203 / 426
火の都サラマン激突編
202話 新たなる懸け橋
しおりを挟む
「当時、ドラゴンと大陸の民は争い合っていたのだ。日々、誰かの血が流れ――誰かが涙していた。ドラゴンとて大人数に襲われては命も散らす。いくら最強種といえど、個体数が少ないことは致命的な弱点であった」
白雪は言う。
「争いが激化していく中、ある時一人の男が妾たちの前に現れたのだ」
それが、触術師だったという。
「その男の名は、Moetaro――漢字では『萌太郎』と書くと、誇らしげな顔で教えてきたぞ」
「いやもう、絶対にプレイヤーだっ!」
やはり、過去に転生したプレイヤーはいた。
それにしても――萌太郎か。
ネタに走ったネーミング、転生したことすら運命として受け入れてそうな感がある。
「無論、妾たちは正体不明の異物など排除しようと動いた。しかし、驚くことに――萌太郎一人にドラゴンは制圧されてしまったのだ」
「萌太郎さんそんなに強かったのっ?!」
「強いなんてレベルを超越していた。妾たちは為す術もなく、拘束されて身動き一つ取れず地に落とされた」
白雪はその時の光景を思い出してか――身震いする。
触術師を極めていたものが、オンリー・テイルの世界にいた。パーティーを組まずソロ活動をメインとしていたのなら、掲示板に名前が載らない可能性も高い。
「大陸の民は今が好機と妾たちを殺そうとしたが、萌太郎がさらに大陸の民すらも拘束して言ったのだ。あの時のやつの言葉は――今でも鮮明に覚えている」
白雪は目に涙を浮かべながら、
「僕はどちらの敵でも味方でもない。今宵限りで全て終わりにしよう、大切なものを互い失い続け――その先にどんな未来が待っている。僕は触術師、君たちを繋げる懸け橋となろう、とな。萌太郎の一言に場は静まり返った。妾とて大陸の民との争いで家族や友人を失っていた、それは向こうとて同じことなのだ」
「名前のセンスの割に格好いいこと言う人なんだねぇ」
ライカが感嘆したように言う。
「萌太郎とは変な名前になるのか?」
「変というよりは、初見で笑いを取るためのネーミングな気はする」
白雪の問いに僕は答える。
「ん? もしかして、このモーエン大陸の由来って」
「貴様の察した通りだ。萌太郎がサンサンの国を作り、連なりの巨塔を作った。一緒に仲良く過ごせるようにとな。サンサンの民が食料を運ぶのは、妾たちが大陸を守護するための報酬だったのだぞ」
「そんな関係性だったのか」
「今となっては廃れたものだ。何故、食料を運ぶのか――萌太郎亡き後、その理由すらも風化しているに違いない」
「それって、深刻な問題なんじゃ――また争いが起きたりしないの?」
「大陸の民に付く意味がないと、賛成派と否定派に分かれていて面倒臭いことになっていたところだ。だが、もう今日で――その問題は解決する」
「今日で解決、する?」
「妾は連なりの巨塔の長、白雪――触術師クーラ、貴様がモーエン大陸の新たなる懸け橋となれ」
白雪は僕を真っ直ぐに見て――そう言い放つのであった。
白雪は言う。
「争いが激化していく中、ある時一人の男が妾たちの前に現れたのだ」
それが、触術師だったという。
「その男の名は、Moetaro――漢字では『萌太郎』と書くと、誇らしげな顔で教えてきたぞ」
「いやもう、絶対にプレイヤーだっ!」
やはり、過去に転生したプレイヤーはいた。
それにしても――萌太郎か。
ネタに走ったネーミング、転生したことすら運命として受け入れてそうな感がある。
「無論、妾たちは正体不明の異物など排除しようと動いた。しかし、驚くことに――萌太郎一人にドラゴンは制圧されてしまったのだ」
「萌太郎さんそんなに強かったのっ?!」
「強いなんてレベルを超越していた。妾たちは為す術もなく、拘束されて身動き一つ取れず地に落とされた」
白雪はその時の光景を思い出してか――身震いする。
触術師を極めていたものが、オンリー・テイルの世界にいた。パーティーを組まずソロ活動をメインとしていたのなら、掲示板に名前が載らない可能性も高い。
「大陸の民は今が好機と妾たちを殺そうとしたが、萌太郎がさらに大陸の民すらも拘束して言ったのだ。あの時のやつの言葉は――今でも鮮明に覚えている」
白雪は目に涙を浮かべながら、
「僕はどちらの敵でも味方でもない。今宵限りで全て終わりにしよう、大切なものを互い失い続け――その先にどんな未来が待っている。僕は触術師、君たちを繋げる懸け橋となろう、とな。萌太郎の一言に場は静まり返った。妾とて大陸の民との争いで家族や友人を失っていた、それは向こうとて同じことなのだ」
「名前のセンスの割に格好いいこと言う人なんだねぇ」
ライカが感嘆したように言う。
「萌太郎とは変な名前になるのか?」
「変というよりは、初見で笑いを取るためのネーミングな気はする」
白雪の問いに僕は答える。
「ん? もしかして、このモーエン大陸の由来って」
「貴様の察した通りだ。萌太郎がサンサンの国を作り、連なりの巨塔を作った。一緒に仲良く過ごせるようにとな。サンサンの民が食料を運ぶのは、妾たちが大陸を守護するための報酬だったのだぞ」
「そんな関係性だったのか」
「今となっては廃れたものだ。何故、食料を運ぶのか――萌太郎亡き後、その理由すらも風化しているに違いない」
「それって、深刻な問題なんじゃ――また争いが起きたりしないの?」
「大陸の民に付く意味がないと、賛成派と否定派に分かれていて面倒臭いことになっていたところだ。だが、もう今日で――その問題は解決する」
「今日で解決、する?」
「妾は連なりの巨塔の長、白雪――触術師クーラ、貴様がモーエン大陸の新たなる懸け橋となれ」
白雪は僕を真っ直ぐに見て――そう言い放つのであった。
29
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる