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火の都サラマン激突編
170話 悪夢のような現実
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「ニャンシロ、皆を背中に――お願いっ!」
《 マスター、我に任せてぇっ! 》
ナコがニャンシロを召喚、落ちてくる破片を足場に駆け上がる。
脱出作戦は天井から抜け出すこと、破片が一度でも直撃すれば終わりだが、ニャンシロの俊敏な動きを見る限りは安心であった。
最後の方は、なにからなにまでナコに頼り切りである。
ニャンシロの背中から、僕は眼下を見下ろす――フレイムドルフの身体が瓦礫に埋もれていく。命を賭け合うということが、当たり前となった世界――転生したてのころとは違い、僕たちはこの世界のルールに馴染んできている。
大都市の魔人、ガラスティナに匹敵するくらいの――強敵だった。
人の身でここまでの強さに迫れるということ、フレイムドルフもまたゴザルと同じく限界を超えた存在であろう。
「地上が見えてきたわよっ!」
僕たちは無事に脱出を果たす。
そして、地上にでた瞬間――待っていた光景に驚いた。通信をするか、南側の要塞に行くか、どちらかを考えていたが意味はなかったようだ。
ニャニャンはいつもと変わらぬ飄々とした顔付きにて、
「おかえり。ソラにゃん、ゴザルにゃん、ナコにゃん」
「……ニャニャン」
「ニャン、あなたに聞きたいことが」
ゴザルが勢いよく詰め寄ろうとし――僕は制止する。
この不穏な空気の中、相手の懐に自ら飛び込むのは悪手だ。一定の距離を保ちつつ、まずは話し合うのがベストだろう。
僕はゴザルの前に立ち、ニャニャンと向かい合う。
「ニャニャン、どういうことか説明してもらえるかな?」
「どういうことかは、今の状況を見たらわかるんじゃないの」
「それも含めて聞きたい」
「ソラにゃんは往生際が悪いのね」
ニャニャンの後ろに狐耳のミミモケ族、忍び装束の人物が立っていた。
「お久しぶり、クーラお姉さぁんっ! 今日はあの性癖満載のミニム族は一緒じゃないんだぁ、安心しちゃった」
リボルの傍らにいたライカという女の子である。
その隣にはホムラも――仮面の奥から、無感情な瞳で僕たちを見つめている。魅了されている可能性はあるか?
いや、精霊術師は精霊を使役するもの――操りに対しての耐性が高い。
ホムラほどのプレイヤーが、そんな安易なものにかかるとも思えなかった。
それがどういうことなのか――自分の意志に他ならない。
パチパチと、ライカは無邪気な様子で手を叩きながら、
「きゃははっ! まさか"Nightmares"のメンバーがマスターの思想に賛同してくれるとはねぇ。"Freedom"はもっともっと大きくなっちゃうよぉ」
「リボルにゃんの自由な思想、にゃっちはもともと――ゲーム時からPvP大好きっ子なのね。現実となった今、実際に人を殴る感覚って気持ちいいよね。二つ返事で乗っかるしかないのにゃあ」
ライカの言葉にニャニャンが深々と頷き返す。
《 マスター、あいつら噛み殺す? 》
「ううん。ニャンシロは一度戻って――ありがとう」
《 了解、またなにかあったら呼んでね 》
ナコがニャンシロを退かせ、ホムラの方に視線を送る。
「……ホムラお姉ちゃん、嘘だよね?」
「嘘じゃないよ。ナコちゃんもどういうことかくらい――わかるよね?」
「嘘だと言ってくださいっ!」
「うるっさいな」
ホムラが吐き捨てるように呟く。
「いつもいつも私に冷たくしてさ、自分だけ優しくしてもらえるとか、甘い考えだと思わないのかな? 与えてくれないのに、与えてもらうだけなの? 本当にいつまでたってもお子様なんだね?」
「わ、私は、そんなつもりじゃ」
「手遅れだよ、ナコちゃん」
「……っ」
ポロポロと、ナコの頬を涙が伝う。
僕はもうこれ以上喋るなという意味を込めて――ホムラを睨み付ける。ホムラはどこ吹く風といった様子で冷ややかな笑みを返してきた。
ゴザルが抜刀、3人に切っ先を向ける。
「今の発言は許せない――取り消しなさい、取り消せっ! ニャンはともかく、ホムまで一体どうしたっていうのよっ?!」
「ゴザルちゃん、私は正常だよ?」
「一回、そのふざけた脳内――確認してあげてもいいのよ」
「怖い怖い。ゴザルちゃんならやりかねないもんね」
張り詰めた空気の中、ライカが爆笑している。
「あは、きゃははっ! 面白い、面白いなぁっ!!」
「ライカにゃん、もっと面白いことしてあげようか?」
「なになにぃ?」
