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第2章 幼年編
649 無神経な人
しおりを挟む学園4年生の日常が始まってすぐのことなんだ。
教室に初めてみる顔の女子(たぶん上級生)が俺を訪ねてきたんだ。
「アレクって子はどこ?」
縦巻き髪のその女子は首元から手首、指に至るまでキラキラした宝飾品をこれでもかって身に纏っていたんだ。
くんかくんかくんか
しかも香水の匂いまでさせてるよ!
「「「うへっ!(ウーッッ!)」」」
即効。ハンスとシナモン、トールの獣人3人が鼻を押さえたよ。
「はい?俺がアレクですけど」
そう返した俺には見向きもせずに。その女子がモーリスの前で教科書のようなカーテシーをしたんだ。
「モーリス様ご機嫌麗しうございます」
「‥‥」
モーリスはそれには応えず、ただ手を上げたのみだった。
「あの‥‥俺になんか用ですか?」
「そう。あなたがアレクね」
ついさっきまでモーリスに向けて満面の笑みを浮かべていた熱のある目とは真逆。冷ややかな目線で俺に言ったんだ。
「今日の授業のあと、6年6組の教室まで来てくれるかしら?」
上から目線。完璧な上から目線の物言いだった。
「ガルルルーーッッ!」
「(やめなさいシナモン!)」
セーラがシナモンを抑えているよ。シナモンのこんか姿初めて見るな。
相手を拒絶するシナモンの姿勢。そんな姿勢と雰囲気は好ましくないものとして俺たち4年1組10傑の仲間たちにも伝播したんだ。
「何の用ですか?俺、放課後はやることがいっぱいで忙しいんですけど」
「まあ!平民の分際でなんて言い草なのかしら!?
平民は朝から晩まで働かないと食べていけないんでしょうからね!それにしても!」
6年6組の先輩女子はだんだんと勝手にヒートアップ。烈火のようにキレだしたんだ。
「いいこと!たかが平民の分際で私に意見するんじゃないことよ!
授業が終わったら直ちに私の下に馳せ参じなさい!わかったわね!」
「えーっと‥‥そもそも先輩はだれなんですか?
俺先輩のこと知らないんですけど?」
「あなたっ!」
真っ赤な顔をして俺を睨みつけてるよ。
「アレクの言うとおりだね。初対面の相手に用件があるのならば少なくとも先ずは自分から名乗るべきだ」
「モーリス様がそうおっしゃるのであれば‥‥」
今度は胸を張って。
はっきりと上から目線になった女子が自己紹介をし始めたんだ。
といっても俺も175セルテあるからさ、もう子ども扱いされないぞ!
「私は6年6組準男爵ハーバル家が長女エミリアよ」
あー法衣貴族の子どもだな。
「はぁ。俺は農民の息子、ただのアレクです」
「どうでもいいわ平民のことなんて!」
「ガルルルーーッッ!」
シナモンが明らかな唸り声を上げたんだ。
「なによあなた、ケモノの分際で!」
「シナモン!」
俺はダメだって目線で合図したよ。
「ダーリン‥‥」
シナモンの尻尾がシュンって項垂れたんだ。
「あの‥‥その準男爵の長女様がなんの用なんですか?」
「フン!あなた未成年なのにアレク工房とかいうのを主催してるそうね?」
「はい」
「私の従兄弟が王都で商会をやってるの。
あなたの工房を私の従兄弟の商会で召し抱えてあげるわ。感謝しなさい」
「「‥‥」」
「「‥‥」」
「「‥‥」」
わはははは
ワハハハハ
アハハハハ
「な、な、なによ!
なにを笑ってるのよ!
平民の分際で!
獣人の分際で!
も、もちろんモーリス様は別でございますわよ」
「えーっとエミリア嬢。こいつは‥‥」
「モーリスしーっ!やめろモーリス!」
「いやアレク、言ったほうがいいぞ。
これからはこんな事案はしょっちゅう起こるだろうからな」
そう言ったモーリスがゆっくりと話し出したんだ。
「エミリア嬢、こいつは昨年1年間ロイズ帝国に留学。多大な功績により皇帝陛下より爵位を賜った。
正式にはアレク・ヴィンロイズ。
エミリア嬢のお父上の上、男爵位だよ」
「な、なにそれ‥‥」
エミリアなんとか先輩の顔がみるみる青くなっていったんだ。
「エミリア嬢、ヴィンロイズの意味はわかるかい?」
「い、いえ‥‥」
「中原最強の一角、ロイズ帝国の皇帝の縁者という意味だよ。
はっきり言って帝国では俺のヴィヨルド家よりもはるかに格上の家名なんだよ」
「そ、そんな‥‥」
「ああ、それとね、アレク工房とアレク商会は王都の御用商会ミカサ商会の傘下‥‥というか同格だからね。
こいつはこんな変態だけどあまり下に見ないほうがいいよ。
でないとその従兄弟の商会‥‥潰れるよ?」
「は、はい‥‥」
真っ青な顔をしたエミリアなんとか先輩はすごすごと去っていったんだ。
「モーリスグッジョブ!」
「やっぱモーリスだよな!」
「よくやったにゃんモーリス!」
「さすがモーリス様です!」
「女神様もモーリスをお認めです!」
「あのー?」
「「さすがだよ!」」
「あのー?」
「「かっけー!」」
「おーい?」
「「すげぇなぁ!」」
「もしもーし?」
「「「‥‥」」」
「くそっ!なんで他人に変態って言うんだよモーリス‥‥ひどいじゃないか‥‥うっ‥‥」
「モーリス!ダメだからね!ダーリンを泣かせたら!」
ひしっっ!
