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負けないで
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今年の一日マラソンもラスト2kmとなりました。昨日の夜7時にスタートしたランナーのお笑い芸人スザンカさんはゴールの武道館に今、今まさに到着しようとしています
MCの梅椿洋介の絶叫と、ステージ上の歌手、芸人、タレントが総出でお出迎え。
夏の風物詩とまで言われるチャリティーマラソンのエンディングロールが、テレビ画面にどアップで映し出されていく。
本山光流は星島中学校の3年生、小さい頃からスイミングスクールに通っていたため、人よりもやや水泳が上手ということくらいが自慢だ。部活動は学校に水泳部がないため、放課となるとまず帰宅する。
いつもスクールに通っている圭人と、おしゃべりをしながら帰るのが日課だ。
「昨日のチャリティーマラソン見た?」
「見た見た。スザンカね。何か感動したなあ」
「俺も。あのあとすぐにジョギングに出たよ」
「えっ俺も同じ。なぜか無性に走りたくなってさあ」
「本当にがんばる姿って人を引きつける魅力があるよね」
どうやら昨日のマラソンの話に夢中なようだ。そのとき。
バシャーン
大きな水音がした。
「光流、何か大きな音がしたんじゃない」
「あれって水の音だよ。だれか落ちたか?」
急いで音がした方へ走って行くと、そこには大きなため池があり、明らかに人が溺れ助けを求めている姿が、目に入ってきた。
「光流、だれか溺れてる、助けるぞ」
「待て、飛び込むな。それだと危険だ」
光流はとっさに圭人を止めた。なぜならたとえ泳ぎが上手でも、溺れた人を飛び込んで助けようとしようものなら引き込まれてしまう恐れが大きいからだった。
「圭人、服を脱げ。俺も脱ぐ」
そうです。脱いだ衣服をつないでロープを作ることを瞬時に思いついた。
「わかった。やる」
2人はスイミングスクールで習った救命級方法を同時に思い出し、とっさに行動に出た。
「おばあちゃんがんばって。今すぐ助けるから」
溺れてたのは老女。手足をバタバタつかせているが沈んではいない。2人は鉄の街灯に結んだ衣服のロープを、彼女に向けて投げつけた。
「おばあちゃん、つかまって」
まさに間一髪で、ロープに手が届いた。同時に光流は池に飛び込み、老女がロープに気が取られている間に、後ろに回り込み抱きかかえ、一気に岸の方へ運んできた。訓練で覚えてた通りだ。
老女は水を飲み込むこともなく、ほとんど無傷で引き上げられた。
「圭人、すぐ救急車!」
程を置かずして、救急車とパトカーがやって来た。
周りには多くの見物者が集まってきて、かなり騒然としてきている。
「あなたが救助した方ですか?事情を聞かせてください」
「あっ、はい」
警察官が、光流と圭人に事情を聞こうとしてきた。
「とにかく助かってよかったです」
何を話したか、覚えているのはそれくらいだった。
ところが、このことで2人の人生が、今後大きく舵を切ってしまおうとは、そのときの2人には、想像つくはずもなかった。
「君が本山光流君で、君が花咲圭人君ですね。私は小島警察署長の神田です。本日は救命救助のお礼として感謝状を持ってまいりました」
「えっ!」
2人にはまったく知らされていなかった。光流は別に感謝されたくて助けたわけでもなかったのに、こうなると照れくささを通り越し、迷惑にさえ感じてしまう。
ましてや校長室にはテレビ局や全国紙の新聞記者が多数詰めかけてきている。そうだ、彼らが求めもしないのに、一夜にしてヒーローに祭り上げられてしまったのだ。
表彰状、あなたは・・・・・・
こんな話は、隠そうとすればするほどあっという間に広がっていく。教室に戻った2人は、さっそく大歓迎を受ける。
「えー大変すばらしい話があります。わが3組の光流と圭人が、ため池に落ちたおばあちゃんを助けました。それも我が身を省みず水の中に飛び込んで助けました。まさにわがクラスの英雄です。なお表彰の様子は今夜の全国ニュースで流されます」
