1 / 3
半月の少女
しおりを挟む
中年の太った男は部屋で目を覚ました。
狭くるしい部屋だが、妙に三日月が明るい。
「起きて、私も忙しいのよ」
長身の少女が言った。
月あかりを身に受けて、なかなかに魅力的だ。
「なんだお前は」
男は彼女を見上げていた。
それは、三日月のように鋭利な影を伴った長身の少女だった。
何やら尻尾がついているようだ。
長身の少女は、何やら旨そうに液体の入った瓶に口をつけて中身を飲んでいるが、未成年なのに酒だろうか。
「三つ願いを言ってちょうだい。なんでも叶えるわ」 長身の少女は言った。
「三つの願い・・・? ははん、さては三つ目を頼むと魂を取られるんだろう?」
太った男にはピンと来た。ショートショートでよくある話しだ。
「察しがいいわね」 長身の少女は笑い、瓶の中身をクイと飲む。
「この悪魔め」 太った男は言う。
「私をなんと呼ぼうと自由。それに二つ目までで止めておけばいいだけよ。ただし、『願い事を増やせ』ってのはナシなの。”月の決まり”でね」
「ううむ、困ったな」
そう願おうと思っていたのだ。
「さあ、私もあまり時間が無い。無いならもう行くわ・・・」
太った男はうんうんと唸っていた。例え悪魔だろうと、こんなチャンスは二度と来ない。
「待ってくれ! 分かった……金だ! 金をうんと沢山くれ」
太った男は叫んでいた。
ともかく金があって困ることはない。
長身の少女はにやりと笑った。
「はい」
狭苦しい部屋の天井から、大量の札束がどさどさと落ちてきて、部屋一面を覆いつくしていた。
「うわあああ!」
部屋が札束で埋まり、このままでは窒息で死ぬ。
「助けてくれ!」
太った男は叫んだ。
「よし、『助ける』ね」
長身の少女はそう言うと、太った男の手を掴んだままで天井を突き破って空高くまで舞い上がった。
隣に三日月が見える程の高さだ。
太った男はあまりの恐怖に叫んでいた。
「降ろしてくれ!」
「よし、分かったわ」
長身の少女は手を離した。
「あ」
太った男は間の抜けた声を出して落下していく。
「うわああああ! 助けて・・・」
ぐちゃり。
太った男は地面で潰れた。
彼からは、茶色いもやのようなものが出てきて、長身の少女の持つ瓶に溜まっていく。
長身の少女は、三日月の下で薄く笑った。
「降ろしてあげた。これで三つの願いを叶えたわ・・・」
長身の少女が持っていたビンの中に、茶色い液体が溜まった。
「たっぷりと魂を貰ったわ。所詮、人間なんぞいくら考えようが、目先のことにしか頭がいかないものね」
長身の少女はそう言い、旨そうに魂を一口飲んで月へと帰っていった。
狭くるしい部屋だが、妙に三日月が明るい。
「起きて、私も忙しいのよ」
長身の少女が言った。
月あかりを身に受けて、なかなかに魅力的だ。
「なんだお前は」
男は彼女を見上げていた。
それは、三日月のように鋭利な影を伴った長身の少女だった。
何やら尻尾がついているようだ。
長身の少女は、何やら旨そうに液体の入った瓶に口をつけて中身を飲んでいるが、未成年なのに酒だろうか。
「三つ願いを言ってちょうだい。なんでも叶えるわ」 長身の少女は言った。
「三つの願い・・・? ははん、さては三つ目を頼むと魂を取られるんだろう?」
太った男にはピンと来た。ショートショートでよくある話しだ。
「察しがいいわね」 長身の少女は笑い、瓶の中身をクイと飲む。
「この悪魔め」 太った男は言う。
「私をなんと呼ぼうと自由。それに二つ目までで止めておけばいいだけよ。ただし、『願い事を増やせ』ってのはナシなの。”月の決まり”でね」
「ううむ、困ったな」
そう願おうと思っていたのだ。
「さあ、私もあまり時間が無い。無いならもう行くわ・・・」
太った男はうんうんと唸っていた。例え悪魔だろうと、こんなチャンスは二度と来ない。
「待ってくれ! 分かった……金だ! 金をうんと沢山くれ」
太った男は叫んでいた。
ともかく金があって困ることはない。
長身の少女はにやりと笑った。
「はい」
狭苦しい部屋の天井から、大量の札束がどさどさと落ちてきて、部屋一面を覆いつくしていた。
「うわあああ!」
部屋が札束で埋まり、このままでは窒息で死ぬ。
「助けてくれ!」
太った男は叫んだ。
「よし、『助ける』ね」
長身の少女はそう言うと、太った男の手を掴んだままで天井を突き破って空高くまで舞い上がった。
隣に三日月が見える程の高さだ。
太った男はあまりの恐怖に叫んでいた。
「降ろしてくれ!」
「よし、分かったわ」
長身の少女は手を離した。
「あ」
太った男は間の抜けた声を出して落下していく。
「うわああああ! 助けて・・・」
ぐちゃり。
太った男は地面で潰れた。
彼からは、茶色いもやのようなものが出てきて、長身の少女の持つ瓶に溜まっていく。
長身の少女は、三日月の下で薄く笑った。
「降ろしてあげた。これで三つの願いを叶えたわ・・・」
長身の少女が持っていたビンの中に、茶色い液体が溜まった。
「たっぷりと魂を貰ったわ。所詮、人間なんぞいくら考えようが、目先のことにしか頭がいかないものね」
長身の少女はそう言い、旨そうに魂を一口飲んで月へと帰っていった。
2
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる