転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
144 / 426
王都突入編

143話 王立図書館

しおりを挟む
 腹ごしらえも終え、僕たちは王立図書館に向かう。
 ここは王都について、基本的な情報を仕入れるにはうってつけの場所だろう。
 ゲーム時の知識を土台に、さらなる肉付けをしていきたい。

 王立図書館の中はそれはもう――驚愕の一言に尽きた。ありとあらゆる書物が館内に置かれ、まるでこの空間が本で作られているのかと錯覚するほどだった。
 一体、どこから手を付ければいい? 文章に囲まれて目が回りそうである。

 とりあえず、ナコと手分けして――気になる書物があったらフリースペースで読んでみようということになった。
 ジャンル別に分類されているので、僕は『歴史』の棚を見に行く。
 その隣には『娯楽』とあり自然と視線がそっちに移った。

「……『夜の王都でエンジョイ万歳』だと?」

 な、なんて興味を引くタイトルだ。
 王都に到着したら、女の子のいる飲み屋さんに行ってみたいなと頭の片隅に置いてはいたが――いやはや、これはもうナイス運命に違いない。
 僕は王都の情報そっちのけに、夜の王都(略称)を立ち読みする。

「王都の歓楽街、心を癒やすなら『ムスカルス』がオススメ、お店がランキング別になっているのか。なになに、一番人気のコレットちゃんがナイスバディで超絶可愛い? 出会うだけで翌日は絶好調――なるほど」
「……なるほど、の続きはなんですか?」

 いつの間にか、ナコが背後にいた。

「ご、誤解なんだ」

 思わず、昼のドラマで言うような一言が飛び出る。

「なにが誤解なんですか?」
「なにも誤解じゃなかった」
「クーラが真剣に王都について勉強していると思ったら――どういうことですか? これってエッチな本ですよね」
「いや、エッチってほどではないよ?」
「……ひょ、表紙がセクシーなお姉さんです」

 ナコが頬を赤らめながら言う。
 胸もとが開いた服の女性、僕にとってはグラビアくらいの感覚だが――そうか、ナコにとっては刺激が強い部類に入るのか。
 ……エッチ、エッチね。
 いつもの僕なら素直に引き下がるところだが、あえて前に進んでみる。

「ナコ、僕は今金髪美少女ではあるけれど男だ。最近はこの姿に慣れ親しみすぎているけれど男なんだ」
「は、はい。わかっていますよ」

 勢いよく言った僕に対し、ナコが怯みながら応じる。
 僕は夜の王都、ムスカルスの美人嬢特集ページを開き――ナコに見せつける。
 僕も中身は成人した男、まだまだ興味があるお年ごろだとわかってもらうための強硬手段であった。

「セクシーなお姉さんにも興味がある。それにこれは『教育』という棚にあったんだ。王都では意外とここら辺は性教育的にオープンなのかもしれないよ」

 嘘も嘘、大嘘である。
 しかし、ウィンウィンではウィールが10歳から飲めるのだ。ナコも覚えているはずなので信じる可能性は高い。
 騙すようで申しわけないが、ナコも寛容な心を持っていただけると嬉しい。
 ナコが女性関係になると怒る理由、僕も鈍感体質なわけではなく、ナコが特別な好意を僕に向けてくれていることくらいはなんとなくわかる。
 だが、それは子供心によくある大人に対する憧れへの思い違い、ナコの好きはその一部だと僕は思っている。
 僕の壮大な嘘、ナコは目を逸らすことなく口を開き、

「だ、だったら、私が、クーラの抑えきれない部分をどうにかしますっ!」

 何故そうなる。
 まさかの、一歩たりとも引いてくれなかったという。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...