ウオーーー
地鳴りのような歓声が、クラス全体に響き渡ったが、困り果てた光流が話し出す。
「ちょっと待ってください。僕たちは何も。こんなに大騒ぎになるとは、返って混乱しています」
「何言ってんの。俺たちのヒーローじゃないか。これからも頼むよヒーロー」
クラスメイトから茶化されてると感じてしまい、光流は何か悲しい気分になっていった。
「光流、ニュース始まったわよ」
母のサツキが部屋に閉じこもった光流に声をかけるが、リビングに顔を出すことはなかった。
なんで助けた俺が、こんなに逃げ隠れしなっきゃいけないんだ。こなるんだったら助けなきゃよかった
今では怒りさえ覚えてくるが、事態はそのままでは留まってくれなかった。
ピュン、ピュン、ピュン
光流のスマホには着信メール音が引っ切りなしに鳴り続ける。
おめでとう
かっこいい、俺たちのヒーロー
中には身に覚えのないアドレスからも届いてくる。
これどうなってんだ。もういいかげんにしてくれ
光流はスマホの電源を切って、布団を頭からかぶってしまった。
よほど疲れたのだろう。そのまま眠りについて目を覚ましたのは夜中の2時だった。目を覚ました光流は、どうしてもメール内容が気になり、恐る恐る電源を入れたところ、画面に映った未開封のメール数はなんと123件。目が飛び出してしまうような数だ。さらに止せば良かったのに、メールを開いてしまう。
テレビ見たよ
なかなかのイケメン
星島中のヒーロー、ヒカル様
開いけていくうちに、そこには目を疑いたくなるような内容が飛び込んできた。
調子乗んな
何か勘違いしてんじゃない?
さすがにこれはひどい。
何でこんなこと書かれなくちゃいけないんだ
さらに動画が送りつけられていた。
彼が星中のヒーローヒカル君です。見てください。信じられますか?なんとヒーローが、交通ルール無視をしています。
そこには、光流が赤信号を無視して横断歩道を渡ってる様子が映っていた。明らかに隠し撮りだった。
母さん、大変なことになってる。いいたいどうすりゃいいんだ!
次の日、母と光流の姿は、は小島署の相談室にあった。
皮肉にも、小島署とは、今回の騒動の引き金とのはずだが。
MCの梅椿洋介の絶叫と、ステージ上の歌手、芸人、タレントが総出でお出迎え。
夏の風物詩とまで言われるチャリティーマラソンのエンディングロールが、テレビ画面にどアップで映し出されていく。
本山光流は星島中学校の3年生、小さい頃からスイミングスクールに通っていたため、人よりもやや水泳が上手ということくらいが自慢だ。部活動は学校に水泳部がないため、放課となるとまず帰宅する。
いつもスクールに通っている圭人と、おしゃべりをしながら帰るのが日課だ。
「昨日のチャリティーマラソン見た?」
「見た見た。スザンカね。何か感動したなあ」
「俺も。あのあとすぐにジョギングに出たよ」
「えっ俺も同じ。なぜか無性に走りたくなってさあ」
「本当にがんばる姿って人を引きつける魅力があるよね」
どうやら昨日のマラソンの話に夢中なようだ。そのとき。
バシャーン
大きな水音がした。
「光流、何か大きな音がしたんじゃない」
「あれって水の音だよ。だれか落ちたか?」
急いで音がした方へ走って行くと、そこには大きなため池があり、明らかに人が溺れ助けを求めている姿が、目に入ってきた。
「光流、だれか溺れてる、助けるぞ」
「待て、飛び込むな。それだと危険だ」
光流はとっさに圭人を止めた。なぜならたとえ泳ぎが上手でも、溺れた人を飛び込んで助けようとしようものなら引き込まれてしまう恐れが大きいからだった。
「圭人、服を脱げ。俺も脱ぐ」
そうです。脱いだ衣服をつないでロープを作ることを瞬時に思いついた。
「わかった。やる」
2人はスイミングスクールで習った救命級方法を同時に思い出し、とっさに行動に出た。
「おばあちゃんがんばって。今すぐ助けるから」
溺れてたのは老女。手足をバタバタつかせているが沈んではいない。2人は鉄の街灯に結んだ衣服のロープを、彼女に向けて投げつけた。
「おばあちゃん、つかまって」
