自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない

蒼葉

文字の大きさ
11 / 54
第1章

間話 公爵の黒歴史

しおりを挟む
 報告によれば、ターシャとの出会い以前からになる。

 元々孤児だったターシャは貧しい暮らしに嫌気をさし、下町の飲み屋で働き始める。
 働くと言っても、裏家業(夜の相手)が主だったが、たまに表立った仕事もこなしていたらしい。
 そこへ、働く事に飽きたターシャは、度々訪れる小さな商家の跡取り息子の所へ押しかけた。
 跡取り息子はターシャを好いていたらしく、後に継ぐはずの家に住ませた。
 だが、まだ跡取りだった青年は稼ぎも少ない。
 少しの贅沢を覚えたターシャはその生活にも嫌気をさす。

 次に狙ったのは跡取り息子と、共に訪れる商会の会合に集まる商会長達。
 その中の見目麗しく、かなり資産を有する年配の一人の男をターゲットにした。
 もちろん男はターシャに落ちる。
 跡取り息子を捨て商会長に乗り換えたターシャは彼の別荘を与えられた。

 悠々自適に暮らしていたターシャの元に父親が囲っている女に会いに、息子が現れた。
 遊び相手に向いていた商会長の息子。
 頻繁に訪れてはターシャを怪しげなパーティーへと誘う。

 資産家と言っても年上の男より、若い男を好むターシャは遊び始める。
 職種は、色々な男達。
 その中で舞台俳優の者がいた。
 舞台俳優はターシャに請われ演技の指導を教える。
 ターシャの目的は、更に男をを身につける事。
 指導を受けるにつれ、ターシャはある欲を募らせた。

 ーーー貴族相手では、どこまで通じるだろうか?

 それを相談したのは勿論、商会長の息子。
 乗った息子は舞台俳優の男を巻き込んで、ターシャに本格的に男を騙す演技を教え込んだ。

 三人が狙ったのは小さな夜会。
 これには貴族は当然だが、金さえ積めば平民でも参加できる軽いもの。
 自分達も参加し、めぼしい相手を探して見つけたのが当時男爵家の跡取りだった、友人。
 友人は、貴族なだけあり、易々と近づく事ができない。
 そこで考えたのが、他国で噂される『呪術玉』だった。
 その呪術玉は意中の相手に魅了を掛けるという代物。
 少しの中毒性があり、かなりの回数使われると、抜け出せなくなる。

 それを使われた友人は籠絡され、まんまとターシャの罠にかかった。
 ターシャを囲い込んだ友人は毎回食事会に連れてくるようになる。
 当然、集まった友人達に紹介。
 その中に、私もいた。
 
 会った時、妙な感覚に陥った瞬間があった(その時既に呪術玉を使われていた)。
 それは他の友人も感じたらしい。
 会う回数が増えると、次第にターシャを影で取り合う形に発展していった。
 隠れてデートしたり、内緒で高価な贈り物をしたり。
 それらを受けながらも、公爵という肩書きを持つ私に擦り寄るターシャを拒まなかったのは、最愛の妻ティアラローズを亡くしたばかりで、隙があったのだろう。
 何の疑いもなくデートを重ね・・・これ以上は言うまい。
 黒歴史だ。

 ここまで真っ黒な女だとは思わなかった。
 改めて言おう・・・黒歴史だ。

 何枚にも渡っての報告書は、悪が物凄く詰め込まれていた。
 多少省いた部分はある。
 男爵の友人にたどり着くまでに繰り返した婚姻は、リリアローズに決して聞かせたくない内容ばかり。
 ここまでの事を平然とやってのける強靭な精神に、驚きを隠せない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

婚約破棄、国外追放しておいて、今さら戻ってきてほしいとはなんですか? 〜今さら戻るつもりなどない私は、逃げた先の隣国で溺愛される〜

木嶋隆太
恋愛
すべての女性は15歳を迎えたその日、精霊と契約を結ぶことになっていた。公爵家の長女として、第一王子と婚約関係にあった私も、その日同じように契約を結ぶため、契約の儀に参加していた。精霊学校でも優秀な成績を収めていた私は――しかし、その日、契約を結ぶことはできなかった。なぜか精霊が召喚されず、周りからは、清らかな女ではないと否定され、第一王子には婚約を破棄されてしまう。国外追放が決まり、途方に暮れていた私だったが……他国についたところで、一匹の精霊と出会う。それは、世界最高ともいわれるSランクの精霊であり、私の大逆転劇が始まる。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

処理中です...