シナモンが俺の頭を抱えて撫で撫でしてくれたんだ。
額にシナモンのやわらかい部分が当たってるよ。
むふぅぅーーーーっっ!
「「あ~やっぱりアレクが変態の顔してるわ!」」
「チッ!」
「セーラが舌打ちしたー!」
わはははは
アハハハハ
フフフフフ
「てかアレク、あんた貴族になったの?」
「知らなかったわよ!」
「ああ。なんか知らないうちにな」
「「すごいじゃん!」」
「そっかあ?俺はなんも変わらないぞ。ただの農民の子だからな」
「違うだろ。ただの変態の子だろ」
「「「違いない!」」」
わはははは
アハハハハ
ワハハハハ
いい仲間だよ、こいつらは!
――――――――――
「新しい部活動を立ち上げます。名前は『狂犬団』です。
聞いてる人もいるかもしれませんが、帝都学園にある狂犬団とは兄弟姉妹関係になります」
ざわざわ
ザワザワ
ざわざわ
学園長に許しをもらって、新学期最初の日に全校生徒の前でクラブ活動の勧誘をしたんだ。
「狂犬団の活動は大きく2つに分かれます。
1つは学内活動。学内行事の運営や購買活動の運営、武具を使ったものや体術、魔法の修練などを考えています。
もう1つは学外活動です。これは帝都の浮浪児や孤児の宿舎運営や教会での奉仕活動を考えています。
既存の部活に入ってる人は、部活動をしつつ、空いてる時間にこの狂犬団の新しい活動もしてもらいます。
だから既存の部活を辞める必要はありません。
もちろん狂犬団1本の人は目いっぱい狂犬団の部活動をしてもらっても構いません。
ざわざわ
ザワザワ
狂犬団の発足に先立って幹部を募集します。
幹部は狂犬団の活動を優先してできる人です。
必要なのは種族差別をしないこと、まじめに努力し続けること。
それだけです。
興味ある人は今日の放課後、この場に集まってください。
ああ忘れるとこでした。狂犬団には年功序列はありません。先輩も後輩もなく、6年も1年も横並びです。
部活動ですからもちろん自由参加です。
あと‥‥これから俺が狂犬団としてやることが気に入らない奴は、遠慮なくかかってきてください。
それが何人、何10人の複数でも。正々堂々と名乗ってから。
そのかわり、俺に負けたら逆らうことは許しません。以上」
▼
教室に戻って。
10傑の仲間も含めて、50人のクラスメイトにお願いしたんだ。
「ああは言ったけど‥‥正直どんだけ集まってくれるか不安なんだ。
それと、狂犬団の活動をクラスの仲間、お前らには手伝ってほしい。お願いします!」
「仕方ないですね」
「セーラ!」
「ダーリンだもん」
「シナモン!」
「「そう、仕方ない」」
「ハンス!トール!」
「しゃあねーな」
「そう、仕方ないな」
「ハンス!セロ!」
「「どうせアレクだもんね」」
「アリシア!キャロル!」
「ほっとくと危ないからな」
「はい、モーリス様の言うとおりです」
「モーリス!セバス!」
「どうだろう4年1組のみんな?」
「戦闘力は皆無だけど。そんな私でもいいのアレク君?」
「ステラ!もちろんだよ。ありがとう」
ステラは座学1位でずっと1組の頭脳明晰の女の子なんだ。
「じゃあ私も参加するね」
「「俺たちも参加するよ!」」
「「いいぜ!」」
「「参加するわ!」」
「名前はダサいけど、4年1組全員狂犬団に入るか。なぁみんな?」
モーリスが声をかける。
「「「おおーっ!」」」
「みんな‥‥ありがとう」
さて‥‥放課後、どれだけ集まってるかな?
――――――――――
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