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第二章 皇女様の飛空艇
潜入
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日没を過ぎてしばらく経った頃、スエンビーア王国首都スタンツラスタンのバルジ湖湖岸に人影が七つあった。地元民からはラグルビーチと呼ばれている湖岸線である。
海の様に大きなバルジ湖の北岸にある小規模な断崖が連なる入江と砂浜であり、そのコントラストの美しさから有名なビーチであった。
その内の一つの入り江の砂浜にクロード達は降り立った。静かに上昇してその場から離れる飛空艇を見送った後クロードが口を開いた。
「ダミー、ここから離宮は見えるの?」
「いや森が邪魔して見えない。でも、ここからはあの一本道で行ける」
と森の中へと続く道を指さした。
「そうなんだ。ソフィアはここに来たことがあったんだよね?」
とクロードは聞いた。
「うん。あるよ。ダミアンオジサンの言う通りこの道を上がって行けば離宮に着くよ」
とソフィアは応えた。彼女も口調から堅苦しさが無くなっていた。
「オジサン言うな」
とダミアンが小声で抗議した。
「よし、オジサンも元気そうだし、じゃぁ行こうか?」
とクロードが声を掛けるとダミアン以外の他のメンバーは黙ってうなずいた。
「ダミー。探知スキル回避は大丈夫?」
森の小道に入ってすぐにクロードが聞いた。
「ああ、大丈夫だ。今のところ感じない。ブラウンの魔力隠蔽も上手くいっている。心配はいらない」
とダミアンは自信ありげに答えた。
その言葉通り何の障害もなく七人は離宮近くまで辿り着いた。そのまま森の中を離宮の壁伝いに回り込み、裏口の扉を窺った。
「大丈夫。周りには人が居ない」
とダミアンが小声で言った。
「裏口の扉の向こうは?」
「大丈夫だ。気配はない。まず俺が行く」
とダミアンが一人裏口まで小走りで進み出た。
彫刻が施された木製の開き戸の扉に触れると軽く押してみた。
扉は開かなかった。
それを確認すると、彼は振り向きもせずに右手を軽く上げた。その様子を見てブラウンが小走りにダミアンのもとに駆け付けた。
「中から閂で鍵がかかっている。開けられるか?」
とダミアンは小声で聞いた。
「開けられるが、これくらいならダミーでも開けられるだろう?」
「そうだが時間が惜しい」
「判った」
ブラウンはそう言ってうなずくと扉に手を当て呪文を唱えだした。
魔力ではダミアンよりもブラウンの方が勝っていた。ダミアンは単独行動が多いので、彼に言わせるとこういった多人数での隠密行動は苦手らしい。彼の得意技は気配を消して隙をついて忍び込む技術だった。
『キー』と鉄棒が擦れる音が小さく聞こえて『カチャ』と何かが外れるような音がした。
ブラウンが扉の片方を軽く押すと、音もなく開いた。
ダミアンはすかさず中に入った。それを合図に他のメンバーも裏口へやって来て、そのまま物音ひとつ立てずに中へと入って行った。
全てが入り終えると裏口は静かに閉じた。
クロード達はダミアンを先頭に廊下を進み、階段がある踊り場に出た。
「元女王の部屋は二階だったな?」
とダミアンがソフィアに確認した。
小声でソフィアが
「はい」
と答えた。
ダミアンが探知スキルで二階の状況を確認した。
そして
「二階の廊下に三人いる。ここから黙らせることができるか?」
とフローラに声を掛けた。
「大丈夫。姿が見えなくても存在が認識できれば問題ない。念のため元女王以外の二階にいる全員を眠らせる」
とフローラは自信ありげに答えた。
海の様に大きなバルジ湖の北岸にある小規模な断崖が連なる入江と砂浜であり、そのコントラストの美しさから有名なビーチであった。
その内の一つの入り江の砂浜にクロード達は降り立った。静かに上昇してその場から離れる飛空艇を見送った後クロードが口を開いた。
「ダミー、ここから離宮は見えるの?」
「いや森が邪魔して見えない。でも、ここからはあの一本道で行ける」
と森の中へと続く道を指さした。
「そうなんだ。ソフィアはここに来たことがあったんだよね?」
とクロードは聞いた。
「うん。あるよ。ダミアンオジサンの言う通りこの道を上がって行けば離宮に着くよ」
とソフィアは応えた。彼女も口調から堅苦しさが無くなっていた。
「オジサン言うな」
とダミアンが小声で抗議した。
「よし、オジサンも元気そうだし、じゃぁ行こうか?」
とクロードが声を掛けるとダミアン以外の他のメンバーは黙ってうなずいた。
「ダミー。探知スキル回避は大丈夫?」
森の小道に入ってすぐにクロードが聞いた。
「ああ、大丈夫だ。今のところ感じない。ブラウンの魔力隠蔽も上手くいっている。心配はいらない」
とダミアンは自信ありげに答えた。
その言葉通り何の障害もなく七人は離宮近くまで辿り着いた。そのまま森の中を離宮の壁伝いに回り込み、裏口の扉を窺った。
「大丈夫。周りには人が居ない」
とダミアンが小声で言った。
「裏口の扉の向こうは?」
「大丈夫だ。気配はない。まず俺が行く」
とダミアンが一人裏口まで小走りで進み出た。
彫刻が施された木製の開き戸の扉に触れると軽く押してみた。
扉は開かなかった。
それを確認すると、彼は振り向きもせずに右手を軽く上げた。その様子を見てブラウンが小走りにダミアンのもとに駆け付けた。
「中から閂で鍵がかかっている。開けられるか?」
とダミアンは小声で聞いた。
「開けられるが、これくらいならダミーでも開けられるだろう?」
「そうだが時間が惜しい」
「判った」
ブラウンはそう言ってうなずくと扉に手を当て呪文を唱えだした。
魔力ではダミアンよりもブラウンの方が勝っていた。ダミアンは単独行動が多いので、彼に言わせるとこういった多人数での隠密行動は苦手らしい。彼の得意技は気配を消して隙をついて忍び込む技術だった。
『キー』と鉄棒が擦れる音が小さく聞こえて『カチャ』と何かが外れるような音がした。
ブラウンが扉の片方を軽く押すと、音もなく開いた。
ダミアンはすかさず中に入った。それを合図に他のメンバーも裏口へやって来て、そのまま物音ひとつ立てずに中へと入って行った。
全てが入り終えると裏口は静かに閉じた。
クロード達はダミアンを先頭に廊下を進み、階段がある踊り場に出た。
「元女王の部屋は二階だったな?」
とダミアンがソフィアに確認した。
小声でソフィアが
「はい」
と答えた。
ダミアンが探知スキルで二階の状況を確認した。
そして
「二階の廊下に三人いる。ここから黙らせることができるか?」
とフローラに声を掛けた。
「大丈夫。姿が見えなくても存在が認識できれば問題ない。念のため元女王以外の二階にいる全員を眠らせる」
とフローラは自信ありげに答えた。
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