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火の都サラマン激突編
200話 触術師として
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白鱗のドラゴンが紫色の火球を吐く。
この火球、熱を持っていない――純粋な破壊力のみのブレスだった。塔の床が円形状にめり込む。
半径3メートルくらいか――直撃したら即死は免れないだろう。
「どうした? 逃げ惑うだけか?!」
「勝つ方法を考えているんだよ」
「妾に勝つ? ふざけたことを――言うなっ!」
「……っ!」
火球を回避、塔の中を四方八方駆け回る。
中々、隙が見当たらないが――明確な狙いはあった。ドラゴンの喉もと、逆鱗に捕食で喰らいつく。
殺すわけじゃない――ゲーム時と同様であれば、逆鱗は強く刺激するだけで『スタン』を取ることが可能だ。
スタンとは文字通り――気絶である。
しかし、逆鱗に触れるとはよく言うが、ゲーム時も攻撃をミスってしまえば――ドラゴンの怒り度が上昇、全てのステータスが激的にアップするというリスクがあった。
まあ、すでに激高している状態――大差ないか。
「あとは、あの爪の間をくぐり抜けるだけだ」
くぐり抜けるだけ、か。
脳裏にゴザルが白虎と――ニャンシロと戦った時の光景が思い浮かぶ。
ゴザルはなんの躊躇いもなくニャンシロの懐に飛び込んだ。
同じ立ち位置になって――僕は理解する。
命のやり取りが介在する間、なんて勇気がいる行為だろう。
今さらながら、ゴザルのすごさに笑みがこぼれた。
「貴様、この状況下で笑うか」
「ああ、僕は今から君を倒す」
バネ状の触手を足もとに展開、一か八かの態勢を整える。
旅路で得た自身の経験、幾度となく乗り越えた死線、今の僕は転生したばかりのころの僕ではない。
自身を鼓舞するよう、僕は籠手を何度も重ね合わせる。
ゴングのように鳴り響く金属音――大都市で手に入れた古代の武器、強力な爪の攻撃にも容易く耐えた。
耐久力は実証済み、あとは信じて進むだけだ。
だが、どんな理屈や理論を並べようと全身を取り巻く恐怖を――全て消し去ることはできない。
怖いことを恥ずかしいとは思わないが、行くべき時に行かないことは違う。
踏み出さなかった一歩、それにより失ってしまうものの方が――遥かに怖いからだ。
「君が何千年の想いを僕にぶつけるというのなら、僕は触術師としてここに立つ想いを君にぶつけてみせるっ!」
加速する。
傀儡糸による強化を重ねがけ、両足が粉砕する勢いでバネ状の触手を踏み込んだ。
加速する、加速する。
触診を視神経に張り巡らせ、白鱗のドラゴンの一挙一動を的確に先読み――両爪で僕を挟み撃ち、ブレスによる追撃で全方位から仕掛けるつもりだろう。
全てを読み取り、攻撃範囲を予測する。
「死ねっ! 妾の気持ちを蔑ろにした――触術師がっ!!」
想像を遥かに超えて、白鱗のドラゴンの動きが速い。
視神経を強化したことにより、目に入る全てがスローモーションに見える。
まずい、この流れでは――直撃する。
「創造しろ、創造するんだ」
創意工夫、必ず――突破口はある。
諦めなければ終わりじゃない。ナコもゴザルもこんな死線――どんな時だって乗り越えて来た。
今この瞬間、僕は触術師として――進化するっ!
「捕食」
形振り構うな、足掻けるだけ――足掻けっ!!
「喰らえ、僕自身を糧としろ」
自らの左腕に噛み付く。
本来、捕食は生きているものを喰らうことはできない。しかし、体内に流れる血液ならばどうだ。マスターの命に等しいもの、これで強化効果――バフが獲得できないだなんて食わず嫌いはやめてくれよ。
貪欲に吸い尽くせ、余力は一撃のみでいい。
――《 執念の一撃×1 》を獲得。
僕は即座に獲得したバフを発動する。
《 執念の一撃を発動! 効果――対象を行動不能、次の一撃を必中にする 》
触手が赤く変化、先端が花びらのように咲き乱れていく。
まるで、食中植物が獲物を捕獲するかのごとく、白鱗のドラゴンに絡みついていった。
「こんな拘束、効くと思っているのかっ!」
白鱗のドラゴンが身をよじるが――微動だにしない。
執念の一撃、脳内に発動したバフの詳細が映し出される。対象を行動不能、次の一撃を必中にするとのことだった。
まさに、その名に相応しい効果である。
「……馬鹿なっ! 妾が、動けぬだとっ?!」
僕は爪から腕に飛び乗り、逆鱗まで一直線に駆け寄る。
「……っ」
僕が急所を狙っていることに気付いてか、白鱗のドラゴンが目を瞑る。
ここを力の限り殴り付ければ、スタンするだろう。
だけど、白鱗のドラゴンが言う想い――こんな解決方法で意味があるのか。
あるはずがない、あるわけがないんだ。
「喧嘩両成敗、痛み分けってことで――許してくれないかな」
ゆっくりと、僕は逆鱗に拳を置くのだった。
~あとがき~
第200話となりました。
最新までお読みいただいた方、いつも本当にありがとうございます(*´∀`*)!
もうすぐ文字数が30万文字になりそうなのですが、仮に本に換算するとまだ2巻半くらいなのだという事実に驚いています。
世の中の本を定期的にだしている作家の方は偉大すぎる…!
