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火の都サラマン激突編
232話 カレアスの想い
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「俺は小さいころ――母と共に、国を追い出されたんだ」
父は先代の王、母はミミモケ族。
両者が愛し合って生まれた子がカレアスなのだが、その誕生をウィンディア・ウィンドという国は――認めなかった。
王を惑わしたという罪により、母は生まれたばかりのカレアスと共に国外追放されることになる。
先代の王はそれ以降、ミミモケ族の市民権を確立させるために奮闘するが、母と子を迎え入れるための準備が整った時は――すでに遅かった。
「父は素晴らしい人だった。二人の時は俺のことをカレアスと、母が決めた名で嬉しそうに呼んでいたよ。だが、その名は――追い出された当時を知るものからしたら、呪いでしかなかったんだ」
やむなく――公の場では、父が付けた名を名乗ることになる。
「父の付けた名が嫌いなわけじゃない。しかし、小さいころから呼ばれていた名というものは――愛おしいものだ。それが、俺の大好きだった母が付けてくれたものだとしたら尚更だろう」
「大好きだった、ですか?」
言葉のニュアンスにナコが聞き返す。
「ああ。俺の母は――この世にいない。父が俺たちを探して迎えに来た時は、母は重い病気を患い亡くなる寸前だった。父も数年前に母と同じ場所に旅立った」
「……ごめんなさい」
「気にするな、ナコ。今は天で二人仲良くやっているだろう」
その時、ライカがカレアスに駆け寄り頭をなでる。
「カレアスは強いねぇ」
「ありがとう、ライカ。頭をなでられたのは久方ぶりだ。なんだろうな、気恥ずかしくもあるが心地よさの方が勝っている」
「えへへ。何回でもなでてあげるよ」
「あっはっは。心が弱った時はまたお願いしよう」
カレアスが目を細めながら嬉しそうに言う。
「強いというよりは、強くなったと言う方が正しいかもしれないな。当時は、もっと父が早く来ていればなんてことを――何度も、何十回も、何百回も考えた。だが、いくら考えようとも死んだ人が戻るわけじゃない。俺と同じ運命を歩むものがいないよう、今を変えるために動くしかなかったんだ」
その想いが――ウィンウィンに広がっている。
この国はミミモケ族の市民権を持つものが多い。古くから根付いている制度を少しずつ取り除き、民が笑顔で過ごせる環境を目に見える範囲で構築しつつある。
「別段、俺がミミモケ族をよくしようと思うのは――血が混じっているからという理由ではないんだ」
カレアスは言う。
「ウィンディア・ウィンドという国が――住みやすくなればいい、笑顔のものが増えたらいい。俺はそういった信念のもとに動いている。種族がどうだからと、それで迫害されるような世の中なんてクソ喰らえだろう。だが、悲しいことに俺の尻尾は王として国を変えるには枷となる。今は隠し通すしかないのが世界の現状だ」
良い――王様だ。
「まだまだ、アクアニアスやストーンヴァイス――この二国では、ミミモケ族の売買は普通に行われている。このウィンディア・ウィンドですら、俺の目が届かない場所で取り引きはされているだろう」
「えー、もう片っ端から悪い人は倒していこうよっ!」
「ライカ、それができたら苦労はしない。やつら、逃げ足だけは速くてな。発覚した時にはもぬけの殻なんだ。こうなると――方法は一つしかない」
不意に、カレアスが試すような視線を僕に向ける。
その表情はまるで、次はお前の番だと言っているようだった。僕はカレアスの考えているであろうことに――真正面から応じる。
この人は僕と近い思想を持っている。
「僕は今の一件が片付いたら、世界の不条理を根本から壊したいと思っている」
その言葉に、カレアスが目を見開く。
「やはり、お前は想像以上だ。国を――飛び越えて行くか」
今ならハッキリと言える。
信頼できる仲間たちと共に、厳しい道も必ず乗り越えられる。
