生きづらさ

101の水輪

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生きづらさ

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 稲城邦也は中学1年生、どこにでもいるような中学生だが、よく“変わってるね”と言われてきた。

 邦也が好きなのは対戦ゲームで、時間さえあれば部屋にこもってずっとやり続ける。
「ちょっと邦也、ごはんよ。降りてらっしゃい」
 母の珠恵が声を掛けるが、反応が聞こえてこない。特に今日のような日曜日は、昼夜を問わずゲームに夢中になっている。
 よせばいいのに珠恵は、作った食事をお盆に載せ、邦也の部屋前まで運んでいくのが常となっている。
 
 ちぇ、またやられちゃった
 
 どうやら先日買ったゲーム“迷宮の謎”が、なかなかクリアできないみただ。

 あ~つまんない。だからこんなの欲しくなかったんだ。やっぱり“聖戦ケーン”が最高

  すぐに別のソフトと交換し再スタートするが、これもファーストステージすらクリアできない有様。

 どうせ最初から面白くないこと分かってたし

 一つのことに集中できず、思いのままに次々と関心が移っていく。それが邦也の性格。

 夕方になりやり疲れたのか、ようやく邦也はリビングに降りてきた。
「もうこんな時間か、母さん何で教えてくれなかったの?」
「何度もごはんだって声かけたけど、あんたが」
「だってゲームって最高じゃん」
「ゲームばっかじゃなく、少しくらい勉強しなさい」
「母さんもやってみたら?すぐにはまるから」
「そうじゃなく、時間を考えてしなさいって言ってるの。でもゲームするっていっても、最後までクリアしたことないし、だいたいあんたは」
「昨日のカレーって何で豚肉だったの?」
「またそうやってごまかす。豚肉もおしいでしょ」
「いや俺は絶対に牛肉、これからは牛肉オンリーでお願いします」
「そりゃ牛肉の方がおいしいよ、でも高いの知ってるでしょ」
「話変わるけど」
「別にいいけど、何?」
「母さんって小さいころ何になりたかった?」
「小さいときはケーキ屋さん、中学生のころは看護師かな。でもどうしたの急に?」
 前々から珠恵は、邦也がどこか別の方を見て話しているのに気づいていた。
「人と話すときって、その人の顔を見るものよ」
「分かってるって、もううるさい。でTVで物価上昇がとまらないってさ」
 ポンポンと話題を変えていく邦也に、そのときは別におかしいとは思っていなかった。
  
  邦也が通う藤が丘中学校は、市の中央部に位置するため、校区外からたくさんの生徒が通学してきている。そのため新しい友だちができたる一方で、学校生活になじめず人間関係で悩む生徒が多いという事実もある。
 邦也もその1人で、なかなか友だちができずモヤモヤした気持ちで過ごしている。
「みんな楽しそうだなあ、俺にも友だちがいれば」
 邦也の中学デビューは彼女を作ることだったが、その前に親友作りが優先となってきた。 いつも1人でいる邦也の切なる願いとなってきた。そのときだ。
「稲城君、一緒に弁当食べない?」
 誘ってくれたのは、学校内での唯一といっていい話し相手の木川伸太で、彼もこの小学校区外からの生徒だ。
「そうか、なkなか友だちできないのか」
 2人は弁当も食べずに話し込んでいる。
「そうなんだ。何人かと話したけど長続きしない」
 そこに長崎潜が通りかかったので、伸太は一緒に食べないかと声を掛けてみた。
「へえ、悩んでるんだ?まあ俺もそんなに友だち多い方じゃないけど」
 潜も加わって“どうすれば友だちが増えるか”談義が始まりました。
「稲城君はどうしてだと思う?」
「う~ん分かんない。分かってたら悩むわけないよ」
「そりゃそうか。だから聞いるんだよな。・・・あれ?稲城君、話聞いてんの?」
 せっかく伸太と潜が耳を傾けてるのに、邦也はボーッと外を見つめている。
「話してるときくらい聞いたら?そこじゃないのか、友だちできないのは」 
 邦也は急に叱られるなど想定外のことに出会うと、パニックを起こしてしまうい、無言で席を立ち歩き始めた。
「悪い、僕の言い方がきつかったよ。まあ座って」
 言われるままに、邦也は席に戻りました。
「そうじゃなく、同じところでじっとしてるのが苦手なんだ」
「そっか。落ち着きがないっていわれるだろう」
「たまにね。やっぱり俺って変かなあ?」
「変かは分かんないけど、変わってることだけは確か」
 見かねた潜が話題を変えようと、人気のユーチューバーの話を始めました。
「ものまねユーチューバーの“KINT”って知ってる?」
「ああ俺大ファン。昨日も見た」
 伸太も賛同し、そこに邦也が乗かってきた。
「ああ俺も知ってる、いいよねえKINT。でも、ものまねと言えばやっぱり“まさる”じゃない、若手NO1はまさる」
「まあまさるもいいけど・・・。さっきから気になってたんだけど、木川君のデザートってシュークリーム?おいしそうだね」
 頼みもしないのに、またもや邦也がぶち込んでくる。
「俺は杏ジェラート。シュークリームなんて甘ったるくてまるで子どもの食べ物」
「おお、子どもで悪かったな」
 伸太は急に怒り出しその場から去って行き、潜もあわてて後を追っかけた。
 そこには邦也1人が残されてしまった。

 さすがに落ち込んでしまった邦也は、学校カウンセラーに相談した。矢崎カウンセラーはその道30年以上のベテラン。
「・・・・と言うことなんです。2人とも急に出て行って、僕もどうしてかなと。先生に相談に来ました」
「そうか、よく来たね。事情は分かりました。で何でみんな離れていくと思う?」
「それが分かんないから来たんじゃないですか」
「そりゃそうだ。じゃあ今日の出来事ひとつひとつ振り返ってみよう。まず怒られたのが」
「僕がボーッとしてて聞いてないと言われたときかな?」
「そうそう、それからどうでした?」
「急に立ち歩いて落ち着きがないって言われた。別に悪気はないけど」
「次に覚えてるのは?」
「KINTのこと?何か急に不機嫌になったというか」
「そのとき、相手の話を聞こうとは思ってた?」
「そりゃそうです。でもやっぱりまさるの方が。それからシュークリームの話?」
「まさかシュークリームよりもいいものがあるって言ったんじゃないの?」
「だってどう考えたって、杏ジェラートの方がおいしいんですから」
「他に何か言った覚えはない?嫌なこととか?」
「嫌なこと。う~ん。分かんないけどシュークリームなんて甘ったるいと、あんなの子どもの食べるものって」
「なるほどそりゃ怒るよね」
 意識してなっかったことでも文字におこすと、さすがの邦也も気づいてきた。
「俺って本当に嫌な奴、あんな言い方しなきゃ良かった。もう顔を合わせられない」
「大丈夫、まだ君は気づいたんだから。これからのこと一緒に考えていきましょう」
  その日のうちに、学校から母親に連絡が入った。
「お母さんですか?明日にでも邦也君のことで学校の方でお話ししたいと思いまして」

 あなたの周りにも、こんな人はいないだろうか?
 思ったことをすぐに口に出したり、自分のことばかり話したり。またじっとしていられなかったり、場の空気が読めなかったり。
 本人の自覚がないままトラブルとなり、他人から敬遠されて初めて、世の中の生きづらさに気づくいていくのがお決まりだ。
   



        
 
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