100人の天使と悪魔の三つの願い

スヒロン

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半月の少女

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中年の太った男は部屋で目を覚ました。
狭くるしい部屋だが、妙に三日月が明るい。
「起きて、私も忙しいのよ」
長身の少女が言った。
月あかりを身に受けて、なかなかに魅力的だ。
「なんだお前は」
男は彼女を見上げていた。
それは、三日月のように鋭利な影を伴った長身の少女だった。
何やら尻尾がついているようだ。
長身の少女は、何やら旨そうに液体の入った瓶に口をつけて中身を飲んでいるが、未成年なのに酒だろうか。
「三つ願いを言ってちょうだい。なんでも叶えるわ」 長身の少女は言った。
「三つの願い・・・? ははん、さては三つ目を頼むと魂を取られるんだろう?」
太った男にはピンと来た。ショートショートでよくある話しだ。

「察しがいいわね」 長身の少女は笑い、瓶の中身をクイと飲む。
「この悪魔め」 太った男は言う。
「私をなんと呼ぼうと自由。それに二つ目までで止めておけばいいだけよ。ただし、『願い事を増やせ』ってのはナシなの。”月の決まり”でね」
「ううむ、困ったな」
 そう願おうと思っていたのだ。
「さあ、私もあまり時間が無い。無いならもう行くわ・・・」
 太った男はうんうんと唸っていた。例え悪魔だろうと、こんなチャンスは二度と来ない。
「待ってくれ! 分かった……金だ! 金をうんと沢山くれ」
 太った男は叫んでいた。
 ともかく金があって困ることはない。
 長身の少女はにやりと笑った。
「はい」
 狭苦しい部屋の天井から、大量の札束がどさどさと落ちてきて、部屋一面を覆いつくしていた。
「うわあああ!」
 部屋が札束で埋まり、このままでは窒息で死ぬ。
「助けてくれ!」
 太った男は叫んだ。
「よし、『助ける』ね」
 長身の少女はそう言うと、太った男の手を掴んだままで天井を突き破って空高くまで舞い上がった。
 隣に三日月が見える程の高さだ。
 太った男はあまりの恐怖に叫んでいた。
「降ろしてくれ!」
「よし、分かったわ」
 長身の少女は手を離した。
「あ」
 太った男は間の抜けた声を出して落下していく。
「うわああああ! 助けて・・・」
 
 ぐちゃり。
 太った男は地面で潰れた。
 彼からは、茶色いもやのようなものが出てきて、長身の少女の持つ瓶に溜まっていく。

 長身の少女は、三日月の下で薄く笑った。
「降ろしてあげた。これで三つの願いを叶えたわ・・・」
 長身の少女が持っていたビンの中に、茶色い液体が溜まった。
「たっぷりと魂を貰ったわ。所詮、人間なんぞいくら考えようが、目先のことにしか頭がいかないものね」
 長身の少女はそう言い、旨そうに魂を一口飲んで月へと帰っていった。
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