転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
190 / 426
火の都サラマン激突編

189話 突発的なバトル

しおりを挟む
 翌日のお昼前。
 局長との情報共有は夕刻に決定、それまではサンサンの街中をライカと見て回ることになった。
 風花さんと共に、初めて来た時にも思ったが――とにかく活気がある。
 日本でいうところの――江戸時代、情緒ある街並み、立ち並ぶ店の数は大規模なお祭りかと思わせるくらいに盛況だった。
 せっかくなので、今日のお昼は街中で食べる予定である。

「クーにぃ、見てみてっ!」

 その一角、ライカが指を差す。
 なんと、そこには――『辰寿司』と書かれた、名前からして紛れもないお寿司屋さんが存在していた。
 本当になにからなにまで――日本と遜色ない。
 いくらなんでも、ここまで類似するものだろうか? もしかして、いや、そんな憶測より、今は寿司――寿司のことで頭が埋め尽くされる。
 僕は店に飛び込みたい衝動を――生唾を飲んで抑え込む。

「……ライカ、まずは商店に行こう」
「えぇー、ライカ、お腹空いたよぅ」
「同じく、僕もだよ。だけど、まずはある程度の――資金を確保できる状態を作っておきたいんだ」

 街中を見るに当たって、局長が資金をくれている。
 局長曰く、情報共有のお給金との話ではあるが、それが建前ということくらいは理解している。
 即座に散財するのは違うだろう。
 あくまで、最終手段として置いておきたいのだ。
 風花さんにオススメの商店は聞いてきた。ここで手持ちのアイテムを売り、あわよくば情報も手に入ればという算段だ。
 僕は風花さんの手書きの地図を手に、

「えっと、この通りを真っ直ぐ――川沿いの橋を渡ったところか」
「クーにぃ、見てみてぇっ! 魚がいっぱいいるよっ!」
「本当だ。鯉かな?」

 澄んでいて綺麗な川だ。
 鯉も色とりどりで、景観に見合っている。川が透き通っているだけに、煌めいているようにも見えた。
 ライカがじーっと川を眺めながら、

「美味しそうだねぇ」
「……ライカ、露店でなにか買おうか」
「いいのっ?!」
「商店での商談も時間がかかるかもしれないからね。少しくらいお腹に入れておいても問題ないよ」

 局長、ありがたくお金を使います。
 最終手段と思った矢先に忍びないが――局長もライカがお腹を空かすくらいなら、使ってくれと言うだろう。
 放っておくと、川に飛び込んで鯉を捕獲しそうで怖い。

「ライカ、なにか食べたいものある?」
「んんー、そこら中から美味しそうな匂いがして――ライカ、アレにするっ!」

 唐揚げ屋さんだった。
 バーベキューのように、串に刺した唐揚げが立ってある。めちゃくちゃ美味しそう、僕も食べたい。

「「この唐揚げ串、5本ちょうだいっ!」」

 声が重なる。
 ライカと同時に、注文をしてきたお客さんがいた。店主が困ったように今日はこれでラストなんだよと言う。
 ライカは譲る気が全くないようで、

「ライカの方が注文するの速かったぁ」
「待つのじゃ、どう考えても鈴華すずかの方が速かった」

 負けじと、もう片方のお客さん――女の子も対抗する。
 年齢はライカと同じくらい、花柄の着物を上から羽織った着こなし、活発そうな雰囲気を感じさせる。
 その反面――大きな瞳、腰まである艷やかな漆黒の髪、大和撫子を彷彿とさせるような可憐な容姿であった。
 僕は火花の散る真ん中に割って入り、

「半分個は駄目なの?」
「「奇数だからできないでしょっ?!」」

 こういうところだけは気が合うらしい。
 唐揚げ串を巡ったバトル、穏便に済まそうとした僕の意見は――即座に却下されるのであった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

処理中です...