転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
257 / 426
もふもふの都開国編

256話 固執する理由

しおりを挟む
「雷の刃――雷雨っ!」

 怒涛の突きの嵐が降りかかる。
 剣聖は僕を片手で抱えながらも、もう片方の手で全て防ぎ切る。ゴザルも僕に当たらないように加減はしているだろうが――それを考慮しても剣術が神がかっている。
 武器の形状から察するに、剣聖のジョブは剣士だろう。
 剣士は攻撃と防御、どちらも器用にこなすことのできる――バランスタイプのジョブである。
 一足飛び、剣聖はゴザルから距離を取り、

「ふーん。結構強いんだね」
「結構? 言ってくれるじゃない」
「攻撃に全振りの武者、私相手じゃ――相性が悪かったかもね」

 剣聖が僕を頭上高くに投げる。
 不意の動きに、ゴザルの視線が刹那――僕に移るのがわかった。
 達人同士の戰いは一秒に満たない間であっても大きな隙となる。

「がぁあっ!」
「……っ?!」

 剣士のスキル――怒号、ゴザルの意識が固定される。
 強制的に戻された視界、意図しない視野の矯正に――ゴザルの反応が遅れているのがわかった。
 スキルの創意工夫、怒号にこんな使い方があるのか。
 モンスターの注意を固定するために有用と思っていたが、人間相手に微細な意識のズレを作り出すなんて想像もしていなかった。
 その隙を、剣聖が――見逃すはずがない。

「大切な人は、目で追いかけちゃうよね」

 ゴザルの懐に潜り込み、剣の柄を押し当てる。

「すぐには殺さない。散々いたぶってあげる」

 白い光がゴザルを貫通した。
 剣士のスキル"剣衝波"――文字通り、剣から波動を放ち対象に衝撃を与えるものだ。
 ダメージは少ないが、恐ろしい点は――追加効果にある。
 対象の動きを数秒間、強制的に停止することが可能なのだ。

「極めたもの同士の戦い、まばたきすら致命傷になり得る。一秒、二秒、三秒が永遠に感じるよね? 今この瞬間、あんたは――私のサンドバックになる」

 剣聖がゴザルの顔を殴り付ける。
 続けて、腹部に――蹴りをめり込ませた。威力を殺さないよう、ゴザルの腕を抑え付けながらである。
 ゴザルが、血を吐き出す。
 白のワンピースが真っ赤に染まり、ゴザルの身体が崩れ落ち――剣聖がそれを許さず引っ張り上げる。
 追撃、顔の中心を殴り付けた。

「……っ」
「あっははっ! 声出さないんだ? 一撃一撃、魔力を込めに込めてるから――痛いなんてレベルじゃないはずだけどね」

 地獄の数秒間が終わり、剣聖がゴザルを投げ飛ばす。
 同時、僕の真下に舞い戻り――床に落下する直前キャッチした。
 剣聖は嬉しそうな声色で話しかけてくる。

「ただいまっ! あいつ、まだ意識あるんだよね。もう少しだけ待っててくれる?」
「それ以上は――やめるんだ。君がゴザルに攻撃を続けるなら、僕も黙って見過ごすわけにはいかない」
「どうしてそんなこと言うの?」
「僕はゴザルの仲間、当然のことだろう」
「私より、あいつを優先するんだ。そんな言葉――聞きたくない」

 剣聖の腕に力が入るのがわかった。

「"絶剣の紋ぜっけん もん"を付与する」

 クロスした剣の紋章が――僕の周囲に浮かび上がる。
 指定した対象を絶対防御の魔壁に包み込む。この中に入ったものは――外部からの攻撃を全て防ぐと同時、その対象も攻撃が不可能になるというスキルだ。
 使用者の魔力が続く限り、完全な隔離が続く。

「……剣聖、なんで僕に固執するんだ」
「何度も言わせないで――やっと見つけたんだ。だからこそ、邪魔するやつは例外なく消し去っていく」

 剣聖が――ゴザルに飛び掛かった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...