と、ナコが僕の身体を離さない。
僕の胸もとに頬ずりをしながらパタパタと尻尾が揺らめいている。オンオフの切り替え速度にびっくり、スカル・キラーと死闘を繰り広げていた勇猛さはいずこに。
今の姿は本当に、一人の可愛らしい女の子だ。
「ふふ。クーラがいっぱい抱き締めてくれて嬉しいです」
いつまでもこうしていたいが、早いところ脱出せねばならない。
現状、第三層のモンスターは一掃されているが――時間が経過するとダンジョンのバランスを維持するため新たな個体が生まれてくる。
さすがに、ネームドが短時間で湧くことはありえないだろうが、スパイダーがまた大量に襲って来たら時間を割いてしまう。
「……ん、んんっ」
その時、背後で動く気配がした。
僕とナコは二人に駆け寄り様子を確認する。サークルドレインの効果が薄れてきたのだろう、先にサマロの目が少しずつ開いていく。
すぐに、伝えねばならないことがあった。
「サマロ、すまない。ユースさんとモッズさんが」
「……謝る必要はない、どうなったか直前の記憶くらいは残っている。ユースとモッズは死んだんだろう」
まだおぼつかない足取りで、サマロがユースさんとモッズさんに歩み寄る。
少し時間が欲しいと、二人の髪を切り取り装備の一部分を袋に入れた。遺体はそのまま置いていくと言う。担いで帰るにはリスクも伴い体力だって失う、生存しているものをメインに考えるのは当然のことだろう。
だからこそ、代わりとなるものを持って帰る。
「こいつらにも家族がいてな、せめてなにか渡してやらないといけない。冒険者だからこそ生き死には常に覚悟しているが、いざこうなると悲しいものだな」
ユースさんとモッズさんだけではない。
今ここには、その他の事切れた冒険者たちもたくさんいる。この人たちにだって家族がいたかもしれない。
だけど、全ての人に情をかけることなんてできないのだ。サマロの言葉から察するに、死んだ冒険者はダンジョンに置くのが常識なのだろう。
パンっと、サマロが自身の両頬を叩きながら立ち上がり、
「おっし! 泣き言は後回しだっ!! レイナは俺が背負っていく、何度も助けてもらって悪いが出入り口まで先導してもらってもいいか?」
僕とナコは二つ返事で引き受ける。
オーラ・ストーンの第三層、マップから察するに最短ルートで真っ直ぐ帰還したとしても――半日ほどはかかるだろう。
落ちるだけの行きとは違い、ショートカットの類は使えない。
なにごともなく、無事に帰ることができればそれでいい。だが、そんな淡い希望は一瞬にして打ち砕かれる。
第二層に上がる通路の直前、ナコがハッピーを構え――周囲を警戒する。
「……クーラ、ネームドは滅多に湧かないんですよね?」
「基本は時間経過、特殊な条件下でしか湧かないよ」
「います」
真剣な眼差しでナコが言う。
「この気配、スカル・キラーが――大量にいます」
さらなる絶望が舞い降りる。
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