転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
107 / 426
最強の武者Gozaru編

107話 記憶から消えた仲間

しおりを挟む
「ゴザル、これには理由があって」
「大丈夫。なんとなく事情は理解できるわ」

 僕が皆まで言う前にゴザルが頷き返す。
 さすが、周囲と自身の状況から全てを察してくれたようだ。

「……もう、ニャンシロがキスなんて言うから驚いちゃったじゃない」

《 ええー、口と口を合わせたんだよ? キスはキスでしょ 》

「ち、違うっ!」

《 あれれ? 違うって否定する割には鬼武者さん、すっごく顔赤くない? 意識してるんじゃ――うわわ、刀納めてよ。人間って難しいなー、それじゃ我はマスターのところに帰還するから 》

 言いたいことだけ言ってニャンシロが姿を消した。

「……」
「……」

 沈黙が流れる。
 ニャンシロさぁん! どうするんだ、この空気――ギクシャクしている場合でもないので僕は話を無理やりにでも転換する。

「状態異常が治って動けるようになったとはいえ、僕たちの魔力はゼロに近い。今は大人しくして自然回復させるしか道はないだろうね」

 ゴザルも僕の意図を汲み取ってくれたのだろう。
 数秒ほど視線がうろちょろとしていたが、現状を解決するべく真剣な面持ちへと変化する。
 ゴザルが刀に手をかけながら、

「ソラ、ナコちゃんの加勢に」
「今の僕たちでは足手まといになる」

 続く言葉を制するよう僕は断言する。
 曖昧なことを言うと、ゴザルが飛び出しそうだったからだ。仲間思いが悪いとは言わないが、感情に身を任せて状況を悪化させても仕方ない。
 ここはナコを信じる――その一択だろう。
 目に見える場所、ナコとガラスティナが激しいぶつかり合いをしている。強烈な一撃の応酬に城全体が揺れ動く。
 ガラスティナの魔力は底が知れない――だが、ナコの魔力もまた底が知れないのだ。
 玉座の前にて繰り広げられる激戦、それはまるでどちらが王かを問いているかのようにも思えた。
 ゴザルが刀から手を遠ざけ、戦闘態勢を解除する。

「……ごめんなさい。待機しましょう」
「ううん。すぐにでも加勢したい気持ちはわかるよ」

 魔力の欠乏症、想像以上に厄介な症状だ。
 身体の脱力感、強制的な眠気、油断すれば一瞬で落ちそうになる。僕は意識を繋ぎ止めることに集中しながら、

「自然回復以外、魔力が回復できるものがあればいいんだけどね」
「魔力薬は効かないかしら?」
「極限に近い魔力の枯渇状態だと効果が全くなかったよ。器にヒビでも入っているように感じる」

 一本飲み干したところで笑える程度の回復しかしなかった。
 無理をしすぎた代償なのか、砂漠に水を振りかけているようだ。意識が飛ぶまでにいたらなかったのが唯一の救いだろう。

「やっぱり、ソラもそうだったのね」
「やっぱりってことは、ゴザルも身に覚えがあるんだ?」
「過去に一度だけ、ここまで魔力が枯渇した状態なんてそれ以来だわ。推測の域になるけれど、私たちには魔力を通す器官――回路みたいなものがあるのかもしれない」
「無茶振りをして、その回路がショートしてるって感じかな?」
「何度も言うけど推測よ。確実な証拠はないわ」

 どうやら、ゴザルでもわからないらしい。

「でも、ゴザルが生きていてよかった。心臓を貫かれて無事だったのがすごいよ」
「貫かれてないわよ。一瞬だけ心臓の位置を移動させたの」
「移動?」

 なにその人間離れした技。
 ゴザルが魔力をこうしてあーして筋肉をーなんて説明してくれるが僕にはまだ理解不能な世界であった。

「本当に危なかったら言うって言ったでしょ。私はまだ諦めていなかったし、私が復活するまでソラがどうにかしてくれるって信じてたわ」
「結局、どうにかならなくてナコ頼りになってるけどね」
「なに言ってるのよ。私たちは一人じゃない。ナコちゃんが来るまで耐えたということは未来に繋がるのよ」

 ゴザルは言いながら、

「あれ? ナコちゃんが来るまで?」
「どうしたの?」
「私たち、誰かを忘れていないかしら」
「……誰かを、忘れてる?」

 頭に霧がかかっている。
 誰だった? と、思ったのも束の間――突如、なにもない空間から人影が現れてガラスティナの最後の核をもぎ取った。
 僕もゴザルも、戦っているナコとガラスティナすらも、誰もが信じられない光景に目を見張る。
 現れた人物は微笑しながら、

「大事なもの、貰い受けたのです」

 僕たちは今の今まで、キャロルさんの存在が脳内から消えていたのだった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...