異世界のキャリアコンサルタント~今一番のお勧め職業は『魔王』です~ (改)

うにおいくら

文字の大きさ
80 / 137
第9話 麗泉宮

イツキのオフィス

しおりを挟む
 魔王の宮殿からギルド内の自分の事務所に帰ってきたイツキは、暫く放心状態でデスクの椅子に座っていた。
背もたれに体を預けて天井を見上げながら、魔王オーフェンとエリーのやり取りを思い出していた。

「久しぶりにあんなに怒ったオーフェンを見たわ。凄かったなぁ……俺より迫力あったよなぁ……」
イツキは一人呟いた。

 その時ノックの音がした。

「どうぞ」
イツキは声を掛けた。入ってきたのはマーサだった。

「イツキ、帰って来ていたのね。エリーはちゃんと黒騎士になれた?」
とマーサは心配そうに聞いた。彼女にしてみれば日中気になって仕方が無く、仕事が全く手につかなかった。

「ああ、なれたよ。ほれぼれするような見事な黒騎士振りだった」

「そうなんだ。良かった」
とマーサはその言葉を聞いて安心し、嬉しそうに笑った。

「マーサは昨日一晩中、エリーと色々話をしたんだって?」

「ええ、そうよ。色々聞いたし私も色々話をしたわ」

「そうか」

「彼女、アシヤっていうところのお嬢様なのね。そこのロクロク何とかってとこに住んでいたんだって」

「六麓荘かぁ……本物の芦屋のお嬢様だったのかぁ。そこはここで言えばハーベストの街みたいなもんだよ」
イツキはこの街の貴族が多く住む街の名前を挙げた。
そして同時にエリーの関西弁に合点がいった。

「え! そうなんだ。凄い!! エリーは本当にお嬢様だったのね」
マーサは驚いたように声を上げた。

「そういう事だよ」

「ふ~ん。そうなんだ」

「マーサ、これを見て」
イツキはデスクの上にハンカチで包まれたエリーの髪を置きマーサに見せた。

「これは?」

「エリーの髪さ。エリーが『私が冒険者に打ち取られても忘れないで欲しい。ここで生きた証にして欲しい。』って僕の目の前でバッサリ切った」
イツキはマーサに髪を切るしぐさをしながら言った。そしてその時の状況をマーサに説明した。

「やっぱり、覚悟を決めて黒騎士になったんだね」
マーサはその髪をそっと撫でながら呟いた。

「オーフェンが感心していたよ。見た目以上に腹を括っていたからね」

「魔王に認められたんだから、絶対に生き残って欲しいわ」

「エリーなら大丈夫だろう。それにしばらくはあの周辺は魔人魔獣の保護区指定されるらしいからね」

「あ、そうなんですね」
とマーサは安心したように声を上げた。

「僕は気に入らんが暗黒騎士団の団長は嫌味なキースだからな。生き残る術ぐらいは教えてくれるだろう」
とイツキが呟くと
「え~! キース様に直接教わるのぉ……良いなぁ!」
と羨ましそうにマーサは言った。

「なんだ?  マーサもか?」

「え~、キース様は格好良いでしょう? お会いしたいなぁ……」

「あんな奴には会わなくて良いよ。本当にミーハーなんだから……」
イツキは呆れて言った。

「そうかなぁ……女子供には手を出さないし、紳士だし……みんな『なんでキース様が魔王の眷属なのか不思議』って言ってますよ」

「性格と根性がねじ曲がっているからに決まっているじゃん」
イツキは投げやりに言った。

「イツキ、実はやきもち焼いているでしょう……」
と、マーサは意地悪気な目つきでイツキを見た。

「そんな事あるかい!!」
イツキは焦りながら反論したが、マーサはそれを鼻で笑いながら
「イツキも結構、男前よ。安心してね」
と言った。

「取ってつけたお世辞は良いよ」
と観念したようにイツキは答えた。

 イツキの不貞腐れたような表情を見て笑いながら
「無事にエリーも黒騎士になれたみたいで安心したわ。じゃあ、そろそろ仕事に戻らなくっちゃ」
そう言ってマーサは部屋を出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...