あとがき失礼しました、これからもよろしくお願いいたします!
この火球、熱を持っていない――純粋な破壊力のみのブレスだった。塔の床が円形状にめり込む。
半径3メートルくらいか――直撃したら即死は免れないだろう。
「どうした? 逃げ惑うだけか?!」
「勝つ方法を考えているんだよ」
「妾に勝つ? ふざけたことを――言うなっ!」
「……っ!」
火球を回避、塔の中を四方八方駆け回る。
中々、隙が見当たらないが――明確な狙いはあった。ドラゴンの喉もと、逆鱗に捕食で喰らいつく。
殺すわけじゃない――ゲーム時と同様であれば、逆鱗は強く刺激するだけで『スタン』を取ることが可能だ。
スタンとは文字通り――気絶である。
しかし、逆鱗に触れるとはよく言うが、ゲーム時も攻撃をミスってしまえば――ドラゴンの怒り度が上昇、全てのステータスが激的にアップするというリスクがあった。
まあ、すでに激高している状態――大差ないか。
「あとは、あの爪の間をくぐり抜けるだけだ」
くぐり抜けるだけ、か。
脳裏にゴザルが白虎と――ニャンシロと戦った時の光景が思い浮かぶ。
ゴザルはなんの躊躇いもなくニャンシロの懐に飛び込んだ。
同じ立ち位置になって――僕は理解する。
命のやり取りが介在する間、なんて勇気がいる行為だろう。
今さらながら、ゴザルのすごさに笑みがこぼれた。
「貴様、この状況下で笑うか」
「ああ、僕は今から君を倒す」
バネ状の触手を足もとに展開、一か八かの態勢を整える。
旅路で得た自身の経験、幾度となく乗り越えた死線、今の僕は転生したばかりのころの僕ではない。
自身を鼓舞するよう、僕は籠手を何度も重ね合わせる。
ゴングのように鳴り響く金属音――大都市で手に入れた古代の武器、強力な爪の攻撃にも容易く耐えた。
耐久力は実証済み、あとは信じて進むだけだ。
だが、どんな理屈や理論を並べようと全身を取り巻く恐怖を――全て消し去ることはできない。
怖いことを恥ずかしいとは思わないが、行くべき時に行かないことは違う。
踏み出さなかった一歩、それにより失ってしまうものの方が――遥かに怖いからだ。
「君が何千年の想いを僕にぶつけるというのなら、僕は触術師としてここに立つ想いを君にぶつけてみせるっ!」
加速する。
傀儡糸による強化を重ねがけ、両足が粉砕する勢いでバネ状の触手を踏み込んだ。
加速する、加速する。
触診を視神経に張り巡らせ、白鱗のドラゴンの一挙一動を的確に先読み――両爪で僕を挟み撃ち、ブレスによる追撃で全方位から仕掛けるつもりだろう。
全てを読み取り、攻撃範囲を予測する。
「死ねっ! 妾の気持ちを蔑ろにした――触術師がっ!!」
想像を遥かに超えて、白鱗のドラゴンの動きが速い。
視神経を強化したことにより、目に入る全てがスローモーションに見える。
まずい、この流れでは――直撃する。
「創造しろ、創造するんだ」
創意工夫、必ず――突破口はある。
諦めなければ終わりじゃない。ナコもゴザルもこんな死線――どんな時だって乗り越えて来た。
今この瞬間、僕は触術師として――進化するっ!
「捕食」
形振り構うな、足掻けるだけ――足掻けっ!!
「喰らえ、僕自身を糧としろ」
自らの左腕に噛み付く。
本来、捕食は生きているものを喰らうことはできない。しかし、体内に流れる血液ならばどうだ。マスターの命に等しいもの、これで強化効果――バフが獲得できないだなんて食わず嫌いはやめてくれよ。
貪欲に吸い尽くせ、余力は一撃のみでいい。
――《 執念の一撃×1 》を獲得。
僕は即座に獲得したバフを発動する。
《 執念の一撃を発動! 効果――対象を行動不能、次の一撃を必中にする 》
触手が赤く変化、先端が花びらのように咲き乱れていく。
まるで、食中植物が獲物を捕獲するかのごとく、白鱗のドラゴンに絡みついていった。
「こんな拘束、効くと思っているのかっ!」
白鱗のドラゴンが身をよじるが――微動だにしない。
執念の一撃、脳内に発動したバフの詳細が映し出される。対象を行動不能、次の一撃を必中にするとのことだった。
まさに、その名に相応しい効果である。
「……馬鹿なっ! 妾が、動けぬだとっ?!」
僕は爪から腕に飛び乗り、逆鱗まで一直線に駆け寄る。
「……っ」
僕が急所を狙っていることに気付いてか、白鱗のドラゴンが目を瞑る。
ここを力の限り殴り付ければ、スタンするだろう。
だけど、白鱗のドラゴンが言う想い――こんな解決方法で意味があるのか。
あるはずがない、あるわけがないんだ。
「喧嘩両成敗、痛み分けってことで――許してくれないかな」
ゆっくりと、僕は逆鱗に拳を置くのだった。
~あとがき~
第200話となりました。
最新までお読みいただいた方、いつも本当にありがとうございます(*´∀`*)!
もうすぐ文字数が30万文字になりそうなのですが、仮に本に換算するとまだ2巻半くらいなのだという事実に驚いています。
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