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第8話 黒騎士 女子高生編
職業選択の自由
しおりを挟む資料を見せながらイツキは
「ここに来る前に何かチートな力とかを女神とに授かりましたか?」
とエリザベスに聞いた。
「いえ。女神なんか会ってません。そんなのに会った人っているんですか?」
とエリザベスは意外そうな表情で聞き返して来た。
「ええ。いますよ。会ってチートな力を授かった人が結構います。掟破りの強さを手に入れた転移者も居ます。その力で一気に魔王を退治した勇者も居ます」
「そうなんですね。私はそんな事は無かったです……」
とエリザベスは残念そうに俯いた。
「でも大丈夫です。ちゃんと強くなれます。あなたは正義感が強そうなので、剣士とか戦士なんかいいかもしれません。女性剣士は結構花形職種です」
「剣士かぁ……」
エリザベスはもう一つ気乗りがしない感じだった。
「どうですか?」
イツキの言葉に
「騎士はどうなんですか?」
とエリザベスは聞いた。
「騎士ですか……なれない事はないですが、これは王国に属する職業ですのでしきたりにうるさかったりしますね。後門閥とかありますから……基本的には剣士をマスターして実力をつけてから転職をお勧めししているんだけど……どうしてもというなら……まずは剣士からですね」
イツキは自分の経験からエリザベスには同じ轍を踏んでもらいたくなかった。
「そうかぁ……」
エリザベスは黙って職業紹介のポスターを見ていた。
「じゃあ、この一番最後にある黒騎士っていうのはどう違うんですか?」
「あ、それですか……。それは今日から取り扱い可能になった職種で、国王ではなく魔王の眷属です。
なのでギルドを通してこの黒騎士になった人は今までいません。勿論魔王の眷属ですから冒険者ではなく、冒険者と戦う側に立ちます」
「そんな事ってあるんですか?」
「この世界も色々事情があって、転移者には魔王の眷属になる事も出来るようになったのです」
「へぇ~そうなんですかぁ……」
エリザベスは黒騎士という文字をじっと見つめていた。
「魔王の眷属という事は冒険者と戦うんですよね」
「はい。そうですよ」
「冒険者にやられるための職種ですか?」
「いえ。逆に冒険者をやっつけてしまう事も可能です。冒険者は魔王を倒して完遂者になると勇者の称号を貰いますが、黒騎士は魔王の眷属として戦い、最終的には魔王あるいはそれに準ずる者になります」
「私、黒騎士になります」
エリザベスは力強く即答した。
「え?」
イツキは思わず絶句した。
「な、なんて言いました?」
「私は黒騎士になりたいと言いました」
「本気ですか?」
「はい。本気です」
「なんで?」
「口ではうまく言えないんですが、前居た世界で私は妹に辛く当たりました。それまでも私は気が強くて人にはきつく当たった事もあると思います。言って見れば常に上から目線で人を見下していたと思います。そんな自分の醜い部分を私は妹によって気が付かされました。ここに来た時はその罰だとさえ思いました。私の中にあるそう言った性格の暗い部分をここに来て客観的に見る事ができ、自分という人間がどういう人間かを思い知らされました。
この黒騎士を見た時に『これは私の為にある職種……天職だ』と瞬間的に思いました」
イツキは黙って彼女の話を聞いていた。
――確かに僕も彼女と話している時に黒騎士は何度も浮かんだ……この屈折した正義感は黒騎士に向いている。黒騎士は単なる悪党では務まらない。それなりの信念の中で戦わなければならない。
しかし、女子高生にこれを勧めるのか?
それも第1号だぞ……。
ヘンリーに鬼畜とか魔族にも劣る極悪ぶりとか言われるんだろうなあ……――
「天職かぁ……魔王の眷属だよ」
イツキはまだ決めかねていた。
「分かってます」
エリザベスはきっぱりと言った。
「魔王って鬼のようなとんでもない奴だよ。それでも良いの?」
「良いです」
「暗黒騎士団の団長って言う奴は、いけ好かない嫌な奴な上に、セクハラ野郎で変態だよ。それでも良いの?」
「良いです。望むところです」
「いや、それは望んじゃダメだろう?」
「大丈夫です!」
エリザベスの表情に迷いはなかった。
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