まさに間一髪で、ロープに手が届いた。同時に光流は池に飛び込み、老女がロープに気が取られている間に、後ろに回り込み抱きかかえ、一気に岸の方へ運んできた。訓練で覚えてた通りだ。
老女は水を飲み込むこともなく、ほとんど無傷で引き上げられた。
「圭人、すぐ救急車!」
程を置かずして、救急車とパトカーがやって来た。
周りには多くの見物者が集まってきて、かなり騒然としてきている。
「あなたが救助した方ですか?事情を聞かせてください」
「あっ、はい」
警察官が、光流と圭人に事情を聞こうとしてきた。
「とにかく助かってよかったです」
何を話したか、覚えているのはそれくらいだった。
ところが、このことで2人の人生が、今後大きく舵を切ってしまおうとは、そのときの2人には、想像つくはずもなかった。
「君が本山光流君で、君が花咲圭人君ですね。私は小島警察署長の神田です。本日は救命救助のお礼として感謝状を持ってまいりました」
「えっ!」
2人にはまったく知らされていなかった。光流は別に感謝されたくて助けたわけでもなかったのに、こうなると照れくささを通り越し、迷惑にさえ感じてしまう。
ましてや校長室にはテレビ局や全国紙の新聞記者が多数詰めかけてきている。そうだ、彼らが求めもしないのに、一夜にしてヒーローに祭り上げられてしまったのだ。
表彰状、あなたは・・・・・・
こんな話は、隠そうとすればするほどあっという間に広がっていく。教室に戻った2人は、さっそく大歓迎を受ける。
「えー大変すばらしい話があります。わが3組の光流と圭人が、ため池に落ちたおばあちゃんを助けました。それも我が身を省みず水の中に飛び込んで助けました。まさにわがクラスの英雄です。なお表彰の様子は今夜の全国ニュースで流されます」
ウオーーー
地鳴りのような歓声が、クラス全体に響き渡ったが、困り果てた光流が話し出す。
「ちょっと待ってください。僕たちは何も。こんなに大騒ぎになるとは、返って混乱しています」
「何言ってんの。俺たちのヒーローじゃないか。これからも頼むよヒーロー」
クラスメイトから茶化されてると感じてしまい、光流は何か悲しい気分になっていった。
「光流、ニュース始まったわよ」
母のサツキが部屋に閉じこもった光流に声をかけるが、リビングに顔を出すことはなかった。
なんで助けた俺が、こんなに逃げ隠れしなっきゃいけないんだ。こなるんだったら助けなきゃよかった
今では怒りさえ覚えてくるが、事態はそのままでは留まってくれなかった。
ピュン、ピュン、ピュン
光流のスマホには着信メール音が引っ切りなしに鳴り続ける。
おめでとう
かっこいい、俺たちのヒーロー
中には身に覚えのないアドレスからも届いてくる。
これどうなってんだ。もういいかげんにしてくれ
光流はスマホの電源を切って、布団を頭からかぶってしまった。
よほど疲れたのだろう。そのまま眠りについて目を覚ましたのは夜中の2時だった。目を覚ました光流は、どうしてもメール内容が気になり、恐る恐る電源を入れたところ、画面に映った未開封のメール数はなんと123件。目が飛び出してしまうような数だ。さらに止せば良かったのに、メールを開いてしまう。
テレビ見たよ
なかなかのイケメン
星島中のヒーロー、ヒカル様
開いけていくうちに、そこには目を疑いたくなるような内容が飛び込んできた。
調子乗んな
何か勘違いしてんじゃない?
さすがにこれはひどい。
何でこんなこと書かれなくちゃいけないんだ
さらに動画が送りつけられていた。
彼が星中のヒーローヒカル君です。見てください。信じられますか?なんとヒーローが、交通ルール無視をしています。
そこには、光流が赤信号を無視して横断歩道を渡ってる様子が映っていた。明らかに隠し撮りだった。
母さん、大変なことになってる。いいたいどうすりゃいいんだ!
次の日、母と光流の姿は、は小島署の相談室にあった。
皮肉にも、小島署とは、今回の騒動の引き金とのはずだが。
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