アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
641 / 722
第2章 幼年編

642 ジェイル・フォン・ヴィヨルド

しおりを挟む


 1年ぶりにヴィヨルドに帰ってきた。
 領都ヴィンランドはいつもと変わらない活気のある街だった。

 「そんなヴィンランドに帰ってきた男。アレクは犯罪者だった‥‥」

 「やめてくれよシルフィ。変なナレーションつけるのは!」

 「アハハハハ」

 「笑いごとじゃねーわ!でもさ‥‥なんで呼び出されたんだろ?」

 「やっぱりアレクの変態がバレたんじゃない?」

 「なにそれ変態がバレたって!」

 「フフフ」

 わけ知りのシルフィが知らないわけはない。笑顔を見せながらも、その答えは教えてくれないみたいだった。

 「そして犯罪者のアレクは断頭台に上がるのだった……」

 「やめてくれよホントに!」

 「アハハハハ。そうねアレク、学園長についてきてもらったらいいわ」

 「そうだよね。わかった」







 新興国サンダー王国

 北の辺境と呼ばれる3領は、俺が生まれたヴィンサンダー領・興隆著しいヴィヨルド領・奴隷売買で名を馳せるアザリア領なんだよね。

 3領で今のヴィヨルド領を辺境と蔑むのは一部の王侯貴族だけだ。
 
 アザリアは例の件からまだまだやり直しに前途多難って噂。

 俺の故郷ヴィンサンダー領は去年の干ばつで領全体が疲弊していると聞く。それにも関わらず、重税が多くの領民を苦しめているとも。なんとかしたいけど今の俺にはどうすることもできない。



