転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
369 / 426
エレメント正邪激闘編

365話 奇跡のツーショット

しおりを挟む
 黒い巨大なドラゴン、大陸龍の背に乗る。
 大人しそうな顔付きにつぶらな瞳、各国を巡るマスコット的な存在でもあり、その背中には百人ほど収容可能な籠が設置されていた。

 現在はギルド対抗戦の専用枠が設けられており、この時間帯に乗龍する人は間違いなく参加者であるとユーリさんが話していた。
 後藤さんは周囲を見渡しながら、

「雑魚そうなやつらばっかだな」

 ギロリ、ギロリ。
 皆の視線が――後藤さんに集中したのがわかった。明らかに、血の気の多そうな連中が大量に乗っている。
 今の一言でヘイトマックスか、僕は一瞬仲間であることを後悔する。
 いやいや、後藤さんには作戦があるのだろう。

「後藤さん、プレイヤーを炙り出そうとしているんだね」
「あぁ? なにわけのわからねえこと言ってやがる。普通に雑魚に見えるからそう言っただけだ」

 後藤さんは懐から煙草を取り出し、

「情報収集の意味なかったかもしれねえな」
「後藤は声が大きいの。特に悪気なく本心からそう言っているの」

 勘弁してぇっ!
 イリスが補足するが、まるで補足になっていない。
 後藤さんは景色を見ながら、ゆっくりと口から煙を吐く。なんというか、マイペースなお方としか言いようがなかった。
 というか、この世界に――煙草ってあったんだ。

「クーラ、お前も吸うか?」
「実は、人生で一度も吸ったことがないんだ」
「それなら、今さら味を覚える必要はねえな」
「意外だね。無理やり吸えって言われるのかと思ったよ」
「ひゃはは、俺にどんなイメージ持ってやがんだ。こんなもんは個人の嗜み、誰かに強制されるもんじゃねえよ」

 後藤さんは付け加えて、

「まっ、ただ一つ言えるのは――雲を見ながら吸うのは気持ちがいい。俺のくだらねえ持論だがな」
「後藤、一日3本までなの」
「はいはい。残り2本な」

 なんだか、イリスの方が保護者に見える。

「ふふ。イリスさん、後藤さんには遠慮がないですね」

 同感、僕はナコに頷き返す。
 その時、今の会話を耳にしてか――イリスがてちてちと、僕とナコの真ん中に歩み寄って来る。

「ナコ、イリスのことはイリスと呼んでいいの」
「え? い、イリス、ですか」
「わふわふ。犬耳と猫耳は仲良しさんなの」

 イリスがナコに飛び付く。
 どえぇー、なにこの愛らしい光景っ? 黒白の可憐なコラボレーション、ナコとイリスのツーショット、あまりの破壊力に目ん玉飛び出るかと思った。
 不意に、後藤さんがガンっと柵を殴り付け、

「ちっ! なんでカメラ機能がねえんだっ!?」
「……後藤さん?」
「後藤さん、じゃねえっ! クーラ、お前はなにも思わねえのかっ?! こんな奇跡のショット、ゲーム時だったら絶対に撮ってただろうがっ!」

 後藤さんとは、仲良くなれそうな気がした。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...