ここに生きて立っているということ――それこそが全てだった。
「ああ。僕はこの世界を変えてみせる」
父は先代の王、母はミミモケ族。
両者が愛し合って生まれた子がカレアスなのだが、その誕生をウィンディア・ウィンドという国は――認めなかった。
王を惑わしたという罪により、母は生まれたばかりのカレアスと共に国外追放されることになる。
先代の王はそれ以降、ミミモケ族の市民権を確立させるために奮闘するが、母と子を迎え入れるための準備が整った時は――すでに遅かった。
「父は素晴らしい人だった。二人の時は俺のことをカレアスと、母が決めた名で嬉しそうに呼んでいたよ。だが、その名は――追い出された当時を知るものからしたら、呪いでしかなかったんだ」
やむなく――公の場では、父が付けた名を名乗ることになる。
「父の付けた名が嫌いなわけじゃない。しかし、小さいころから呼ばれていた名というものは――愛おしいものだ。それが、俺の大好きだった母が付けてくれたものだとしたら尚更だろう」
「大好きだった、ですか?」
言葉のニュアンスにナコが聞き返す。
「ああ。俺の母は――この世にいない。父が俺たちを探して迎えに来た時は、母は重い病気を患い亡くなる寸前だった。父も数年前に母と同じ場所に旅立った」
「……ごめんなさい」
「気にするな、ナコ。今は天で二人仲良くやっているだろう」
その時、ライカがカレアスに駆け寄り頭をなでる。
「カレアスは強いねぇ」
「ありがとう、ライカ。頭をなでられたのは久方ぶりだ。なんだろうな、気恥ずかしくもあるが心地よさの方が勝っている」
「えへへ。何回でもなでてあげるよ」
「あっはっは。心が弱った時はまたお願いしよう」
カレアスが目を細めながら嬉しそうに言う。
「強いというよりは、強くなったと言う方が正しいかもしれないな。当時は、もっと父が早く来ていればなんてことを――何度も、何十回も、何百回も考えた。だが、いくら考えようとも死んだ人が戻るわけじゃない。俺と同じ運命を歩むものがいないよう、今を変えるために動くしかなかったんだ」
その想いが――ウィンウィンに広がっている。
この国はミミモケ族の市民権を持つものが多い。古くから根付いている制度を少しずつ取り除き、民が笑顔で過ごせる環境を目に見える範囲で構築しつつある。
「別段、俺がミミモケ族をよくしようと思うのは――血が混じっているからという理由ではないんだ」
カレアスは言う。
「ウィンディア・ウィンドという国が――住みやすくなればいい、笑顔のものが増えたらいい。俺はそういった信念のもとに動いている。種族がどうだからと、それで迫害されるような世の中なんてクソ喰らえだろう。だが、悲しいことに俺の尻尾は王として国を変えるには枷となる。今は隠し通すしかないのが世界の現状だ」
良い――王様だ。
「まだまだ、アクアニアスやストーンヴァイス――この二国では、ミミモケ族の売買は普通に行われている。このウィンディア・ウィンドですら、俺の目が届かない場所で取り引きはされているだろう」
「えー、もう片っ端から悪い人は倒していこうよっ!」
「ライカ、それができたら苦労はしない。やつら、逃げ足だけは速くてな。発覚した時にはもぬけの殻なんだ。こうなると――方法は一つしかない」
不意に、カレアスが試すような視線を僕に向ける。
その表情はまるで、次はお前の番だと言っているようだった。僕はカレアスの考えているであろうことに――真正面から応じる。
この人は僕と近い思想を持っている。
「僕は今の一件が片付いたら、世界の不条理を根本から壊したいと思っている」
その言葉に、カレアスが目を見開く。
「やはり、お前は想像以上だ。国を――飛び越えて行くか」
今ならハッキリと言える。
信頼できる仲間たちと共に、厳しい道も必ず乗り越えられる。
ここに生きて立っているということ――それこそが全てだった。
「ああ。僕はこの世界を変えてみせる」
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