ニャニャンが一歩、また一歩、僕たちの方に歩み寄る。
「おあつらえ向きに3対3なのね。リボルにゃんが戻って来るまで――命を賭けたPvPでもやろうにゃあ」
《 マスター、我に任せてぇっ! 》
ナコがニャンシロを召喚、落ちてくる破片を足場に駆け上がる。
脱出作戦は天井から抜け出すこと、破片が一度でも直撃すれば終わりだが、ニャンシロの俊敏な動きを見る限りは安心であった。
最後の方は、なにからなにまでナコに頼り切りである。
ニャンシロの背中から、僕は眼下を見下ろす――フレイムドルフの身体が瓦礫に埋もれていく。命を賭け合うということが、当たり前となった世界――転生したてのころとは違い、僕たちはこの世界のルールに馴染んできている。
大都市の魔人、ガラスティナに匹敵するくらいの――強敵だった。
人の身でここまでの強さに迫れるということ、フレイムドルフもまたゴザルと同じく限界を超えた存在であろう。
「地上が見えてきたわよっ!」
僕たちは無事に脱出を果たす。
そして、地上にでた瞬間――待っていた光景に驚いた。通信をするか、南側の要塞に行くか、どちらかを考えていたが意味はなかったようだ。
ニャニャンはいつもと変わらぬ飄々とした顔付きにて、
「おかえり。ソラにゃん、ゴザルにゃん、ナコにゃん」
「……ニャニャン」
「ニャン、あなたに聞きたいことが」
ゴザルが勢いよく詰め寄ろうとし――僕は制止する。
この不穏な空気の中、相手の懐に自ら飛び込むのは悪手だ。一定の距離を保ちつつ、まずは話し合うのがベストだろう。
僕はゴザルの前に立ち、ニャニャンと向かい合う。
「ニャニャン、どういうことか説明してもらえるかな?」
「どういうことかは、今の状況を見たらわかるんじゃないの」
「それも含めて聞きたい」
「ソラにゃんは往生際が悪いのね」
ニャニャンの後ろに狐耳のミミモケ族、忍び装束の人物が立っていた。
「お久しぶり、クーラお姉さぁんっ! 今日はあの性癖満載のミニム族は一緒じゃないんだぁ、安心しちゃった」
リボルの傍らにいたライカという女の子である。
その隣にはホムラも――仮面の奥から、無感情な瞳で僕たちを見つめている。魅了されている可能性はあるか?
いや、精霊術師は精霊を使役するもの――操りに対しての耐性が高い。
ホムラほどのプレイヤーが、そんな安易なものにかかるとも思えなかった。
それがどういうことなのか――自分の意志に他ならない。
パチパチと、ライカは無邪気な様子で手を叩きながら、
「きゃははっ! まさか"Nightmares"のメンバーがマスターの思想に賛同してくれるとはねぇ。"Freedom"はもっともっと大きくなっちゃうよぉ」
「リボルにゃんの自由な思想、にゃっちはもともと――ゲーム時からPvP大好きっ子なのね。現実となった今、実際に人を殴る感覚って気持ちいいよね。二つ返事で乗っかるしかないのにゃあ」
ライカの言葉にニャニャンが深々と頷き返す。
《 マスター、あいつら噛み殺す? 》
「ううん。ニャンシロは一度戻って――ありがとう」
《 了解、またなにかあったら呼んでね 》
ナコがニャンシロを退かせ、ホムラの方に視線を送る。
「……ホムラお姉ちゃん、嘘だよね?」
「嘘じゃないよ。ナコちゃんもどういうことかくらい――わかるよね?」
「嘘だと言ってくださいっ!」
「うるっさいな」
ホムラが吐き捨てるように呟く。
「いつもいつも私に冷たくしてさ、自分だけ優しくしてもらえるとか、甘い考えだと思わないのかな? 与えてくれないのに、与えてもらうだけなの? 本当にいつまでたってもお子様なんだね?」
「わ、私は、そんなつもりじゃ」
「手遅れだよ、ナコちゃん」
「……っ」
ポロポロと、ナコの頬を涙が伝う。
僕はもうこれ以上喋るなという意味を込めて――ホムラを睨み付ける。ホムラはどこ吹く風といった様子で冷ややかな笑みを返してきた。
ゴザルが抜刀、3人に切っ先を向ける。
「今の発言は許せない――取り消しなさい、取り消せっ! ニャンはともかく、ホムまで一体どうしたっていうのよっ?!」
「ゴザルちゃん、私は正常だよ?」
「一回、そのふざけた脳内――確認してあげてもいいのよ」
「怖い怖い。ゴザルちゃんならやりかねないもんね」
張り詰めた空気の中、ライカが爆笑している。
「あは、きゃははっ! 面白い、面白いなぁっ!!」
「ライカにゃん、もっと面白いことしてあげようか?」
「なになにぃ?」
ニャニャンが一歩、また一歩、僕たちの方に歩み寄る。
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