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王都突入編
132話 英雄と語り部
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「やれやれ。普通、魔力がなくなる寸前まで無理するかにゃあ?」
魔力の欠乏症、動けなくなった僕をニャニャンが抱っこする。
白龍の騎士が消滅したと同時、安心感からか――僕は大陸龍から落下しかけた。ニャニャンが助けてくれなかったらパラシュートなしで空へと旅立っていただろう。
「助かったよ。でも、お姫様抱っこは恥ずかしいな」
「可愛子にゃんは、お姫様抱っこと相場がお決まり」
ニャニャンが悪戯気にそう言いながら、
「……クーラにゃんは、この大陸龍に乗るのは初めてなんだっけ?」
「そうだよ。このタイミングで白龍の騎士が現れるとは思わなかった。無事に負けイベントがクリアできてホッとしたけどね」
「そうね。そうにゃあね」
と、ニャニャンは一拍置きながら、
「にゃっちはね、白龍の騎士に会うまで何周も何周も大陸龍に乗ってたの。エンカウントすることは今日の今日までなかった。クーラにゃんが乗ったタイミング、一度目でエンカウント、偶然だとは思えない――思わない」
ニャニャンは真面目な顔付きで話す。
「この世界の命運を決める、この世界を揺るがす瞬間、常にいるプレイヤー、まるでゲームの主人公みたいね。お前は英雄か、それとも英雄を傍らで見守る語り部か」
「大げさだよ。たまたまじゃないかな」
「大げさ? にゃっちは真面目、大真面目にゃあよ――ねえ、ソラにゃん」
「……いつから僕がソラって気付いてたの?」
「話した雰囲気、にゃっちが欲しい拘束のタイミング、決め手はいつも通りって言ってくれた時かにゃあ。隣にいる頼もしさ、長年一緒にゲームをプレイしていた時と同じ気持ちになったの」
「……ニャニャン」
嬉しい一言である。
白龍の騎士を早期で倒したことにより、大陸龍の怪我は特に問題なさそうだ。
飛行も少しずつ安定していき通常運転に戻っていた。
「いやー、それにしても面白いことになってるね。なんで性別が変わってるの? 大爆笑したいところだけど今は置いといたげるにゃあ」
反対方向、ゴザルがこちらに向かって歩いて来る。
「となると、こっちはゴザルにゃんなのね」
「やっぱり、ニャンだったのね」
お互い思い当たる節があったのか、すんなり受けとめ合う。
「にゃはー、今日は驚くことが多いにゃあ。女の子になったソラにゃん、中身がこんなに綺麗なゴザルにゃん。いやしかも、ちょっと待って、もしかして、天凪璃々? 超絶ファンです、サインください」
「はいはい、詳しい話はあとにしましょう。白いドラゴンは急いで撃破したけれど、どうやらあまり意味はなかったみたいね。魔壁ありのまま倒すなんて、本当にゲーム時からめちゃくちゃねあなたたち」
「にゃ? 一番の脳筋に言われたくない」
「は? 誰が脳筋なのよ」
ゲーム時から変わらず、火花を散らし合う。
ゴザルとニャニャン、別に不仲なわけではない。喧嘩するほど仲がよいといっていいものか否か――二人はよくこうした些細なことで言い合いをしていた。
大体、口上手のニャニャンが勝つのがお決まりパターンである。
「魔壁のことも忘れて一直線に突っ込んだバカと一緒にしないでほしいにゃあ」
「……ぐぅっ!」
「しかも、落ちた時の乙女らしからぬ叫び声、切れ痔でも発症したかのような声だしてたね。これにはソラにゃんもビックリ仰天、ゴザルにゃんってあんな声だすんだってドン引きしてたにゃあ」
「う、嘘っ?! やだやだっ!」
「嘘にょーん」
「世のため人のため、このクソ猫をぶった斬るわ」
「はぁん? にゃっちに勝てるつもりですかぁ?」