 「おおー!瓶麦酒にウイスキーかい。うれしいねえ。じゃあお土産分は弁明してあげようかなアレク君」

 「マジですか学園長!恩に着ります!」

 わはははは
 あはははは





 「シェフお久しぶりです!」

 「帝国からお帰りですか!」

 「帝国での噂も聞いておりますよ!」

 「あはははは。ただいまー」

 ロジャーのおっさんの結婚式披露宴以来だな。ご領主様のお屋敷に来るのは。







 「ご領主様、お呼びにより学園生アレクを引率して参上致しました」

 「ああサミュエル、忙しいなか悪かったね」

 そう言って執務室で顔を上げたのは、ご領主ジェイル・フォン・ヴィヨルド様だった。

 部屋には前領主ヘンドリック・フォン・ヴィヨルド様もテンプル先生もいたんだ。

 そういや前ご領主様も当代のご領主様も、ちゃんと話すのは初めてだよ。

 「ヴィヨルド学園生アレク、まかり越しました」

 「そういえばちゃんと挨拶をするのは初めてだったね。モーリスの父ジェイルだ」

 「モーリスの爺ちゃんだ」

 「よろしくお願いします」

 握手を交わしたとき、先代のヘンドリック様がなぜだがとってもうれしそうに俺を見つめていたんだ。

 「モーリスと仲良くしてくれてありがとう」

 「いえこちらこそ、ご子息様には懇意にしていただき感謝しております」

 「クックック。言葉遣いもしっかりとした農民の倅だなアレク君は」

 「あはははは」

 当然ご領主様は本当の俺の出自も知ってるんだろうな。

 「アレク君お帰り。ジンと遊んでくれてありがとうな。あとサラを救ってくれてありがとう」

 「いえテンプル先生、俺のほうこそです。ジンさんにはあそんでもらったし、サラさんには学校の面倒までぜんぶやってもらって‥‥」

 「わはははは。そうかいそうかい」

 「まずは座ってくれたまえアレク君」

 「はい。失礼します」

 和やかな雰囲気のまま、俺の1年間の帝国留学の報告をみなさんに聞いてもらったんだ。

 「アレク君、帝国で君は爵位と名誉帝都民となったんだよね?」

 「はい。畏れ多くもそのような名誉ある称号をいただきました。勝手にもらってすいません」

 「「なんと!?」」

 「君は義理がたいね」

 「ワハハハハ。そうか、そうきたか」

 ご領主様たちは嫌な顔1つせずに話を聞いてくれたよ。度量の大きなご領主様たちだな。

 「アレク君。君がいただいた爵位とその名前は知ってるよね?」

 「えっ‥‥えーっと爵位は準男爵?
 名前は‥‥なんだっけ?なんとかロイズ?あははは‥‥」

 「「君は‥‥」」

 あーご領主様たちにも生暖かい目で見られたよ。

 「アレク君、君の爵位は男爵だよ」

 「えっ?たしか準男爵かと‥‥」

 「君はロイズ帝国初の未成年武闘祭にて優勝した。そこで準男爵となり、その後の年度末帝都学園武闘祭で優勝してさらに昇格で帝国伝統の1代男爵位を得たんだよ」

 「すいません。知りませんでした」

 「「ガハハハハ」」

 先代様とテンプル先生が腹を抱えて笑ってるよ。

 「‥‥それと君の正式な名前はアレク・ヴィンロイズだよ。(まあそれすら仮だけどね)」

 「はぁ‥‥」

 「クックック。その調子ではヴィンロイズの意味は知らないね」

 「はい。あははは」

 「ヴィンは『繋がるもの』という古語。つまりはロイズ帝国皇帝に繋がるもの、ロイズ帝国の家族という意味だよ」

 「えっ!?」

 「わが領もお手本にしている中原最強のロイズ帝国皇帝の縁者という意味なんだよ。
 だからよほどの馬鹿でない限り、君に喧嘩を売る者はいないよ」

 「‥‥」

 「まあ、爵位とその名の由来を知らん者は別だがね」

 そっか。おやじや3男はそこまでしてくれてたんだ……。

 「アレク君どう思った?」

 「畏れ多いことです。
 てかそれでも俺自身はこれまでとなにも変わりません。
 ただのアレクです。 
 帝国も大好きですし、ここまで育ててくれてヴィヨルドに感謝の気持ちも大好きな気持ちもまったく変わりません」

 「そうかい。では1つ質問をしていいかな」

 「はい」

 「もし。もしヴィヨルドと帝国が戦うことになれば君はどうする?」

 「‥‥‥‥ありえません。ヴィヨルドが帝国と戦うことは絶対にありえません」

 「それはどうしてだい?」

 「中原最強の帝国と王国最強のヴィヨルドが戦えば、被害の数は計り知れません。
 しかもそれは‥‥とくにヴィヨルド領の国力が大いに下がりることになります。
 あっ。まさか‥‥?」

 「フッ。仮の話だよアレク君。君が未成年者ということをついつい忘れてしまって放言を吐いたことを詫びよう」

 「いえご領主様。俺は馬鹿ですから大人の話はわかりません。まして政治のことはさっぱり。
 でもこのヴィヨルドは俺にとって第2の故郷です。大切な仲間もできました。モーリスは俺のかけがえのない親友ですし。
 それか答えです」

 「モーリスの父としてうれしく思うよ。
 ‥‥ではヴィンサンダーとヴィヨルドが戦うことになれば?」

 「‥‥答えなければなりませんか?」

 コクコク 

 「失礼を承知で申し上げる無礼をお許しください。
 攻めてこられれば俺は俺の出身村は守ります。それがどこであっても」

 「‥‥申し分ない答えだね。わかったよ」

 「すいません」

 「私も老師から教わった古い言葉『出る杭は打たれる』を君に贈ろう。それはわが領も同じことだがね」

 「はい‥‥」

 「君の人物についてはなんの疑念も抱かないよ。
 わずか2年3年で成した君の実績と、さらに君の保証人からもね」

 「保証人‥‥ですか?」

 「ロイズ帝国に留学するにあたり、君の保証人となったのが、ヴィンサンダー領からはディル神父、モンデール神父、シスターナターシャ。
 わがヴィヨルド領からはサミュエル学園長、テンプル老師の名前があるんだよ」

 「知りませんでした‥‥」




 「なぜだろうね。アレク君、君は若いころのサミュエルによく似た雰囲気があるんだよね。だから2人は仲がいいのかもしれないね」

 一瞬。
 びっくりして学園長と目が合ったんだ。

 「さてアレク君。ここからは褒美の話をしよう」

 「褒美‥‥ですか?」

 「そうだよ。君はこの1年、離れた帝国の地からもわが領のためになることを成してくれた。戦闘靴、保険。もちろん食のあれこれもね。今後100年わが領に利をもたらすだようね」

 「いえ‥‥」

 「それとね、さっきの話だけど、わがヴィヨルド領がロイズ帝国とことを構えることは決してないよ。
 もちろん他領にまで領土拡大をするつもりもない。
 たとえ王国と決別したとしてもね。まぁそれは冗談だがね。ワハハハハ。私は頼りない存在だが、そこまで愚かではないつもりだ」

 ご領主様が帝国と喧嘩をしないと言った言葉が記憶に残ったんだ。「帝国とは」って言った言葉がね。

 「これからもわが子モーリスと仲良くしてやってくれたまえ」

 「はい」

 「さてと本題に入るかの」

 テンプル先生が言ったんだ。

 「悪魔について話をしてくれるかい?」







 


 サミュエル学園長と帰る帰途のこと。

 「「学園長(アレク君)」」

 「「びっくりしたー」」

 「まさか‥‥バレました?」

 「いや、さすがにそれはないよ」

 「ですよねー」

 「そうだ。学園長、俺こっちでも狂犬団やってもいいですか?」

 「話題の狂犬団だね。もちろんいいよ。ああ、顧問もね」

 「あざーす」

 「さて‥‥戻ってもう1度ゆっくり土産話でも聞こうかな」

 「はい学園長!」



――――――――――


 いつもご覧いただき、ありがとうございます!
 「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
 どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~

仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

忍者ですが何か?

藤城満定
ファンタジー
ダンジョンジョブ『忍者』を選んだ少年探索者が最強と呼ばれるまで。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...