「……僕を間に挟んで喧嘩しないで」
飛び散る火花の真ん中、僕は涙ながらにそう懇願するのであった。
魔力の欠乏症、動けなくなった僕をニャニャンが抱っこする。
白龍の騎士が消滅したと同時、安心感からか――僕は大陸龍から落下しかけた。ニャニャンが助けてくれなかったらパラシュートなしで空へと旅立っていただろう。
「助かったよ。でも、お姫様抱っこは恥ずかしいな」
「可愛子にゃんは、お姫様抱っこと相場がお決まり」
ニャニャンが悪戯気にそう言いながら、
「……クーラにゃんは、この大陸龍に乗るのは初めてなんだっけ?」
「そうだよ。このタイミングで白龍の騎士が現れるとは思わなかった。無事に負けイベントがクリアできてホッとしたけどね」
「そうね。そうにゃあね」
と、ニャニャンは一拍置きながら、
「にゃっちはね、白龍の騎士に会うまで何周も何周も大陸龍に乗ってたの。エンカウントすることは今日の今日までなかった。クーラにゃんが乗ったタイミング、一度目でエンカウント、偶然だとは思えない――思わない」
ニャニャンは真面目な顔付きで話す。
「この世界の命運を決める、この世界を揺るがす瞬間、常にいるプレイヤー、まるでゲームの主人公みたいね。お前は英雄か、それとも英雄を傍らで見守る語り部か」
「大げさだよ。たまたまじゃないかな」
「大げさ? にゃっちは真面目、大真面目にゃあよ――ねえ、ソラにゃん」
「……いつから僕がソラって気付いてたの?」
「話した雰囲気、にゃっちが欲しい拘束のタイミング、決め手はいつも通りって言ってくれた時かにゃあ。隣にいる頼もしさ、長年一緒にゲームをプレイしていた時と同じ気持ちになったの」
「……ニャニャン」
嬉しい一言である。
白龍の騎士を早期で倒したことにより、大陸龍の怪我は特に問題なさそうだ。
飛行も少しずつ安定していき通常運転に戻っていた。
「いやー、それにしても面白いことになってるね。なんで性別が変わってるの? 大爆笑したいところだけど今は置いといたげるにゃあ」
反対方向、ゴザルがこちらに向かって歩いて来る。
「となると、こっちはゴザルにゃんなのね」
「やっぱり、ニャンだったのね」
お互い思い当たる節があったのか、すんなり受けとめ合う。
「にゃはー、今日は驚くことが多いにゃあ。女の子になったソラにゃん、中身がこんなに綺麗なゴザルにゃん。いやしかも、ちょっと待って、もしかして、天凪璃々? 超絶ファンです、サインください」
「はいはい、詳しい話はあとにしましょう。白いドラゴンは急いで撃破したけれど、どうやらあまり意味はなかったみたいね。魔壁ありのまま倒すなんて、本当にゲーム時からめちゃくちゃねあなたたち」
「にゃ? 一番の脳筋に言われたくない」
「は? 誰が脳筋なのよ」
ゲーム時から変わらず、火花を散らし合う。
ゴザルとニャニャン、別に不仲なわけではない。喧嘩するほど仲がよいといっていいものか否か――二人はよくこうした些細なことで言い合いをしていた。
大体、口上手のニャニャンが勝つのがお決まりパターンである。
「魔壁のことも忘れて一直線に突っ込んだバカと一緒にしないでほしいにゃあ」
「……ぐぅっ!」
「しかも、落ちた時の乙女らしからぬ叫び声、切れ痔でも発症したかのような声だしてたね。これにはソラにゃんもビックリ仰天、ゴザルにゃんってあんな声だすんだってドン引きしてたにゃあ」
「う、嘘っ?! やだやだっ!」
「嘘にょーん」
「世のため人のため、このクソ猫をぶった斬るわ」
「はぁん? にゃっちに勝てるつもりですかぁ?」
「……僕を間に挟んで喧嘩しないで」
飛び散る火花の真ん中、僕は涙ながらにそう懇願するのであった。
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